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ルミナ☆オーバードライブ  作者: コルミ
第1話 英雄志望(ルミナ☆ストライク)
3/67

ep.3 ルミナ☆ストライク

「がああああああああ!!!」

((!!!))


 ヒロ男がモタモタしていると化け物が勢いよく立ち上がった。元気に咆哮を上げている。


(おい! 全然元気じゃねぇか! 瞬殺できるって話じゃなかったか!?)

(格闘でラベスを倒せるわけないでしょ。魔法を使ってください)

(ラベス!? 魔法!???)


 頭の中で会話していると化け物、もといラベスがすごいスピードで突進してきた。


「がああうう!!!」

「よっ」

ひょい


 変身しているからか、先ほどは目で追うのがやっとだったラベスの動きがよく見える。そしてラベスのラリアット気味のブローを軽い跳躍で躱し、ラベスの肩に片手を乗せふわぁっと上空へ跳び上がっていく。


(すげぇ身体能力だ。身体の軽さも相まって"綿毛"みたいだな)

(あの…、もう少しマシな例え無かったんですか?)


 綿毛と例えたのが少し不満なようだ。しかし今はそれに構っている暇はない。魔法とやらを教えて貰わなければ。

 ふわぁっと空中にゆっくりと放物線を描きながら、ヒロ男は頭の中から聞こえる声に尋ねる。


(おい、魔法ってどうやって使うんだ?)

(え!??? 貴方今までどうやって生きてきたんですか!??)

(何の話だ…)


 どうやらこの声の主的には魔法は使えて当たり前らしい。

 ラベスを視界に入れながらふわっと着地し、走って来るラベスをさっきと同じようにやり過ごし再び上空へ。


(あんたがどこから湧いて出たのか知らんが、少なくとも日本じゃ魔法使える奴なんていねぇ。簡潔にわかり易く魔法の使い方を教えろ)

(…私…なんて世界に来ちゃったの…)


 さっき『力の使い方は中からレクチャーします』なんて言っておきながら全く役に立たない声の主。

 結局魔法の使い方を聞けず、またふわっと着地。


(面倒だ! 殴り倒してやる!)


 ぐっと重心を落とすヒロ男。


(ちょちょちょ! 無茶はダメ! ラベスは魔力で無理やり身体を強化してるの! 魔法じゃないとその鎧を貫けない!)

(うるせぇ! さっき盛大に吹っ飛んでたじゃねぇか! 頭に何発も叩き込んであの首捻じり切ってやらぁ!)


 頭の中で喧嘩しているとラベスがまた突進してくる。性懲りもなくラリアット気味の大振りの攻撃をしてきたのでスル…と躱しラベスの懐へ。


「はっ!」

ドガン!

「ごがっ!」


 ヒロ男の口から出力される可愛らしい声と共にとんでもなく重い正拳突きがラベスの腹に突き刺さる。

 ラベスの身体がくの字に折れ、頭が下がって来る。


「はあああああ!!!」


 ドガガガガガガとラベスの顔面にラッシュを叩き込む。ラベスの頭が少しずつ捻じれていく。


(ひえええええ…、何なの貴方、私の写身《うつしみ》を使ってるとはいえこの攻撃力はおかしいわよ…)


 頭の中の声を無視し、ひたすらにラッシュを叩き込み続けるヒロ男。どんどんラベスの首が捻じれていき、ついに…。


びり…


 ラベスの首の皮膚が千切れ、肉が裂け始める。


(よーし! このまま捻じり切ってやる!)

(ダメ! 一旦離れて!)


 声を無視し、ラッシュを続けるヒロ男。びりびりと傷口が広がっていく。


(逃げて! 早く!)

(あぁん? もうちょいで倒せそうじゃねぇか。何で逃げな――)


 その瞬間、ラベスの傷口からぶわあああああああああと夥しい数の細い触手が溢れ出し、ヒロ男にびゅるびゅると巻き付いていく。


(ひいいいいいい気色悪いいいいいい!!! 早く振りほどいて!!! ラベスに取り込まれちゃう!!!)

(お前!!! 説明が下手すぎねぇか!??)

(言うこと聞かないのが悪いと思います!!!)


 びゅるびゅると暴れながらどんどんヒロ男に巻き付いていく細い触手。

 ヒロ男は「ふん!」と両腕を広げ、ブチブチと触手を千切り両腕の自由を確保する。しかし足や胴体に巻き付く触手はそのまま残り、ついにヒロ男を引っ張り始めた。


(いやあああ! 感覚が共有されてるから私にも巻き付かれてる感触が伝わってるのよぉぉ! お願いだから早く振りほどいてええ!)

(うるせぇな! 頭の中でぎゃーぎゃー喚くな! すぐ脱出してやるからもう少し我慢しろ!)


