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098●旅は続くのか?
彼は混乱している。義父が救急搬送された。
今のところ命に別状はないが、心は落ち着かない。
そんな時でも、妻はテーマパークに行きたいと言う。
遠くの友人に誕生日プレゼントを贈りたいとも言う。
漫画サイトの課金をもっと増やしたいと、さらに言う。
暑い、寒い、眠い。
くるな、さわるな、ちかよるな・・・。
恐るべし高次脳機能障害。
仕事は思い通りには進まない。
申請に来た保護者は、我が子の誕生日を間違う。
書類を作り直す。
彼の体調もすぐれない。
睡眠が浅い。
体がだるい。
変形性膝関節症の痛みは、緩和されない。
前立腺がんの数値は、目に見えては下がらない。
もう、どうしたらいいのか。
途方にくれる彼の耳元で、ウィルフレッダが囁く。
世界線をこえてみれば、いいんじゃない?
それは現実逃避だな。
孤島の帝王が、石に話しかけたことと、同じではないのか?
だが、逃げることが、時には生きる力にもなる。
今の彼には、そうすることが、唯一の安らぎだった。
心の安定を図るために
この方法なら、いいのかもしれない。
彼は、また、旅立つのかもしれない。
心の安らぎを求めて。
世界線の向こうへ。




