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ルミナ☆オーバードライブ  作者: コルミ
第4話 英雄の受容(ルミナ☆スロー)
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ep.22 ルミナ☆スロー

 ふわぁとラベスの遠くまで跳んで行き、トッと着地。


(どうするの? 今までは近接でもギリギリ何とかなってたけど、あのレベルのラベスに近接は自殺行為よ)


 遠目に見えるラベスは切り落とされた手首を触手で繋ぎ合わせ、何事も無かったかのように手をグッパッグッパッと動かしている。腹の触手もまた生えてきたようで、にょろにょろしてるのが見える。

 ティオリアの言う通り、"あれ"に近づくのはかなり危ないかもしれない。


(よし、コーセーの助言を使う時が来たな)


 ヒロ男はそう言うと、足元の石を拾った。


(え、おーが、貴方まさか!)


 ティオリアが何か言っているのを置いておいて、ヒロ男は石に魔力を込めコーティングする。そして…。


(そおおおおおおい!!!)


 身体全体を使い腕を鞭のようにしならせ、ビュンッ!と投石した。その瞬間ドンッ!という、石ころが空気の壁を突き破る激しい音が響き、周囲の商店の窓ガラスがミシミシ音を発する。

 放たれた石はラベスの足に直撃し、バカアアン!と肉を弾けさせ貫通。大穴が開いた足では巨体を支えられず、ゴロンとラベスが転倒する。


(よっしゃあああ!!! さすがコーセー! 最高だぜ! 『ルミナ☆スロー』と名付けよう!)

(ちょちょちょちょっと待って何で投石でソニックブーム起こしてんのよバカなんじゃないの!? それに何で石ころでラベスの体表を貫通できるのよ!?)

(石に魔力込めてやったからな! "半魔力弾"だぜ!)


 大混乱のティオリアへの返答はそこそこに、ヒロ男は止《とど》めの準備に取り掛かる。


「ルううミいいナああああ☆!!!」


 ヒロ男が詠唱を開始すると周囲に光の粒子が現れ、残光を残しながら急速に渦を巻きヒロ男に集中していく。光の粒子の輝きがどんどん増していく。


「ストラあああああああああああイク!!!!!」


 ドオオン!とラベスに向かって射出されるヒロ男。右足をラベスに向け一直線に伸ばし、閃光となってラベスを突き破る。

 ズザアアアアア!と格好良く着地し、バッとすぐに立ち上がりポーズを決めるヒロ男。その背中の向こうでは体に大穴を開けられたラベスに急激に光が集まり、ドカアアアアン!と爆発四散した。


(よし! 少し梃子摺《てこず》ったけど何とか撃破だな!)

(はぁ…、おーがさん、投石に関してはコーセーさんと相談しましょう…。ソニックブームは危ないです…)

(む…? そうか…、確かにガラス割れそうだったからな…、わかった)


 勝利の後の脳内会議をする二人。すると"いつもの声"が割り込んで来る。


「ティアさんお疲れ様! 素晴らしい投石フォームだったよ! 美しかった!」


 馬鹿だった。性懲りもなくスマホを構えて動画撮影をしている。

 ヒロ男は額に手を当ててため息を吐く。


「また貴方ですか。どこにでも現れますね」

「ティアさんのいるところにならどこにでも行くさ☆」


 それを聞き、精一杯可哀想な物を見る目で見てやると、「あぁその表情も美しい」と呟き出したので無表情にした。


(ティオリア…、こいつ本当にそのうち死ぬんじゃないか…?)

(可能性はありますけど、私たちにはどうすることもできません…。無事を祈るしか――あ、おーがさん、四散したラベスの魔力が再構成されていきますよ。出現から撃破までの時間が短かったので取り込まれてた人も全員無事なはずです)

(お、そりゃ良かった。がんばった甲斐があるな!)


 ティオリアの報告を聞き、ラベスが爆発四散した場所を眺める。

 すると、ぱぁ…、と光が集まり、光が人の形になってバラバラと並び始めた。


(ひーふーみー……十五人か…だいぶ取り込まれてたな)

(えぇ、あの強さも納得です。でもこの人たち身体に妙な模様がありますね? 魔力から再構成された後にも模様が残るなんて…、魂に刻まれるほど、よっぽど大事な模様なんですね)


 ティオリアの言葉でヒロ男も気が付いた。ラベスを倒して魔力から再構成されたこの人物たち、全員厳つい入れ墨をしているのだ。


(………ティオリア、こいつら、ヤクザだ…、反社会組織の人間だ…)

(…! …なるほど。ゼノウィータ…、考えましたね…)


 ティオリアが深刻な声色でそう言い、すぐに切り替えるように言葉を続ける。


(とりあえず私たちにできるのはここまでです。あとはこの撮影してる人に任せて帰りましょう)

(賛成だ、帰ろう)


「あの、私は帰るのでこの全裸の人たちのことは任せますね? 頼みましたよ?」

「ティアさんからの頼みなら喜んでお引き受け致しますぅぅ!!!」


 気持ち悪い返答に顔が引き攣るが、使いようによっては便利かもしれないと、馬鹿への評価を少しだけ改めた。




 そして家々の屋根を跳躍しながらコーセーのいる緑地公園へ向かうヒロ男。

 ティオリアから質問が来た。


(そういえば今回は触手に絡まれた時おーがさんも叫んでましたね。いったいどうしたんですか?)

(えーと、んー…)


 言うか悩んだが、"お触り事件"にも関係することなので、隠すのは違うと思って話すことにした。


(コーセーの部屋で魔力を感じる練習してた時にさ、俺が感じてるそわそわをティオリアが感じてるように思えなくて、その違いって何かを深掘って考えてたんだ。そして最終的に、俺は変身時の女子の身体を拒絶してるから魔力を感じられないし、女子の身体のパーツに魂が過剰反応するんだって気づいた。だから、変身時だけは女子の身体であることを認めようって思ったんだ。そしたら魔力を感じられるようになって、そわそわも消えた)

(そうだったんですね…、でもそれが叫びとどう関係が?)

(たぶん今、ティオリアの身体と俺の魂の波長みたいなものが前より合ってるんだと思う。そのせいか触手に触られた時背筋がぞわぞわした。ティオリアがああいうのを嫌がる理由がよくわかったよ)


 ヒロ男の話を聞き、ティオリアがクスクス笑い出す。


(いつもうるせぇ!って言ってたおーがさんが一緒に叫んでくれたので何事かと思いましたけど、そういう理由だったんですね。私の気持ちがわかって貰えたんなら胸を揉ませた甲斐もあったのかもしれませんね?)

(だからごめんて! あんまり引っ張るとさすがの俺も泣くぞ!?)

(ふふふ、冗談ですよ♪)


 ヒロ男は嘆き、ティオリアはクスクスと笑う。

 時々ハプニングはあるが、ティオリアはこういう時間がとても心地良いと感じるのだった。

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