表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚で杖になった俺は、魔女の弟子と共に魔女の仇を取る  作者: 月ノ裏常夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/29

23.北の魔女を探して

話がひと段落したところで、レイラが合話を変えた。

「ところで、北の魔女の居場所は分からない?」

今のところ俺達が西の魔女と戦うのに、最も勝率の高い方法は北の魔女の協力を取り付ける事だ。

「分からないね」

レイラの母親の答えはそっけなかった。

ここは西の魔女の領土だ。その領民が北の魔女の居場所を知っているはずがないか。


「だったら、北の魔女の弟子がいるっていう話は聞いてない?」

「あたしは知らないね」

これもダメか。

「そうなると自力で探し出すしかないわね」

レイラが落ち込みながらそう呟くと、レイラ母親が思い出したかのようにこう言った。

「ああ、でも手がかりになりそうな話なら聞いたことがあるよ」


「手がかり?」

それに対してレイラが聞き返す。

「逃がし屋がいるとか」

「逃がし屋って、この島から外に逃がすって事?」

「そうらしい」


「そいつは魔女の弟子?」

人を逃がすだけなら魔法が使えなくともできる。魔女の弟子でないというならば、北の魔女の手がかりとなる可能性は低く、俺たちが会いに行っても得るものはない。

「さあね。会った事が無いから分からないけど」

直接会った訳ではないのか。


「ならどうして知ってるのよ」

「噂になっている。町の者はほとんど知っているだろう」

「帝国は捕まえないのか?」

逃がし屋というのは、当然帝国から人を逃がすことを目的としているのだろう。つまりは直接帝国に攻撃する事はしないものの、帝国に敵対する行為である事は間違いない。

そんな相手を帝国が放っておくだろうか。

「帝国にこのことを密告するような奴は居ないよ」

なるほど。皆帝国に反感を持っているという事か。


その言葉を素直に信じるなら、俺たちがここに居たとしても誰も密告したりはしないという事になる。できればそうあってほしい。

それよりも気になる事がある。

「逃がし屋って、この島の外に島の住人を逃がすって事だよな」

「噂ではね」


「この島の住人が魔法を使えるのはこの島の中だけだと聞いているが」

それは以前にレイラから聞いた話だ。

「その通りだよ」

「島の外に出ても大丈夫なのか?」

島の外がどの程度安全なのかは知らないが、魔法が使えなくなったら、その方が危険な気がするが。

「この島で帝国の支配に怯えるぐらいなら、魔法が使えなくなっても島の外に出たほうが良いって考えの奴は一定数居るんだよ」

帝国と戦うよりも逃げたほうが良いという考えの奴はいるのか。


「しかし、もしも島の外で帝国に見つかったら…」

「タダじゃ済まないだろうね」

それでも島から外に出るというのは個人の考え方によるだろう。

「一度会ってみようかしら」

どうやらレイラは逃がし屋に会ってみる気になったようだ。


「魔女の弟子かどうか分からないのに会うのか?」

一応、レイラに相手の素性が分からない状態で会うつもりなのか確認する。

「それを言うなら、魔女の弟子かもしれないでしょう」

「まあ、そういう考え方もできるが」

どうやら本当に会うつもりらしい。

「今は北の魔女に繋がる手がかりは何もないし、まずは行ってみた府が良いんじゃないかしら」


「帝国が聞きつけるのも時間の問題だろうから、会うつもりなら早めに言ったほうが良い」

いくら密告する者が居ないとはいえ、町中の者が知っている噂であれば、どこかで帝国の耳に入っても不思議ではない。

「なら早めに会いに行った方が良いわね」

「早目ってどれぐらいだ?」

何となく、嫌な予感がする。

「今から会いに行こうかしら」


「本気か?」

まあ、俺は杖の体になってから疲労を感じ無い。疲労を別に今から行っても問題はないがレイラは大丈夫なのだろうか。

「今がダメっていうなら、昼に出歩いた方が良い?」

「いや、それは危険すぎる」

「だったら今会いに行った方が良いわ」

確かに明日の夜まで待つぐらいなら、今行ってしまったほうが良いのか。

そもそも会えるかどうかも分からない。

逃がし屋が帝国に見つかる前に接触したいというのであれば、今日から動いた方がいいのかもしれない。


