ep.61 あいつらしい
「おかえり皆! 無事で良かった!」
「おー」「ただいまやっ君。今回は大変だった」
いつもの緑地公園へ戻ったヒロ男と琴乃は、暗くなってもそこで待ってくれていたコーセーに出迎えられる。
二人はノワールから飛び降り、変身を解く。ノワールも獅子化を解き、可愛らしい子猫サイズの黒猫ぬいに戻った。
「まさか警察署が現場だったなんてね…。俺もスマホで情報追ってたんだけどびっくりだよ。で、案の定今は情報統制が入って何もわからなくなってる。最後の得た情報は"自衛隊が来た"ってやつだけど、きっと現場は封鎖だろうね」
「うへ~、ついに自衛隊まで動いたのかよ」
「うん。そして自衛隊が動いたってことは政府もラベスの脅威を認識したってことだ。俺たちの周り、ちょっと騒がしくなるかもね…」
そう、ヒロ男を琴乃が警察署を去った少し後、現場に自衛隊が入ったのだ。武装車にヘリまで出動の大騒ぎだ。当然現場は封鎖され、そこにいた馬鹿たちも追い払われた。
「……私たち、捕まるかな…」
琴乃が心配そうに呟く。しかしコーセーはそれを否定する。
「大丈夫だと思うよ。二人とも変身前と変身後で結構雰囲気違うし、仮に見た目上特定されても、動画の『魔法少女』を二人と結びつける証拠の出し様が無い。この世界の社会では魔法は証拠にはできないよ。それをしたら司法が機能しなくなる」
「つまり…、確信があっても手出しできないってことか」
「そ。まぁだからと言って大っぴらに行動して大丈夫なわけではないよ。今まで通り慎ましく行動しよう。」
コーセーの説明にヒロ男と琴乃は深く頷く。
(しかしこの世界は本当に不思議です。ゼノウィータの件は本来なら国を挙げて対処すべき事なのに、この世界では国が行動の足枷になるんですもの)
「人は理解できないものを怖がるからね。特に魔法は物理的に証明できない現象だから、国に目を付けられたら監視が付いて自由に動けなくなる。隠すに越したことは無いよ」
ティオリアの愚痴にコーセーが丁寧に答える。ティオリアは(厄介ですね)とため息を吐く。
「さ、そろそろ帰ろう。もう暗いから椎名さんの親が心配しちゃうよ」
「だな。帰ろう」「うん」
そうして三人は帰路に着き、琴乃を送り、ヒロ男とコーセーも家に帰った。
ヒロ男が家に戻ると家の明かりが点いていた。いつも帰りが遅い父が先に帰っているらしい。
「ただいまー」(ただいま戻りましたー!)
「おーおかえり。遅かったな」
挨拶をすると、リビングから父の声が聞こえてくる。そしておいしそうな匂いも漂ってくる。
「コーセーとぷらぷらしてた。親父、何作ったんだ?」
「生姜焼きだ。ときどき無性に食いたくなるんだわ。凰我もさっさと手洗って食え」
「おー! さんきゅー親父!」
他愛も無い親子の会話を交わし、ヒロ男は手を洗ってリビングのテーブルに着く。
「いただきます」
「おう」
食前の挨拶を交わし、ヒロ男は生姜焼きを貪る。
「うん、うまい。さすが親父」
「まぁな。伊達に一人でお前を育ててねぇよ」
ニヤッと嬉しそうに笑う父。そしてそのままヒロ男の目を見る。
「凰我」
「ん?」
名を呼ばれ、口をもぐもぐしながら返事をする。
「母さんには話してあるのか?」
(!)
父の言葉にティオリアが驚く。
「親父…」
口の入っていたものを飲み込み、父の目を見る。真剣な目だった。
(お、おーがさん、お父さまもしかして…)
(あぁ、気付いてるな)
父に聞こえないように心の中で話す二人。
「話してあるよ」
「そうか。なんて言ってた?」
父の目を見て、少し微笑んで答えた。
「殴られた。…でも、背中押してくれた」
「……ふっ、あいつらしい」
父も微笑む。
「二人とも、がんばれよ」
父はそう言うと立ち上がり、「風呂入ってくるわ」と言いながら廊下へ歩いていく。
ヒロ男はそれを見送り、微笑んだまま呟く。
「さんきゅー、親父」
そしてヒロ男は、父が作った生姜焼きをじっくり味わって食べるのだった。




