ep.51 ルミナ☆キャノン
「ティアちゃん!!! 大丈夫!? 今ラベスの中から出てこなかった!?」
「ふはははは! 良く燃えておるな! 藻掻いておるわ!」
ここで遅れて付いて来ていた変身状態の椎名琴乃と獅子化状態のノワールが合流。琴乃は一部の光景を見て混乱し、ノワールは腹から火を噴くラベスを見て楽しそうだ。
ヒロ男は一回深呼吸し、合流した琴乃に声を掛ける。
「ルナちゃん、たぶんこれからでっかい爆発が起きるから、ノワールと一緒に防壁で建物守ってくれない?」
「え? 何言ってんの?」
「ほう? 花火でも上げるのか?」
琴乃とノワールが聞き返すが、ヒロ男は無視して両手に魔力を集中させ始める。
「ルぅミぃナああああああああああ☆!!!」
両手を前方へ伸ばし、手の平をラベスに向けて広げ、ヒュバアアアアアア!と魔力と怒りを収束させていく。収束した怒り付き魔力はバスケットボール大の大きさの球となり、周囲に光の粒子を撒き散らす。
「…っ! ノワール!!! 逆サイド!!!」
「おうよ!」
ヒロ男が何をするつもりか把握した琴乃は急いでラベスと建物の間に陣取り、大きな魔力障壁を展開。通りの反対側でもノワールが同じようにポジション取りし、大きな魔力障壁を展開した。
「キャノぉぉぉぉン!!!!!」
ドンッ!という大きな音と共に魔力球が射出され、炎で藻掻くラベスに一直線に飛んで行く。そして魔力球がラベスに接触した瞬間、ドガアアアアアアアアアアン!!!と大爆発を起こし、ラベスを木端微塵に吹き飛ばした。
周囲にはブワアアアアア!と爆風が吹き荒れ、通りの街路樹をバサバサと揺らす。琴乃とノワールの魔力障壁のおかげで建物への被害は出ず、無事にラベスを倒すことができた。
(……、あの、おーがさん? ルミナ☆キャノンは最低出力でっていう約束は…?)
そう、それはルミナ☆キャノンを編み出した時に皆とした約束だ。そもそもルミナ☆キャノンが生み出された理由は、ヒロ男がどうやっても少ない魔力のコントロールができなかったからなのである。魔力を少なくできずルミナ☆レーザーで対象を貫通させまくっていたヒロ男は不意に思ったのだ。『当たった瞬間爆発すれば良いのでは?』と。
その結果、何かに接触した瞬間大爆発を起こす狂気の魔力球、『ルミナ☆キャノン』が誕生したのである。
その性質上、ティオリアが『絶対に最低出力で使うこと。じゃないと周りが危険です』と釘を刺したのだ。
(ティオリアを危険に晒した自分自身が許せなくて怒りを込める場所が欲しかった…。魔力球に怒りを全て捩じ込んでやった。今回だけ許してくれ…)
(おーがさん…、その言い方はずるいです…。……今回だけですよ?)
ヒロ男の言い訳に呆れたように返すティオリア。しかしその声色には"別の感情"も乗っているように感じた。
「…ティアちゃん? ちょっとお話いい?」
琴乃がこめかみをピクピクさせながら話し掛けてきた。ティオリアとは話がついたが、こちらは大変そうだ。
「……………今回だけ許して」
「理由!!! せめて理由言いなさいよ!!! 何その『何も言いたくありません』みたいな顔は!!! こっち見なさい!!!」
露骨に目を逸らすヒロ男にキレる琴乃。今回戦場になったここは人通りの少ない場所、かつ丁度誰も周りにいない状況だったので被害が出なかったが、もしあんな威力の魔法を人前で使ったら怪我人が出ていたかもしれないのだ。それを使った納得できる理由を聞きたかった。
すると遠くからいつもの声が二人に届く。
「ティアさーーーん!!! 今回は冷や冷やしちゃったよ!!! 無事で本当に良かった!!!」
遠くで手を振る馬鹿の顔を見てヒロ男はため息を吐いている。琴乃は馬鹿の言葉を聞いて少し冷静になった。
「ラベスの中から出てきたように見えたけど、いったい何があったの?」
「………人が取り込まれて、焦って突っ込んだら取り込まれそうになった。ティオリアに怖い思いさせたのが情けなくて、怒りを魔力球に乗せたらあの威力になった」
「………、……はぁ…」
理由を聞いて琴乃もため息を吐く。
その時白いバンの近くで、四散した魔力が集まり出し、ラベス化した男一人と取り込まれた男二人が無事に再構成され地面に転がった。例によって全裸である。
その男たちを見てヒロ男は安堵の表情を浮かべ、近寄って来た馬鹿に話し掛ける。
「毎回のことですけど、本当に到着が早いですね。化け物ですか?」
「ふ…、予感するんだよ…。その時々の場所に行けばティアさんに会えるってね!☆」
ヒロ男は馬鹿の気色悪い回答にやれやれ…と首を横に振る。隣の琴乃は顔を青くしてドン引きしている。
「いつも通りこの全裸の人たちの事、よろしくお願いしますね。…あぁ、そこで事故ってる車、この人たちの車なのでその辺もよろしくお願いします」
説明しながら白いバンを見るヒロ男。その視線の先に、バンに頭を突っ込んで尻尾をフリフリしているノワールの姿が映る。いったい何をしているのか…。
「了解! 任せてよ! 完璧に処理して見せるからね!☆」
「…、いつもありがとうございます♪」
いつも面倒事を押し付けているので、ちょっとだけサービスして笑顔を向けてみた。
「!!!!!!!!???」(スマイルきたあああああああああ!!!!!!)
馬鹿は溢れる感情を胸に刻み付け、恍惚の表情で『魔法少女ティア』に跪く。
それを見たヒロ男は「しまった…」と思い顔を引き攣らせる。
「で、では、後の事はよろしくお願いします」
ヒロ男はそう言って琴乃とノワールのところへ歩いていく。
「ノワール? 頭突っ込んで何遊んでるんです?」
「む? 珍しい物がたくさん入っておったのでな。観察していた」
「珍しい物?」
ノワールの返答が気になり、二人でバンの中を覗き込む。すると広い後部座席一面に、赤やらピンクやら紫やらの、おそらくシリコン製の小道具がたくさん散らばっているのが見えた。
「……? なんですかコレ? 棒?」
「コードに繋がった小さいのもあるね。なんだろ…」
(いろんな形のものがありますね…)
「とりあえず我は飽きた。さっさと輝星と合流してやろうではないか。置いていかれて寂しがっておるだろうよ」
ノワールに促され、ヒロ男と琴乃はノワールに乗りコーセーが待つ少し離れた通りへ移動し始める。
ヒロ男たちは知らなかった。その小道具の存在により、三人の男たちが警察のお世話になるということを…。