 するとヒロ男は張力の掛かった触手に手刀を振り下ろす。

 スパンッと触手の束が切断され、ヒロ男に巻き付いていた触手がバラバラと振り落とされていく。

 離脱ついでにラベスの頭に蹴りを入れ、蹴りの反動でふわっと跳び、距離を取って着地した。

 ラベスは捻じれた頭を両手で強引に戻し、傷口では細い触手がびちびち暴れて絡み合い、傷を塞いでいく。

 ヒロ男はそれを眺め、頭の中の声に聞きたいことができた。


(……なぁ、あのラベスって奴、"核"みたいなもんがあるんじゃないのか?)

(それを魔法で破壊して倒すんですよ!)


 声の返答を聞き、右手を額に当てため息を吐いた。


(普通はな、弱点の情報は最初に共有するんだよ。何が『今までどうやって生きてきたんですか!??』だ!!! 俺よりお前の方が心配だわ!!!)

(ちょっと! どういう意味よ! ちゃんと警告してあげてるでしょ!?)

(物事の表面じゃなくて中身を説明しろって言ってんだよ!!!)


 頭の中で喧嘩していると、首で細い触手をびちびちさせながらラベスが走って来る。そしてまたもや大振りのブローを繰り出す。

 もはやその攻撃を完全に見切っているヒロ男がひょいっと跳躍しブローを躱し、前回までと同じようにラベスの肩に片手を置きふわぁっと上空へ離脱しようとする。

 しかし肩に触れた瞬間、ラベスの首から細い触手がヒロ男の手に殺到しびゅるるると絡み付いていく。


(いやあああああまた気色悪いいいいいい!!!)

(いちいち叫ぶんじゃねぇよ!!!)


 ヒロ男は冷静に自由な方の手で手刀を振り下ろし触手を切断し、ラベスの肩を蹴り跳躍。

 尚も絡み付こうと触手が伸びてくるが、両手で手刀を繰り出し全て迎撃していく。


(おい! 魔法の使い方教えろ! どうすればいいんだ!?)

(イメージよ! 魔法を使ってる自分をイメージして詠唱するの! そうすれば魔力が応えてくれる!)

(イメージは…まぁいいが…、詠唱ってなんだ!?)


 ふわぁっと上昇しながら必死に脳内会議を交わす二人。


(私の場合は『ルミナ☆シュート』とか『ルミナ☆フラッシュ』とか…、"ルミナ☆"が魔法発動の起点になってる!)

(俺は!?)

(私の写身《うつしみ》を使ってるならイメージしながら"ルミナ☆なんとか"って繋げれば魔法が使えるはずよ!)

(それ言うの!? 俺が!?)


 危機を脱する為とはいえ、ヒーロー志望のヒロ男としてはキラキラヒロイン感溢れるその詠唱はご遠慮したかったが…。


(格闘じゃ倒せないのはよくわかったでしょ!? いいからやれ!!!)


 最初の丁寧口調が完全に抜け落ちた声の主がヒロ男に命令する。

 ぐしゃっと苦悶の表情を浮かべるヒロ男。

 この場を収めたい正義感と男のプライドが真っ向からぶつかり合う。


(あれを逃がせば大勢の人が取り込まれて死ぬわ! この世界には魔法が無いんでしょ!? つまりあれを止められるのは貴方だけなの! そんな"ちっぽけ"なプライドなんて捨てなさい!!!)

(ちっぽけだと!? ふざけるな!!! ヒーローは…! 俺の人生の目標なんだ…!)

(自分のプライドのために人を見殺しにするのがあんたの目指すヒーローなわけ!? 大したヒーロー様ね!!!)

(!!!!!!)


 返って来た言葉がドカンとヒロ男の心を殴りつける。

 自分のために人を見殺しにする? 違う! そんなものはヒーローではない!

 救える命のために全力を尽くす。それがヒロ男の、日色凰我の目指すヒーローだ!


「うああああああああああああ!!!!!!!」


 可愛い声で咆哮を上げるヒロ男。

 その身体の周囲に光の粒子が現れ、残光を残しながら急速に渦を巻き、ヒロ男に光の粒子が集中する。


「ルううミいいナあああああ☆!!!」

(え!? 力づよ!?)


 ヒロ男のあまりに力強い詠唱に声の主が困惑し始める。

 しかし光の粒子はその輝きをどんどん増していく。


「ストラあああああああああああイク!!!!!」


 ドオオン!とラベスに向かって射出されるヒロ男。右足をラベスに向け一直線に伸ばし、閃光となってラベスを突き破る。


ズガアアン!

「ぐがああああああ!!!?」


 ズザアアアアア!と格好良く着地し、ポーズを決めるヒロ男。その背中の向こうでは胴体に大穴を開けたラベスに急激に光が集まり、ドカアアアアン!と爆発四散した。

 爆発を背にス…と立ち上がるヒロ男の目からは一筋の涙が零れる。


(さよなら、俺が目指したカッコ良いヒーロー…。人を救うため、俺はオネエ系ヒーローになる…)

(ガワが超可愛い私なんだからオネエ系になれないわよ?)


 頭の中で野暮な言葉が聞こえるが、悲しみに暮れるヒロ男にはそれに反応する気力は無かった。

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