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ルミナ☆オーバードライブ  作者: コルミ
第9話 人形の誤算1(ルミナ☆プロファイリング)
47/67

ep.47 疑似人格

(これは…)


 ティオリアの声が零れる。


「髪色や服装は違うけど、この顔…、変身したおーがにそっくりだ」

「似てる…というか同じ顔だ…。ティオリア、こいつは…」


 二人が感想を言い、ティオリアに意見を求める。


(……、間違いなく…、私の身体です…。髪色が違うのは…、変身前の素の状態だから…。おーがさんが見ていた魂の私や、コーセーさんたちが見ていた私の写身《うつしみ》は全部変身状態の姿です。そこに映ってるのが、本来の私の姿です)


 最初は苦しそうに、しかしだんだん冷静さを取り戻す様に話すティオリア。

 ティオリアの言う通り、動画に映った姿は変身状態のヒロ男、つまりティオリアの写身《うつしみ》とは全く違っていた。

 写身《うつしみ》の髪色は薄い紫。毛先に向かって発光するようにグラデーションが掛かった神秘的な色だ。瞳も鮮やかな紫色をしており、普通の人間ではないことが一目でわかる見た目をしている。

 しかし動画に映っているティオリアの髪色は黒。毛先に向かって薄い紫色にグラデーションが掛かっている。珍しくはあるが、染めたと言われればまぁ納得できる範囲だ。瞳も変身状態のような明るい紫ではなく、深く暗い紫に見える。身に付けている服装も一般的な女性が着るような普通の可愛らしいものだ。写身《うつしみ》が着ているようなふわっとした衣装ではない。


「なんか…、変身した椎名さんの髪と似てるね…。毛先を光らせたらほぼ同じ見た目だ」


 コーセーがまた感想を零す。変身した琴乃の髪の毛先は紫色に発光している。確かに光らせなければ動画に映るティオリアとほぼ同じだ。


(紫は魔力の色です。琴乃さんは変身することで体内の魔力が溢れ出し、毛先が紫色に発光しているんです。獅子化したノワールさんの体毛も同じです)

「そうだったんだ…。でも素の状態のティオリアさんの髪先が紫なのは?」


 ティオリアの話に頷きながら、琴乃が疑問を口にする。


(私は生まれつき魔力量が多かったんです。だから瞳や毛先が自然に魔力の色に染まってしまって…。変身状態だと特に顕著で、髪がほぼ全て紫に光ってましたね)


 少ししみじみした雰囲気で話すティオリア。それを聞いて琴乃は心配になる。


「……もしかして、いじめられたりしちゃった…?」

(あ! いえ! そういうんじゃなくて! 魔力の防御が強力で髪を染めたりができないんですよ。お洒落の幅が狭まってしまうのが少しだけ残念で…。いじめられたりは全くありません! ……むしろ私がいじめちゃってたかも…)


 否定の最後に、何か聞いてはいけない言葉が聞こえた気がした。


(まぁ戦ってる最中に出てくる素のティオリア(・・・・・・・)はキツイ性格してるしな…。気の弱い奴は圧倒されるかもな…)


 ティオリアに聞こえないように心の深い所で思うヒロ男。あのティオリアを知っていたらいじめられてたかもなんて発想は出てこない。


「そっか、良かった。でも何かあったら遠慮なく言ってね? いっぱいお話聞くから」

(琴乃さん…。ありがとうございます! すごくうれしいです!)


 琴乃のおかげで沈んでいたティオリアの声色が明るくなってきた。これなら話を次に進めることができそうだ。


「ティオリアさん、話を戻すんだけど、この動画に映ってるティオリアさんは"なんで動いてる"の? ティオリアさんの魂はおーがの中にいるのに」


 コーセーが核心をつく。そう、ティオリアの魂、すなわち心は"ここにいる"のだ。つまり動画の中のティオリアは魂無しで動いていることになる。それではまるでゾンビだ。


(…別の魂を入れたか…。いえ、おそらく"疑似人格"を作ったのでしょう。生き物の身体には記憶が刻まれています。それを土台に疑似的な人格を作り出し、動かすことは可能です。…禁忌寄りの魔法なんですけど、ゼノウィータに倫理観なんてあるわけないですしね…)


 釈然としないような、割り切れないような、そんな声色で話すティオリア。複雑な心境のようだ。


「ねぇノワール、このティオリアさん…えーと、疑似ティオリアさん…長いな、…疑似さん(・・・・)はどこにいたの?」

「疑似さんて…、」「疑似さん…」(疑似さん…ぷっ)


 ヒロ男、琴乃、ティオリアが突っ込みを入れる。ティオリアに至っては笑っている。


「コーセーって年に一回くらい変な事するよな」

(あら、今日は年に一回の記念日ですね?)

「…珍しい場面に立ち会えた」

「ふはははは! 良かったな輝星よ! 今日は記念日になったようだぞ!」

「……皆ここぞとばかりに弄って来るね…。ノワール、いいから場所教えてよ」


 コーセーが少し顔を赤くしてノワールを急かす。


「そこだ」

「ん?」


 ノワールが前足を上げて斜め下を指す。


「……床?」

「違う、外だ。この家の外の通り、その影に隠れておったぞ」

「………」「………」(………)「………」


 ノワールの説明に全員が無言になる。


「なんだ、もっとわかりやすく言わないとわからぬか。この家の前(・・・・・)におったぞ」

「お前それもっと早く言えよぉ!!!!!」


 ガシィ!とノワールの頭を鷲掴みにするヒロ男。ギリギリと握力を強めていく。


「なんだ凰我よ。柄にもなく怯えておるのか? ふはははは! あんなコソコソしておる輩に我らが負けるわけなかろう!」

「俺らじゃなくて"家族"の心配してんだよこの愚か者がよぉ…!!!」


 まさに殺す勢いでノワールに殺気を叩きつけるヒロ男。しかしノワールは余裕そうな雰囲気だ。

 その横でコーセーがチラッと窓の外を確認した。すると通りの向こう、電柱の影に綺麗な黒髪が見えた。"それ"はこちらをこっそり窺っていたが、コーセーが窓の外を覗いているのに気付くとサッと電柱に隠れた。しかし長く綺麗な黒髪がユラユラと電柱からはみ出しており、全く隠れられていない。


「………」


 コーセーはゆっくりと元の位置に戻り、右手で眉間を押さえた。


「…やっ君…、大丈夫…?」


 琴乃が心配そうに声を掛ける。


「あんなの(・・・・)に今まで気付かなかったなんて…、俺も愚か者かもしれない…」


 コーセーの言葉を聞き、琴乃も窓の外を確認する。するとすぐに黒髪を発見し、目が点になる。

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