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異世界召喚で杖になった俺は、魔女の弟子と共に魔女の仇を取る  作者: 月ノ裏常夜


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13/21

13.北の魔女について

俺達は川を渡り、だいぶ町に近づいてきた。

帝国兵はあれから遭遇していないが油断はできない。

とはいえただ歩いているだけでは手持無沙汰だ。


「ところで、帝国の目的は?」

魔女側の事情はある程度聞いた。今度は帝国側の事情を聴いてみよう。

「この島の征服よ」

なんとも分かりやすいようだ。


「魔女が降伏するという選択肢は?」

この島と帝国は長年戦っているようだが、降伏する事はないのだろうか。

「ありえないわね」

「そうは言っても四人いる魔女の一人が裏切り、一人が倒され、一人は囚われ残っているのは一人だけだろう」

「そうね」


「降伏するというのもあるんじゃないのか?」

帝国と戦うのが魔女というのであれば、実質戦力は四分の一にまで削られている。このまま戦って勝てるのだろうか。

「それをするぐらいなら死ぬまで戦うわよ」


「それはお前以外の島民も同じ考えなのか?」

「恐らくね」

俺にとってはこの島の住人の一般的な考え方というのはまだ理解できないが、そこまで言うとなるなら、何か理由があるのだろう。


「それほど帝国の支配は酷いのか?」

「噂に轟いてるわよ。帝国の支配下に置かれたら搾取されるだけなんだから」

なるほど、降伏しても酷い目にあうのが分かっているなら、死ぬまで抵抗するという考えは戦時下ではよく聞く話だ。


「だったら、なぜ西の魔女は帝国と手を組んだんだ?」

そうすると余計に西の魔女が裏切るというのが理解できない。

「それだけこの島が憎かったんでしょ」

「帝国と一緒になって、この島の住人を苦しめたいって事か?」

「それが狙いでしょ」


「悪趣味だな」

「でも効果的よ」

この島全体が憎いというなら、侵略者と手を組んで支配するというのはアリなのかもしれない。人としてどうかと思うが。

「人質を取られたとかではないのか?」

脅迫されて仕方なく従っているという可能性は無いのだろうか。

「あの口ぶりだから、自分から望んで帝国側についたんじゃないの?」


「それもそうか」

東の魔女と戦っていた時の西の魔女の言葉は、端々からこの島に対する憎しみが滲み出ていた。

「何でそんな事聞くのよ」

「西の魔女と戦わずに済む方法があれば一番だと思ってな」

そうすれば、そもそも霧と対峙する必要もなくなるかもしれない。

「西の魔女とは、戦うしかないと思ったほうが良いわよ」

だが現実はそう甘くはないようだ。


「ならさっさと倒そう」

「さっきも言ったでしょ。仮にも向こうは魔女よ。正面からあたし一人で戦っても勝てないわ」

「仲間はいないのか?」

東の魔女の弟子はレイラ一人だけとは聞いているが、この状況でレイラの仲間となり得るような人物に心当たりはないのだろうか。

「考えられるのは北の魔女ぐらいだけど」

それは俺も頭の中に思い浮かべていた人物だ。

西の魔女と同じく、魔女であり恐らく現在唯一西の魔女に対抗できるであろう人物。


「会えるか?」

「難しいわね。面識もないし」

ならいきなり会うのは厳しいか。

「今どこにいる?」

「それも知らないわ」

居場所すら分からないというのであれば、猶更会うのは難しい。今はとりあえず今夜の寝床を探すために予定通り町に行ったほうがいいだろう。


「仮に、北の魔女に会えたとしたら、協力してくれると思うか?」

「私が東の魔女の弟子だと知ったら、協力しないかもしれないわね」

「まさか、何か恨みを買っているのか?」

「そうじゃないわよ。基本的に魔女は競争するのが本質で協力すべきではないって人が多いってさっき話したでしょ」

そうだったとしても今はそんな事を言っている状況ではない気がするが。


「島の外からの攻撃があってもか?」

「多分ね。特に北の魔女は四人の魔女の中で一番腕が良いって言われているけど、一番の古株だからそういう考えが強いはずよ」

「なら下手に合わないほうが良いのか?」

北の魔女と会って戦う事になるぐらいなら、会わないほうがマシだろう。

「それはどうかしら。でも魔女の一人が裏切ったっていう状況は特殊だからね。今だけ協力っていう事になるかもしれないけど、どうなるかは分からないわ」


「本人の気分次第という事か」

「そうね。会えれば話をしてもいいかもしれないけど」

「探そうと思えばどうやって探す?」

「まずは魔女本人よりも、魔女の弟子を探す事かしら」


「北の魔女の弟子は何人ぐらいいるんだ?」

東の魔女の弟子はレイラ一人という事だが、北の魔女はどうなのか。

「分からないけど、かなりの数が多いっていう噂は聞いてるわよ」

