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ルミナ☆オーバードライブ  作者: コルミ
第10話 人形の誤算2(ルミナ☆キャノン)
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ep.52 そんな貴方だから

「お帰り皆。無事で良かった」


 変身を解いた面々はコーセーこと夜久(やく)輝星(こうせい)(愛称:やっ君)と合流した。コーセーは皆の無事に安堵する。


「悪いなコーセー、置いてっちまって」

「いや、あれでいいんだ。おーがが最前線で突っ走っててくれれば後ろが楽になる。ただし無理はしないでくれ(・・・・・・・・・)よ?」


 そう言って笑うコーセーの言葉を聞き、ヒロ男の脳裏に先ほどの大ピンチが過る。


「……あぁ、もうちょっと冷静に立ち回れるようにするわ。さんきゅ」

「………」


 笑いながら言うヒロ男の、微妙な雰囲気の変化で、コーセーはヒロ男が何か気に掛けた事を察した。しかしあえて触れはしない。ヒロ男は放っておけば勝手に強くなる男だ。おそらく今回気になっていることも自分なりに折り合いを付けて、更に強靭にパワーアップして笑い始めるはずだ。コーセーはつんつん突《つつ》いて進行方向を微調整してやればいいのだ。


「椎名さんとノワールもお疲れ様。今回追っかけはいた?」

「ヒロ男くん付きの人だけだったよ。良かった…」

「到着して魔力障壁を張っただけだからな。さすがの奴も辿り着くまで時間が足りなかったようだ」

「…それでもおーがの方はいたんだね…。ほんと、どういう人たちなんだろ…」


 琴乃とノワールの話を聞いて苦笑いを浮かべるコーセー。ヒロ男と琴乃の追っかけをしている二人の馬鹿の察知能力に驚きを隠せない。


「そんなことよりこれからどうする? コーセーん家《ち》戻るか?」


 後頭部で手を組んだヒロ男が伸びをしながら尋ねる。


「…だめ、しばらく戻らない方がいい。奴らの目がどこにあるかわからない」


 琴乃が真剣な表情で話す。その言葉にヒロ男が首を傾げる。


「疑似ちゃんに家バレてるじゃねぇか。今更だろ」

「そっちじゃない。スマホ連中」


 琴乃の表情には少し怯えの色が見える。


「確かにおーがは初っ端で顔バレしてるしなぁ。その流れで自宅特定されないとも限らないのか…。じゃあこのまま街中まで行って気分転換しようか。せっかくの休みだし、プラプラ歩いて、帰ったらテストの答え合わせしよう」

「うん、賛成」

「了解っ」


 意見を合わせ、三人はその足で街中を目指し始める。ノワールはふわぁっと浮いて琴乃の頭に乗り、そのまま伸びて尻尾と四肢を揺らしている。

 コーセーと琴乃はテストの話を始め、勉強が苦手なヒロ男は一歩後ろに下がる。


(ティオリア)

(はい?)


 ヒロ男が心の中でティオリアに話し掛ける。ティオリアもヒロ男の中"だけ"で返事をする。


(さっきのこと(・・・・・・)、改めて謝っておく)

(……)


 ティオリアは静かに聞く。


(冷静に考えれば口が閉じた時点でさっさと離脱、すぐにラベスをぶっ倒して取り込まれた二人を再構成させるって流れが、俺らにとっても、取り込まれた二人にとっても最適解だったんだ。なのに俺は焦って、吸収される前に助け出そうと躍起になっちまった。その結果、俺と一緒にティオリアまで危険に晒した。……すまなかった)

(……)


 ヒロ男の心を、ティオリアは静かに受け止めた。戦いの時、あれほど熱く心を燃やしていた男が、今は静かに、自らの行いを見つめている。

 ティオリアは思う。『日色凰我』という男は、本当に生まれついての戦士なのだと。


(おーがさん)

(…ん)


 ティオリアの呼び掛けに、ヒロ男は小さく返事をする。

 その返事の仕方に少しクスっと笑い、ティオリアは、自分の思いを伝える。


(私はにゅるにゅる(・・・・・・)したものやねちゃねちゃ(・・・・・・)したものが嫌いです。なので触手に肌を触れられたり、蜘蛛の巣みたいなものを頭から被ったりしたら条件反射で絶叫しちゃうんです)

(…あぁ、ティオリアの写身《うつしみ》と波長が合ってきて、ティオリアがそういうもの(・・・・・・)にどれだけ強い嫌悪感を持ってるかはよくわかったよ。だから――)

(おーがさん)


 名を呼び、ヒロ男の言葉を切る。


(波長が合って、"おーがさんも"嫌悪感を感じているんでしょう? それでもおーがさんは二人を助けにラベスの懐へ飛び込んだ)

(……)

(自分が取り込まれて吸収されるかもしれないのに、見知らずの人を助けるために閉じた腹をこじ開けようとした)

(……)


 ティオリアの言葉を、ヒロ男は静かに聞く。


(もう一つついでに言えば、カラス型ラベスが学校に来た時、おーがさんは自分の心が傷つくことも顧みず、クラスメイトの目の前で変身した)

(……)


 すっかり静かになったヒロ男を可愛く思い、ティオリアは再びクスっと笑う。そして告げる。


(私は、"そんなおーがさんだから"信じられるんです。目の前の人のために全力でぶつかって、身体と心が傷付こうがお構いなしに突き進む。"そんなおーがさんだから"、私は貴方を信じて力を貸すことができるんです)

(ティオリア…)


 ティオリアの言葉で、ヒロ男の心が震える。その震えがティオリアにも伝わっていく。

 ティオリアはその心の脈動をしっかり受け止め、自信を持ってこの言葉を贈る。


(だから、おーがさんはそのままでいてください。多少強引に突っ込んでもおーがさんならなんとかなっちゃいますから。それに今はコーセーさんや琴乃さんのバックアップもあります。最悪取り込まれても琴乃さんがラベスぶっ飛ばして助けてくれますよ。………まぁにゅるにゅるされる回数は少ないに越したことはないんですけどね?)

(………、ふふ…、最後にそれ言うと締まらねぇな。でもティオリアらしいよ。今となっては俺も(・・)にゅるにゅるされるのはなるべく避けたいしな)


 ヒロ男の声に明るさが戻る。


(ふふふ、じゃあ後で、もし捕まってもすぐ脱出できる方法でも考えますか。おーがさんが思う存分突っ込めるように)

(ははは! 言っておくが俺も突っ込みたくて突っ込んでるわけじゃねぇからな? でも備えがあるのは賛成だ。コーセーにも聞いてみようぜ!)

(ふふふ、『おーが…、頭大丈夫か…?』とか言われそうですね?)

(はは! 絶対言うだろうな! ………………ティオリア、ありがとう)

(……はい)

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