062⚫️宝くじを買って、滅亡を防ごう
漆黒の宇宙で調査艦隊司令艦は静かに、その惑星軌道を周回している。
9隻の僚艦が後に続く。惑星の青い輝きが窓ガラスに反射している。
探査機が、文明の痕跡を捉えたという報告が届いたばかりだった。
大気成分はテラ型であり、クルーは宇宙服なしで上陸できる。
だが、先ず大気圏内に探査機をさらに放出する。データが送られてくる。
「この映像は・・・。」グレッグは息を呑む。
街並みらしき人工物と思われる残骸が、
風化した夢のように画面に浮かび上がっていた。
あれは何だったのだろう?
ビルか?庁舎か?それとも・・・?
より鮮明なデータが続々と送られてくる。
だが、住民の姿は、やはり全く無い。
人工知能は、それらの遺物がテラ時間で推定1万年は風雨に晒されている、と言う。
グレッグは決断する。
「行ってみよう。実際にこの目で見れば何かわかるかもしれない。」
調査艦隊司令艦は、僚艦を軌道上に残し徐々に降下する。
大気組成を再確認し、病原体の有無も調べる。
用心のため、宇宙服を着用し、
クドー副長と’その他’が、探査機に乗り空中発進する。
続いて、司令艦が着陸する。
クドーたちからのデータを同時共有し、
立体映像を見ながらグレッグたちは後方支援を行う。
「艦長、街と思われる中心地に到達しました。」
「どうだ、どんな文明だったか、手がかりはあるか?」
「印象としては・・・テラの地球文明時代の19世紀末から21世紀ぐらいですね。居住区と推測された場所に入ります。」
クルーたちは交代で各所を訪れ、瓦礫の下に埋もれた痕跡を丹念に探った。
破壊と混乱の痕跡も見つかる。
人骨も発見され、分析にかけられたが、死因は様々であり、特定に至らない。
記憶媒体らしきものも、見つかる。
しかし、再生方法がわからない。
例え再生方法がわかったとしても、
果たして1万年を経て内容が保持されているのか。可能性は限りなくゼロに近い。
驚いたことに、検出された遺伝子はテラ星系の人類と酷似していた。
さらに古い文明が連綿と繋がり、その滅亡までの歴史があったようだ。
博物館、と呼んで良いのか不明だが、
そこから、年代測定では1万年以上前の遺物らしきものが、並んで存在することがわかった。
だが、これ以上、調査艦隊での探索は中止となった。
司令部から、専門の学者や研究者が組織され、派遣されると連絡があったのだ。
「我々は、もう引っ掻き回すな、ということだな。」
「そうですね。しかし、艦長、これはファーストコンタクトと言えなくもないですな。」
「せやかてクドー、わしら、もう何回、ファーストコンタクトしてるんや?幸運の女神が微笑みすぎやろ?」
「そうですね。宝くじ、買ってみますか?当たるかもしれませんぞ?」
「まさか、な。だが、知的生命体、というか、この惑星の人類の滅亡は何故起こったんだろう?」
「わかりませんね。そうだ、艦長!もし宝くじがあったら、我々の滅亡因子を取り除く研究でも始めてみませんかな?」
「イヤだ!贅沢は素敵だ!滅亡回避より、まずは快楽だ!」
「贅沢は敵だ、ではなかったんですね。」
「敵かもしれんが、当たったら味方だ。」
真空の宇宙空間には、ふたりの笑い声は響かない。
瞬くことのない星々が、司令艦の窓から見えるだけだった。




