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異世界召喚で杖になった俺は、魔女の弟子と共に魔女の仇を取る  作者: 月ノ裏常夜


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29.証拠

という事で俺とレイラはリリアナを連れてあの場所に戻る事にした。

「どこに連れて行く気?」

今はレイラに杖を没収されている。下手に逆らっても勝ち目はない。

「町の近くよ」


帝国兵と戦った場所は、さほど町から離れてはいなかった。歩いていってもそう時間はかからないだろう。

今は町から出てあの場所に向かっている。

町から出る際には、昨日作った地下道を使った。

おかげで帝国兵に見つかることは無かった。


「本当に、生き埋めになった帝国兵なんているのかしら」

リリアナは辺りを見渡して警戒している。また俺たちが罠を仕掛けているとでも思ったのかもしれない。

「もうすぐ着くわよ」

「行くなら杖を返してくれないかしら」

やはりリリアナは、杖を持っていないのは不安らしい。

「ダメよ、暴れるかもしれないし」

こちらもまだリリアナを信用した訳ではない。


「だった、どうしたらあたしを信じるのかしら」

「今すぐ北の魔女に合わせるっていうなら信じてもいいけど」

ダメ元でレイラが要求を提示する。


「それは無理よ」

やはり拒否された。

今後北の魔女と協力関係を築くのが目的である以上、あまり無理な事はできない。今はこちらが潔白である事を証明するのが先だろう。

「なら大人しくついてきなさい」

そうしてしばらく歩いくとようやく目的の物が目に入る。


「見えたわ」

レイラが目的の物に指を指した。

「何あれ」

リリアナにも不自然に盛り上がっている土が見えたようだ。


「あれが私と帝国兵が戦った結果よ」

「あんなものは無かったはず」

リリアナもあの港町で活動しているという事は、港町周辺の地理はある程度把握しているのだろう。

そして、昨日戦闘の結果できたあの盛り土は把握していなかったようだ。


「まあ、私が昨日作ったからね」

レイラが誇らしげに語る。

「あれが戦った結果だっていうの?」

「そうよ。あなたと戦った時よりも大掛かりな魔法を使ったのよ」

「ならあの下に帝国兵が?」


「そうよ。見ればわかるわよ」

レイラはさらに盛り土に近づいていき、半信半疑の様子でリリアナはその後に近づく。

近くに帝国兵がいる可能性もあるため念のため周囲の警戒も怠らない。

とはいっても、大掛かりな救助作戦が展開されているのであれば近くに帝国の車両が止めてあってもいいはずだが、その様子はない。

「まさかここで私を殺す気?」

二人は警戒しながらも盛り土にどんどん近づいていき、そしてついに盛り土のある場所までたどり着く。


「これをあなたがやったの?」

リリアナは昨日レイラが土魔法を使うところを見ている。

この不自然に盛り上がった土を見れば、これが魔法で作られた物であり、レイラがやったと考えるのは普通だろう。

「そうよ。あれが見える?」

そう言って指をさした先には体のほとんどが埋まっている帝国兵の姿があった。


「まさか、帝国兵?」

「そうよ。あたしが昨日戦ってこうなったの」

昨日の見た状態から変化はない。

つまり帝国による救助はまだ来ていないという事だ。


「本当だったのね」

今まで疑っていたリリアナだが、実際に埋まっている帝国兵を見せられては信じるしかないようだ。

「これであたしを信じる気になった?」

「まだ、あなたがやったと決まったわけじゃないでしょ」

土の魔法が使えるのはレイラだけではない。他の者がやったという可能性も十分残る。

「あたし以外の誰かがこれをやったって思ってるの?」


「そうよ大体霧は魔法を封じるのに、こんな大量な土をどうやって」

リリアナは帝国兵が霧で魔法を封じる事を知っているようだ。

「あんた、霧を相手に戦った事があるの?」

「あるわよ。だから魔法を封じる帝国兵を相手に、魔法でこんなことをするなんておかしいでしょ」

リリアナからすれば、レイラが土の魔法を使える事は知っていても、霧の中でこれほどの土を動かす魔法を使うのはおかしいという疑問が残っているようだ。

正確には、霧の中で魔法を使ったのではなく、霧の外で使った土魔法が霧に当たる直前に

解除してこうなったというのが正しいのだが、そこまで言わなくてもいいだろう。

「戦い方があるのよ」


「どういう事よ」

「魔法で生み出した物は消滅しても、魔法で動かした物は、魔法の制御が消えるだけでその場に残る」

そう考えていたのだが、レイラが原理を説明してしまった。

「そこまで教えていいのか?」

それは交渉の材料として取っておくのかと思ったが、今教えてしまっていいのだろうか。


「言わなきゃ信じないんだからしょうがないでしょ」

少しお人よしすぎる気がするが。

「もうちょっと、分かるように説明して欲しいわね」

だがリリアナには今の説明では分からなかったようだ。


「私の土の魔法はね、魔法で土を作るんじゃなくて、存在する土を操って壁を作ったりする魔法なのよ」

「もしかして、霧の中で魔法を使ったんじゃなくて、霧の外で魔法を使ったって事?」

ようやく、リリアナはその結論にたどり着いたようだ。


「そうよ」

「じゃあ、あいつらは土の壁を作ったあんたに対して、霧を使って取り囲んだら、土の壁が崩れて生き埋めになったって事?」

土の魔法と霧の特性が分かれば、どうなれば今の状況になるかを逆算するのはたやすいか。


「良く分かったわね」

「そんな都合よく近づいてくるの?」

「直前にファイアボールを霧で打ち消してたから、土の壁も消滅すると思ってたんでしょ」

ファイアボールは魔力を火に変えて射出する魔法であり、霧に当たれば、炎は消滅し、魔力は霧散するため、完全に消滅したように見える。

だが実在する土を動かす魔法を打ち消した場合は、元から存在した土は残る。

その理屈が分からない帝国兵が不用意に近づいてきたのは事実だ。

「本当かしら?」

そこまで言ってもリリアナはまだ疑うらしい。


「なら本人に聞いてみたら?」

だったら生き残っている帝国兵に直接聞いてもらうのが手っ取り早い。

「まさか私に掘り起こせって言うの?」


「あそこにいるでしょ」

レイラは顔が地表に出ている帝国兵を指さす。

ここを立ち去る前に会話をしたあの帝国兵だ。

同じ場所にいるという事は、あのまま動けていないのだろう。

「まだ生きてるの?」


「どうかしら、昨日は生きてたけど」

そう言いながら、レイラは盛り土を登り、帝国兵に近づいていった。


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