ep.10 石を投げろ
「で、俺は遠距離攻撃のイメージが全く湧かん。助けてくれコーセー」
「何でティオリアさんじゃなくて俺に言うんだよ…」
家を出て、丁度同じタイミングで隣の家から出てきたコーセーこと夜久輝星と挨拶を交わし、昨日の戦闘で大問題になった遠距離攻撃について助けを求めるヒロ男。
昨日は戦いの後コーセーの部屋に戻ると既にコーセーの両親が帰宅していて、そこであまり変な話もできないのですぐに帰宅したのだ。そして即行で寝落ちした。
(お願いしますコーセーさん。ラベス相手に遠距離攻撃無しというのは死活問題なんです。さっき少し凰我さんとも話したんですが、この人本当に脳筋で…)
「あの…、もうちょっとオブラートに包んで貰っていい…?」
ティオリアの切実な雰囲気の言葉に紛れるナイフにヒロ男の顔が引き攣る。
コーセーは「うーん…」と考え、パッと思いつく魔法っぽい遠距離攻撃の例を挙げていく。
「かめ〇め波とか波〇拳とか、スペシ〇ム光線とかエメリ〇ム光線とか、霊〇(レイガン)とか虚〇(セロ)とか、あとはアニメドラ〇エのベギ〇マとか、俺が思い付くのはこれくらいかなぁ」
「何だその暗号群は…、最初の数個しかわからんぞ…」
(コーセーさん、それって魔法の名前なんですか?)
難しい顔のヒロ男。そして純粋に質問するティオリア。
コーセーはヒロ男が遠距離攻撃のイメージができない理由を何となく察した。
「そういえばおーがって、漫画とかアニメとかあんまり見ないよな。ゲームもしないし。ティオリアさん、今俺が挙げたのは全部この世界の娯楽作品の中の技なんだ。気とか霊気とか妖気とか魔法力とか、全部その作品の中の主要エネルギーを放出して攻撃する技だよ」
(へー! コーセーさん! その作品見てみたいです!)
ティオリアが未知の娯楽にがっつり食い付いた。その声の弾み方にコーセーは微笑ましい気持ちになる。
「うん、じゃあ学校から帰ったら家で鑑賞会しようか。おーがのイメージトレーニングも兼ねてね」
(やったー!)
「…かめ〇め波…、波〇拳…、スペシ〇ム光線…」
喜ぶティオリアとは対照的に、ヒロ男はブツブツと技名を呟いて難しい表情だ。
「おーがのヒーロー像って特撮だったよな? ウ〇トラマンなんて光線技のオンパレードだぞ? 何でイメージできないんだよ」
コーセーが疑問を投げると、ヒロ男は神妙な表情になって答えた。
「ウ〇トラマンはもちろん理想のヒーローの一つだ。でもあれはちょっと現実離れが過ぎるというか…」
「仮面ラ〇ダーは? あれも一応遠距離攻撃あるぞ?」
「あれは武器頼りじゃねぇか…」
「はぁ…」とため息を吐くコーセー。この日色凰我という男、現実の身体能力が高過ぎるが故に娯楽世界のイメージの投影を強烈に拒んでいるらしい。
「石を投げろ」
「は?」
コーセーの唐突な指示に困惑するヒロ男。
「魔法っぽい遠距離攻撃のイメージが湧くまでの繋ぎだよ。お前野球ボール150キロで投げられるんだから変身状態なら相当な威力になるはずだ」
「確かに!!!」
嬉しそうに両手でガッツポーズするヒロ男。
それを見て少し嫌な予感がしたコーセー。一応釘を刺しておく。
「おーが、"繋ぎ"だぞ? 間違っても投石を極めようとするなよ?」
「わかってるよ! 投石で削ってルミナ☆ストライクで止め刺せば良いんだろ!? 完璧な"繋ぎ"だぜ! さすがコーセー! 頼りになる!」
繋ぎの意味を取り違えている。まずい。
「おーが、遠距離攻撃にはバリエーションも重要だ。投石の他にもいくつか技があった方が良い。だから今日は帰ったら鑑賞会だよ。絶対だよ」
「? あぁ、ティオリアも観たがってるしな。助っ人さっさと終わらせてコーセーん家行くよ」
念を押してくるコーセーに首を傾げつつも鑑賞会を了承するヒロ男。
コーセーは内心「まずったなぁ」と思いつつも、とりあえず鑑賞はしてくれるそうなので、「おーがのイメージ修正に関してはその時で良いか」、と今は問題を横に置くことにした。
(コーセーさん、安心してください。遠距離攻撃魔法はしっかり習得して貰いますので)
「ティオリアさん、頼りにしてるよ」
「???」
ティオリアのコーセーの会話の意味がわからずキョトンとしているヒロ男。
コーセーはそんなヒロ男に苦笑いし、二人は並んで学校へと歩いていく。




