ep.14 ルミナ☆ナイフ
(……よし、あそこまで行けば大丈夫だろ)
(えぇ! あとは私たちが"あれ"を片付けるだけよ!)
上空の巨大ガラスを見るヒロ男。巨大ガラスは大きく円を描きながら滞空し、ちらちらとヒロ男を確認しているようだ。
(なぁティオリア、学校の他のやつらが狙われたら結構厄介だぞ? どうすればいい)
横目に校舎を見ながらティオリアに尋ねる。校舎の中の生徒たちは「ティアちゃーん!」「可愛いー!」「がんばれー!」などとヒロ男に声援を送ってきている。
(大丈夫よ。ラベスの攻撃対象は魔力を多く保持している生き物、つまり私たちが現れた時点で他の人は眼中に無いわ)
(そりゃ好都合だ。校庭の中央で戦えば建物への被害も抑えられる)
情報を受け取り、ヒロ男はタッタッ!と軽やかにステップし、校庭の中央へ立ち位置を変更。上空の巨大ガラスを睨みつける。
(で、おーが、どうやって攻撃するの?)
(………)
ティオリアの質問を受け、サッと周囲を確認してみる。
さすが校庭だ。生徒が走り回っても怪我をしないように石ころ一つ無い。
(……カウンターとか?)
(貴方ねぇ…)
ティオリアのため息が聞こえてきそうな雰囲気だ。
しかしティオリアは新しい情報を提供し出した。
(いい? 今の貴方は無意識に身体強化魔法を使ってる状態なの。それの延長線上の技術で空中を自在に移動することができるわ)
(は? 強化で…空中移動? どういうこった?)
突然の魔法講座にヒロ男が混乱し出す。
(深く考えちゃダメ! おーが! 貴方は飛べるの! 鳥なのよ! レッツ☆フライ!)
(いきなりIQ下がり過ぎてねぇか…?)
ともあれ、せっかくティオリアが案を出してくれたのだ。とりあえずがんばって飛ぶイメージをしてみる。
(飛ぶ…飛ぶ…、羽ばたくのか…? それともア〇ムみたいにジェット噴射…、そんなの出ねぇよ…。ウ〇トラマンみたいにピーンと両手伸ばしてジャンプしてみるか? ……恥ずかしすぎるぞそれ…。ドラゴ〇ボールではふわふわ浮いてた気がするな。…あれってどうやって飛んでるんだ…?)
(おーがああああ!!! 深く考えるなって言ってるでしょうがあああ!!!)
ヒロ男が混乱し、ティオリアが頭を抱えてそうな声で叫ぶ。
その時、目の前にぶわっと触手が現れた。思考していて完全に棒立ちになっていたヒロ男目掛けて巨大ガラスが急降下して来ていたのだ。
(!!!!!)(しまった!!!)
急いで体制を立て直そうとバックステップするもそれは悪手で、空中で足の踏ん張りの効かないヒロ男に大量の細い触手がビュルビュルと巻き付き、そのまま上空へ連行されてしまう。
(いやあああああまたなのおおおおお!!!?)
(だぁぁうるせえな! ほんとに毎回叫ぶ気かよ!?)
触手に絡まれ空中を運ばれるヒロ男の姿に校舎の生徒たちからは悲鳴が上がる。
「はあああ!」
ズババババッと手刀で触手を切り刻み、何とか拘束から脱出するヒロ男。そしてそのまま触手を掴んで巨大ガラスの本体へ登っていく。
(ちょちょちょちょちょ!!! おーが!!! あぶない!!! あぶないわよ!!! 捕まったら一瞬で取り込まれちゃうわよ!!!)
(近づかなきゃどうにもなんねぇだろうが! それに、ちょっと新しい技思い付いたんだよ!)
(わ、技ぁ!?)
巨大ガラスの腹から大量に湧き出す触手を手刀でギリギリ捌きながら巨大ガラスの足まで到達。そして一気に背中まで移動し、"詠唱"を開始。
「ルミナぁぁ☆!」
するとヒロ男の右腕に魔力が集中し、ぱぁぁと輝き出す。
巨大ガラスは詠唱中の硬直を見逃さず、ヒロ男を捕まえようとビュルビュルと大量の触手を差し向ける。
しかしヒロ男の方が早い。
「ナあああああイフ!!!」
ビュンと振り抜かれた右手が、ズバアアアン!と巨大ガラスの片翼を切り飛ばした。
「キアアアアアアアアアアア!!!」
巨大ガラスが悲鳴を上げ校庭へ落下していく。
ヒロ男は軽く巨大ガラスの背を蹴り距離を開ける。
(よっしゃあああ! これなら回避行動は取れねぇだろ! 止めだぜ!!!)
(威力が…威力がおかしい…)
手刀の範疇を完全に超えた威力の攻撃にドン引きするティオリアを余所に、ヒロ男は決め技の準備に取り掛かる。身体の周囲に光の粒子が現れ、残光を残しながら急速に渦を巻き、ヒロ男に光の粒子が集中する。
「ルううミいいナあああああ☆!!!」
落ちていく巨大ガラスに狙いを定めるヒロ男、そして光の粒子がその輝きをどんどん増していく。
「ストラあああああああああああイク!!!!!」
ドオオン!と巨大ガラスに向かって射出されるヒロ男。右足をラベスに向け一直線に伸ばし、閃光となって巨大ガラスを突き破る。
ズガアアン!
「キア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!?」
ドオオオン!と格好良く着地し、ポーズを決めるヒロ男。上空では体に大穴を開けた巨大ガラスに急激に光が集まり、ドカアアアアン!と爆発四散した。