「会えば分かるのか?」

「露骨に杖を持ってれば、分かるかもしれないけど、見ただけで北の魔女かどうか見分けるのは難しいわね。知り合いでもないし」

魔女の弟子同士、交流がある訳ではないのか。


「魔女と魔女の弟子以外が杖を持ってる事はありえるのか?」

「それは無いわね」

「ならとりあえず杖を持ってる奴に声をかけるか」

「帝国兵が魔女の弟子を生け捕りにしようとしているなら、自分から杖を見せびらかすような真似はしないんじゃないかしら」


先ほどの川辺でも、帝国兵は俺たちが杖を持っているのを見て、魔女関連の相手だと確信したようだった。

いくら大きな爆発だったとはいえ、すぐに帝国兵が駆けつけてきた事を考えると、町は既に帝国兵に制圧されていると考えたほうが良い。

だとすると、あの町に魔女の弟子が居たとしても、でわざわざ杖を見せても帝国兵に捕まるだけだ。


「こっちから探すしかないか」

「そうなるわね」

となると自分が魔女の弟子である事を隠して潜伏している事に賭けるしかない。

「そういえば、帝国はお前たちを捕まえてどうするつもりだったんだろうな」

「さあね、どうせロクでもない事だと思うわよ」

結局帝国兵からは聞き出せなかった。


「いずれ分かるか」

帝国兵と戦っていれば嫌でも分かるかもしれない。

「私は捕まる気は無いわよ」

「俺もそのつもりだ」

レイラが捕まるという事は、俺は西の魔女の手に渡り破壊される可能性が高い。その展開は避けたい。

「さっきの帝国兵、一人ぐらい捕まえて尋問すれば良かったわね」


「下っ端には聞かされていない可能性もあるぞ」

「かもね。まあ、殺さずに生け捕りにするって事は、何かに使ってるんでしょうけど」

魔女はこの国を守る軍隊のような役割を持っている。

侵略する側の帝国であれば敵とみなされるのは分かる。


「わざわざ生かしておく理由があるんだろうな?」

魔女とはいえ人間。人間を生かしておくには衣食住を提供する必要があり、ある程度のコストがかかる。

侵略対象に対して高圧的な態度をとる帝国がわざわざ敵である魔女と魔女の弟子を生け捕りにするというのは、生かしておくコストに見合う何かがある。

俺にはそう思えてならない。

「どんな理由があると思う?」


「普通に考えたら、人質として使うとか」

敵を生け捕りにする理由として真っ先に思い浮かぶのは人質だ。

「人質にしてどうするのよ?」

「何か交渉に使うんじゃないか?」

「あいつらが交渉を望むのかしら」


「この島が、既に帝国の人物を人質に取ってるとかはないよな?」

戦時中の人質交換というのはよくある話だ。

「聞いたこと無いわね。他には何かある?」

少なくとも、レイラは知らないらしい。


「そうだな、後はあまり考えたくはないが、壁にするとか」

「壁?」

レイラは俺の言葉が今一ピンと来ないようだ。仕方ない。もう少し具体的に説明しよう。

「攻撃されたくない場所に人質を置いて、攻撃できないようにするんだよ」

「そういう使い方もあるのね」


「ああ」

「でもそれも無いと思うわよ」

すぐさまレイラはそれを否定した。

「なぜだ?」

安心する反面、その理由が知りたくなる。

「こっちからは帝国領には攻撃できないもの」

攻撃されているなら、やり返してもいい気がする。


「何帝国が攻撃してくるなら反撃すればいいじゃないか」

「島の外では魔法は使えないって言ったでしょ」

「そうだったな」

つまり帝国領では魔法は使えないから、魔女が帝国領に攻め込むことはできない。だとしたら帝国領に人質を置いて盾にするなんて事はする必要が無い。

「こうなると、やっぱりわざわざ捕まえる理由が分からないわね」


「だが奴らが実際に俺たちを生け捕りにしようとしたのは事実だ。気を付けるに越したことは無い」

「そうね、それに魔女の弟子を探す方法も考えないとね」

「何かいい手があるか?」

「魔法を使ってこっちも魔女の弟子であることを示せば、協力してくれるんじゃないかしら」


「それだけで協力してもらえるか?」

「少なくとも今は帝国兵が島に侵入してるんだし、師匠が違うからっていがみ合ってる場合じゃないはず」

「そもそも、北の魔女の弟子は俺たちに協力的なのか?」

「それは会ってみないと分からないわ」

面識がないと言っていたし、どちらに転ぶかは会うまで分からないか。


「北の魔女が魔女同士は競争する物って考え方なら、その弟子も他の魔女の弟子と協力するとは思えないが」

「確かにそうね」

レイラとしても、相手が敵対的な態度をとる事も覚悟しているようだ。

「なら手あたり次第接触するっていうのも危険か?」

「だからといってこのまま西の魔女と戦っても勝てる見込みは無いし、まずは接触してみるしかないわよ」

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