「お前は動けるのか?」

「大丈夫よ。軽く食べ物も食べだし」

だったらこれ以上俺が止める理由は無い。


「なら行くか」

「どこにいるか分かる?」

問題は肝心の逃がし屋がどこにいるかという事だ。

「噂によれば海岸にいると聞いたよ」

幸いにもレイラの母親が居場所を聞いているらしい。


「行きましょう」

「この時間に居るかどうかわからないぞ」

あくまで噂である。本当に海岸に行けば会えるとは限らない。

「別にそれでも構わないわよ。いるかどうかを確かめられれば」

一応レイラはそれを分かっているようだ。

俺とレイラは、期待はほどほどにして、海岸に向かう事になった。


 ●


結局レイラは逃がし屋を探して海岸に向かう事になった。

当然俺も一緒だ。

レイラは俺を持っているため、はたからみれば魔法使いの関係者であることはバレバレだが、夜ならばまあ大丈夫だろう。

ここは港町である。海岸はそう遠くない。あまり時間は掛からないだろう。

それよりも気になる事がある。


「お前の母親は信用できるのか?」

流石に本人の前では言えなかったが、レイラの家を離れた今、これは確認しておきたい。

「当然でしょう」

レイラは信用しているようだ。

とはいえ俺からしてみれば、昨日初めてあった人物だ。そう簡単には信じられない。

旦那が人質に取られているという可能性もある。


「お前はどれぐらい家を離れてたんだ?」

まずは状況を確認したい。

「さあね。数年は経ったと思うけど」

「その間に何かあったかもしれないだろう」

時があれば、人は変わる。

レイラが不在の間に、レイラの母親と帝国の関係者が接触した可能性もある。

「うちの親に限ってそれは無いわよ」

おれの懸念とは正反対に、レイラは全く親を疑っていない様だ。


「何か根拠があるのか?」

「東の魔女の弟子になる時に色々あったのよ」

「何かあったのか?」

「あまり話したくなる事じゃないわね」

「そうか」

まあ、家庭の事情という事か。


もしかしてレイラのせいで両親が離婚したとでもいうのだろうか。だが先ほどのレイラと母親の会話を聞いた感じではレイラの母親は今も夫がいる状態だ。

それがレイラと血のつながった父親かどうかは別問題だが、レイラと今の父親が不仲というような感じではなかった。

レイラが何を隠してのか分からないが、今は深入りはしないほうが良いか。


「そんなに私の母さんが疑わしいの?」

「お前の母親を信じたとしても、逃がし屋が本物かどうかは別問題だ」

「どういう事よ」

「この噂自体、帝国が魔女の関係者を呼び寄せるために撒いた嘘と言う可能性もある」

「そうね、でもそれを確かめに行くんじゃない」

一応逃がし屋が敵かもしれない事は、レイラも分かっているようだ。


「見つけても、いきなり攻撃したりするなよ」

だからと言って問答無用で攻撃するのも問題だ。

「しないわよ」

「ならどうするつもりだ?」

一応レイラのプランを聞いておこう。

「話を聞くだけよ」


「この格好でか?」

俺を持っているという事は正体はバレバレだ。

「悪い?」

「私は魔法使いですって言ってるようなものだろう」

相手が帝国の関係者だったら間違いなく戦闘になる。

「あんたを置いてく方が危ないわよ」

杖が無ければ魔法を使えないレイラからすれば、杖無しで危険な相手に会うほうが自殺行為なのかもしれない。


「それはケンカを売る前提だろう」

俺を手に持っているというのは魔法が必要になるという事であり、相手と戦闘をするという意味と変わらない。

「ただの保険よ。絶対に魔法を使うって訳じゃないわ」

「だが俺を持った状態で姿を現すのは、魔女の弟子であると自分から名乗っているようなものだぞ」

この噂が、俺たちをおびき出す罠だった場合、高確率で戦闘になる。


「ならどうしろっていうのよ」

「遠くから見るだけにしたらどうだ」

いきなり話しかけるというのは危険すぎる。

「それだと話を聞けないでしょ」

「向こうが魔女の関係者なら杖を持っているだろう」

俺達はあくまで北の魔女に会うために、北の魔女の弟子を探している。逃がし屋が北の魔女の弟子で無いのであれば、危険を冒してまで接触する必要は無い。


「逃がし屋が杖を持って無かったら話しかけないって事?」

「その方が安全だ」

