075⚫️不可思議、再び
帝王が叫ぶ!
「集まれ!来い!敵だ!はやく来ぬか、スカポンタンども!」
しかし、その声は空しく、風に吸い込まれていった。
ロイが穏やかに言う。
「誰を呼んでいる?水夫たちならば、もういないぞ。」
帝王が目を剥く。
「貴様あ!余の配下をどうにかしたな!さては、貴様ひとりではあるまい!」
「ひとりだ。水夫たちは無事だ。コロニアの港に送り返してある。」
帝王は戸惑う。
送り返した?先程まで、ここにいた。
どうやって?コロニア・ラベリアは遠い。
帝王は、最初の混乱から脱し、思考をめぐらし始める。
ひとり?あの策士が?
戦場に出ぬ男が、供も軍勢も連れずにいるのか?
「それで、そのロイが何のために来たのだ?余の命が狙いか?ふん、笑わせる。貴様のような策のみを弄する者が、親衛隊と鍛錬を積んだ余に勝てるとでも言うのか?笑止!」
「そのように煽っても、お前の状況に何も変わりはない。この島には、我々ふたりだけだ。お前が乗ってきた船も、もうないぞ。」
「・・・それならば、貴様もここから出られぬということだな。ちょうどよい!雌雄を決しようではないか!それとも臆病者は、泣いて謝罪するか?そうすれば、命だけは助けてやろう!そのうえで、コロニアまでの供をせよ!」
「是非もなし。」ロイが剣の柄に手をかける。
その刹那、空気が震え、時が一瞬止まったように感じられた。
風が彼を中心に渦を巻く。
圧迫感に帝王がよろめく。
今度は、大気が膨張する。
帝王を言いしれぬ恐怖が襲う。
ロイが抜刀した。
白刃が陽光に煌めく。大気が更に揺れる!
ドォ、ドォーンンーン!!!
大地と海が震えるような、重く深い音が響いた。
途端に・・・気配が変わる。
穏やかな風、やさしい波音。
だが、それを感じることも、聴くこともなく
帝王は気を失い、仰向けに倒れていた。
ロイはため息をつき、
そっと手紙を置くと、光球の中へと姿を消した。




