ep.60 深まる誤解
爆発でざわざわする野次馬たちの中、疑似ちゃんは冷静に情報を整理していた。
(現れた魔導士、監視対象の二人だけ。……、やはり他に魔導士がいない? その仮定だと黒い魔導士の強さが説明不能。わからない。……、とりあえず、今日は帰還)
踵を返す。すると不意に、他とはトーンが違う話し声が聞こえてきた。
「いやぁ、まさかリーダーたちが追っ掛けてる事件に出会すとはなぁ」
「な。さすがのリーダーもここまでは来れなかったみたいだな」
(……)
場にそぐわない雑談が気になり、足を止める。
「(街中から)どんだけ離れてると思ってるんだよ。普段の移動スピードだってどんな魔法使ってんの?ってレベルなのに」
ぴく
(魔法???)
疑似ちゃんはその会話に聞き耳を立て始める。
「だよな。でも悔しがるだろうな。間違いなく今までで一番でかい案件だし」
(魔法、悔しがる、でかい案件…)
疑似ちゃんは言葉の断片を拾い上げ、その話題の人物像を組み立てて行く。
(戦闘狂の魔導士…?)
「いや、たぶん泣いて感動するぞ。普段のリーダーの(気持ち悪い)言動思い出してみろよ」
「……、確かに。じゃあむしろここに現れなくて良かったのかもなぁ」
(戦闘狂の魔導士、泣いて感動? ……! そいつが黒い魔導士を育てた!?)
驚愕する疑似ちゃん。もっと話を聞こうと、返した踵をさらに返し、警察署に向き直る。
「よし、じゃあ俺らもそろそろ手伝いにいこうぜ。たぶん布類足りなくなるだろうし」
「いったい何人食われたんだろうな…」
リーダーから聞いた情報を頼りに自分たちにできそうな行動を起こす二人組。話しながら疑似ちゃんから離れていく。
疑似ちゃんは追おうとしたが、人ごみに邪魔されすぐに見失ってしまった。
(……、追尾失敗。でも情報更新。やはりこの世界には魔導士が隠れている。じゃあ何故すぐに出てこない? 理解不能)
疑似ちゃんは首を傾げながら人混みに消えていった。
ちなみに疑似ちゃんがその場を立ち去った直後、先ほどの二人組はリーダーと小田に声を掛けられ、心臓が止まりそうになるほど驚いたのだった。




