ep.25 怖い女とやさしい魔法、ルミナ☆ライト
「椎名さんすごいね。もう魔法使えるようになったんだ?」
「あ、やっ君。やっ君に教えて貰った魔法の使い方で光線出るか試したら出ただけなんだけど…」
(コーセーさんどんな教え方したんですか!? 私の世界でも魔力の扱いを教えたその日に収束砲を使える子なんていませんでしたよ!? しかも無詠唱ですよ!?)
鼻息が荒そうなテンションで質問してくるティオリア。しかし聞かれたコーセーもよくわかってはいない。
「ティオリアさんに教えて貰ったことをそのまま椎名さんに教えただけなんだけど…。ていうか今の光線ってそんなにすごいの?」
「身体強化のような常時発動型の魔法以外は普通詠唱が必要なんです。それは『これから私は魔法を行使します』という自分への宣言でもあるんです。それを省略するということはつまり息をするように自然に魔法を使ったということです! これがどんなにすごいことかわかりますか!?」
ティオリアは興奮している。とりあえず、その熱量から琴乃がすごいことをしたというのはわかった。
「椎名さんはすごいことをしたという自覚は?」
「無いよそんなの。それに自分の指から熱線が出るのが息をするくらい自然なことだと思ってる女とか怖すぎない?」
「それは…確かに怖いね」
琴乃の冷静な意見に思わず苦笑いするコーセー。
(琴乃さんならすぐに身体強化、空中移動、変身まで使いこなせそうです! 今日のカラスくらいなら自分で成敗できますよ!)
「いや…、私は戦うのは無理かな…」
ティオリアの頭の中ではすでに琴乃を魔導士にする育成計画がスタートしていそうな感じだ。
それを感じ取った琴乃はすぐに無理だと宣言。
そしてコーセーもすぐに琴乃の支援に入る。
「ティオリアさん、たぶんこの世界ではラベスと戦えるメンタルを持ってる人はかなり少ないと思うよ」
(そうなんですか?)
「うん。命知らずや蛮勇で突っ込む人は結構居そうだけど、ティオリアさんやおーがみたいに"本当の意味で"戦える人はほぼいないと思う。あとラベスを利用しようとして自滅する人や国もかなり出るだろうね。ちょっと冷たい意見だけど」
(ふむぅ…、この世界は私の世界とは違う問題を抱えてる感じなんですね…。あんなのを利用しようとする神経がわかりませんが、実際私の世界でも昔そういう国がいくつも自滅した歴史がありますから、良からぬことを考える人間はどこにでもいるのでしょうね)
コーセーの話を聞いて、ティオリアも少し冷静になってきたようだ。
「あ…、でも空を飛んだりとか、変身とかは少し興味あるかも…。さっきの話だと"魂に刻まれた自分らしい姿"になるんでしょ? 私の自分らしい姿ってのがどんな姿なのか見てみたい。…人には絶対見せないけど」
琴乃が少し恥ずかしそうに言うと、ティオリアがそれを優しく肯定する。
(琴乃さんならきっと素敵な姿に変身できますよ。それに戦わなくても、逃げるために魔法を覚えるのも大切です。さっきコーセーさんにも身体強化魔法の練習をして貰ってましたけど、それがまさに逃げるための練習でしたから。そして空を飛ぶのは身体強化魔法の延長線上の技術です。良ければコーセーさんと一緒に少し練習していきませんか?)
「…うん、やっ君と練習してみる。ティオリアさん、監督よろしくね?」
(はい! まかせてください!)
ティオリアが元気に返事をすると、琴乃が嬉しそうに微笑む。
綺麗に話がまとまり、コーセーも安心感から微笑んでいると、突然ヒロ男が話に割り込んで来た。
「コーセー! ティオリア! 光線のイメージができた! なんかできそうな気がするから見ててくれ!」
(ほんとですか!?)
「まじか! 見せてくれ!」
するとヒロ男は右手の平を斜め下へ向け、魔力を集中させ始めた。
(あれ? 変身しなくて大丈――)
ティオリアが声を掛けると、ヒロ男の手の平からぴかっと光が照射され、地面を明るく照らし始めた。
「やったぜコーセーティオリア!!! 光線出た!!!」
はしゃぐヒロ男。しかしその光は地面を明るく照らしている"だけ"だ。
「な、なぁおーが…、お前何をイメージしたんだ…?」
「ガキの頃親父が"懐中電灯"で遊んでくれたの思い出してよ! 椎名が指から出せてたから手の平からも出るじゃねぇかと思ってイメージしてみたぜ!」
嬉しそうに説明するヒロ男。ティオリアが言葉を捻り出す。
(す、すごいですおーがさん! これで光の出力を上げて行けば敵もジュージュー焼けますね!)
「あぁ! いずれラベスも焼き尽くしてやるぜ!」
手の平をピカピカさせながら未来の展望を話すヒロ男を眺め、何とも言えない気持ちになるコーセー。
(やさしい光線技だなぁ…。差し詰め"ルミナ☆ライト"ってとこか…)
そして琴乃は顔を背け笑いを必死に堪えていた。




