007●12人の浮かれる女たち
「’ゼロ’、もういい!わたしをおいて、先にいって!」
「あいにく、俺は寂しがり屋なんでね。断るよ。」
弾丸が体のあちこちをかすめて行く。
だが、’女神’を残して行けるものか。
俺たちは、見事に任務を果たした・・・ように見えた。
あいつらのアジトに潜り込み、データをいただいた。
まあ、両手足を広げて宙吊りになるとは、思っていなかったがな。
あとは密林を抜けてヘリとの合流点に行くだけだったんだが。
’女神’と応戦しながら撤退、だが、彼女が脚に被弾した。
幸い、致命傷ではないが、移動速度は著しく低下する。
抱きかかえながら、ここまでなんとかやって来た。
「’ゼロ’、このままじゃあ、ふたりとも死ぬわ。お願いだから、データを持って・・・。」
「今、マガジンを入れ替えるのに忙しいんだ。黙っててくれ。」
俺は仲間を失うのはもう、二度とごめんなんだ。
撃ち合いが続く。
この湿気たジャングルの中では、遮蔽物が多い。
向こうもこっちに集中砲火しにくいだろうが、
こっちも複数の相手を特定して反撃するのは、名人芸だな。
それでも、何人かには手傷を負わせたようだ。
やるな!ジリジリと距離を詰めてくる。いかんな。
’女神’が言う。
「わたしは、Athena Hines よ。’ゼロ’、あなたは?」
「そんなこと聞いて、どうするんだ?」
「無事に帰ったら、クリスマス・カードをあなたに送るのよ。」
「俺は、レイ。レイ・コムロだ。楽しみにしてるぞ。無事に帰って、ちゃんと書いてくれ!」
切り抜けた。殺しのライセンスを持つ、スパイ映画の主人公みたいだな。
だが、体力の消耗が激しい。俺も限界が近い。
ん?むこうに建物がある。
こんなところに、やけにちゃんとした家だ。
「すみません、迷惑をかけます。」
「いいえ、お連れの方は治療中です。大丈夫。直ぐに治ります。」
「わたしはゼロと言います。ありがとう。でも、できるだけ早く、彼女を連れてここを出なければ。」
「わたしは、ソレイユ。お急ぎですか?せめて軽いお食事だけでも、いかが?」
有り難いのだが、民間人を巻き込むわけにはいかない。
まして、日本の国家安全保障局と
アメリカの科学情報局のエージェントであることが、
追手にバレることはあってはならない。
「なあにかあ、気がかりなんですねえ〜!」
なんだ、この女?接近に気づかないとは、俺、相当、疲れているな。
「だいたい、そんな状態で、あんな状態の女性を連れて出ていく、なんて紳士とはいえんでしょうがあ!」
「やめてよ、ルシファー。この人、きっとワケありなんだから。」
「そうだ、そうだ!ルシファーはいつも言い方が荒っぽいぞお!」
「相手に紳士たるべし、って言うんだったら、自分だって淑女たるべし!」
「そうだ、そうだ!」
「そうだよ、そうだよ!」
「そうじゃい、そうじゃい!」
「じゃい?!・・・じゃいあんと・ぱんだ!」
「だっくす・ふんど!」
「ど・・・どぼん!」
「ん、でおわり!クラリスの負け!」
「ちょっと待ったあ!しりとり、やってんじゃなあい!」
なんだ、なんだ?!
この妙に陽気な集団?俺は疲労で頭が回らないのか?
目の前で繰り広げられる奇妙な光景に、ただ呆然とする。
美人ばかりだが、タイプはまるでバラバラ。
しかし、互いの言葉は完璧なハーモニーを奏でている。
まるで、長年連れ添った家族のようだ。
12人もいるのに、気配すら感じなかった・・・。
ソレイユ、アリス、ミカ、ソフィア。
クラリス、ラナ、ミユキ、モカ。
リノ、アマンダ、マナ、ルシファー。
最後のヤツ、名前からして危ない感じがするな。なに、まだ2人来るのか!
「そう、ひとりは男性です。」
「・・・おっ、なんかいっぱい近づいてくるね。」
「ライフルとか、軽機関銃とか持ってるね、いけないなあ。」
「じゃあ、わたしがちょこっと行ってくるね。」
「あなただけ、いいとこ持ってくのは、ずるくない?」
「家の中はルシファーに任せて、11人でやろうよ!」
「まて、わたしは置いてけぼりか?」
「あなたが行くと、命を奪っちゃうかもしれないじゃないの?それとも、’ルシファー’を返上して、アルフィンに戻る?」
「・・・チッ、わかった、任せる。弱いとこ、突いてくるよなあ。」
なんか、わからん。
この連中、何者なんだ?
どうやって接近を知った?
しかも、あいつらの武装まで、なんでわかるんだ?!