「杖を隠してるだけかもしれないじゃない」

今の状況で杖を見せびらかすのは、危険であることはレイラも把握しているようだ。そしてそれは逃がし屋も同じことだ。

つまりは魔女の弟子である事を隠している可能性がある。


「帝国の罠だったらどうするんだ」

とはいえ相手が帝国の息のかかった者であった時の危険性を考えたらうかつに声をかけるべきではないだろう。

「倒せばいいでしょ」

どうやら前回帝国兵を倒したことにより、レイラは警戒感が薄れているようだ。


「一度勝ったからといって、次もうまくいくとは限らないぞ」

「戦うのに反対なの?」

「海岸とはいえ町の近くだぞ。騒ぎを起こせばすぐに帝国兵が飛んでくる。街道で戦うのとは訳が違う」

この町に滞在している帝国兵の数も分からないのに騒ぎを起こすのは危険すぎる。最悪西の魔女が出てくる可能性もある。


「だからって、見てるだけだと何も分からないわよ」

それはそうなのだが。

「逃がし屋に逃がしてもらった奴を知ってるのか?」

まず本当に相手が逃がし屋かどうかが疑わしい。

「知らないわよ。逃がし屋の存在自体昨日知ったんだし」


「だったらその逃がし屋が本物である保証はないだろ」

それに俺はレイラの母親の事も疑っている。わざと俺たちを帝国兵の元へ誘導したという事も考えられる。

「そうね」

「そもそも本当の逃がし屋だったらどうするつもりだ?」

「北の魔女の弟子かどうか確認して、北の魔女の弟子なら北の魔女の居場所を聞くわよ」


「魔女の弟子でなければ?」

「出来る範囲で西の魔女を倒すのに協力してもらうわよ」

まあそれは別に問題ない。

「帝国の手先だったら?」

「倒せばいいでしょ」


「いや、戦闘になるのは危険だ」

「ならどうすればいいのよ。下手に逃げたところで追ってくるでしょ。家にまで追ってこられたら母さんに迷惑が掛かるわ」

確かに逃げたところで追ってくる可能性は高い。

戦わずに済ますならどうにかして帝国兵を追手をまく方法を考えなければならない。


「誰かいるな」

結論を出すよりも先に、俺は海岸に人影がいる事に気が付いつぃまった。

「みたいね」

レイラもそれらしき人物を見つけた。


「あいつが逃がし屋か?」

とはいえ、あれが例の逃がし屋かは分からない。

そういえば、逃がし屋の特徴を何も聞いていなかった。

「他に誰がいるのよ」

とはいえ、こんな夜更けに海岸に一人でいるというのは普通ではない。

逃がし屋である可能性が高いがどうしたものか。


「まだ逃がし屋と決まった訳じゃないぞ」

「だったらあなたが話しかければいいんじゃないの?」

俺の声が聞こえるのは魔力を持つ者だけ。俺の声が聞こえれば島の出身者というのは判別できる。

「俺の声が聞こえれば、逃がし屋は本物って言いたいのか?」

「そうなるでしょ」


「魔力があっても、帝国と手を組んでいる可能性はある」

西の魔女が帝国と手を組んでいる今、魔力があるからと言って信用する事はできない。

「それもそうね」

加えて、俺という存在はあまり外部に知られていない。

もしも相手が魔力を持つ存在というのであれば、俺という存在を直ぐに開示するのは得策ではない。


「俺が逃がし屋に話しかけるタイミングは、俺が決める」

ある程度相手の真偽が分かってから切り札として使ったほうが効果的だろう。

「決まったなら、まずは私が声を掛けるわ」

レイラは行く気満々だ。


「待て」

「何よ、まさか様子を見るっていうの?」

「どうしても話しかけるというのか?」

できれば相手が帝国の息のかかった者でないという確証が欲しいが、見ているだけでそれを判断するのは無理だろう。

「しつこいわよ」

それにレイラはもう行く気になっている。これ以上引き留めるのは無理だろう。


「だったら、話しかける前に、保険をかけておいた方がいい」

せめて相手が敵だった時のために、準備をしておこう。

「何をするつもりよ」

どうやら準備をする事は、反対しない様だ。


「風の魔法は使えるんだったな」

「ええ」

「空気を固定する事はできるか?」

「固定?」


「特定の範囲の空気を、他の場所の空気と混ざらないようにする事はできるか?」

「できるけど、そんな事してどうするのよ」

それを聞いた俺は、作戦をレイラに話した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