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法具補修師は王子殿下に求婚される  作者: 葵月さとい
第五章「法具補修師たちは未来のために戦う」
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⑪大好き

短いですが、宜しくお願いします!

「ーーイーフ! きてくれたんだ!」


 ラオフィーネは喜びの声を上げた。

 これで勝機が見えてきた。

 ガジムに向かってイーフが吐き出すのは、原始の炎。それは何よりも強い浄化の力だ。

 まだ大陸すら無かった古代、空を住処(すみか)にしていた天の竜鳥(ドラゴン)たちは、渾沌とした大気に浮遊する(ちり)を浄化する役割を担っていた。塵を炎で燃やしつくす。


 ーー"イーフがいれば 我は闇を喰らうことができる"


 イーフの炎が、ガジムから放たれた鎖のひとつを焼いていく。

 するとダインは大きく口を開け、炎を纏いながら焼け落ちてくる鎖を丸飲みにした。


(お腹、あつくないのかな?)


 ふと心配になるが、どうやら大丈夫そうだ。

 ダイン達、地の竜鳥(ドラゴン)は、塊のない大地を住処に、天の竜鳥が燃やした塵を喰らってきた種族だ。腹のなかにあらゆるモノを取り込み自身の力の一部とする。そうやって自身の力を最大限に満たしたあと、肉体を捨てたといわれている。死骸はやがて液状に近かった大地の栄養素となり、今の大陸の土台になっている。

 天と地以外にも竜鳥はいた。

 しかし、その中でもイーフとダインは浄化を得意としている種族だ。


(イーフとダインがいてくれて良かった!)


 この精霊の力があれば、闇に対抗し、ガジムを正気に戻すことができるのではないか。


(あれ、でもイーフきたっていうことは……)


 遅れて気付くラオフィーネ。

 イーフの宿る法具はハーキマーに託していた。……ということは、近くに()()ということだ。


「ラオフィーネ!」

「!!」


 声のした方へ、ラオフィーネは振り向く。

 横付けされた船から勢いよく飛び乗ってくる青年の姿に、胸が高鳴る。

 夜でも星あかりを受けて輝く金色の髪。紫水晶のような色の瞳は暗く沈んでいるが、真っ直ぐにラオフィーネだけを見据えている。


「サザナミ!」


(来て、くれたんだ……)


 喜びが溢れてくる。

 嬉しい。助けにきてくれた。


「ラオフィーネ!」

「サザナミ!」


 お互いの名を呼び、駆け寄って抱きしめあう。

 離れていた時間は長くはないのに、こうやって触れ合うのは久しぶりな気がした。

 苦しいほどに強く()(いだ)かれ、全身でサザナミの想いを感じる。


(わたし……)


 言葉が自然と溢れてくる。


「わたし、サザナミのことが好き」

「!」

「ちゃんと伝えてなかったから……。わたしも、サザナミのことが好きだよ」


 離れてしまった時にラオフィーネは後悔していた。

 いつ永遠の別れが訪れるか分からない。だから自分の気持ちを伝えておけば良かったと……。

 突然の告白に、サザナミは驚いて身体を少し離す。大きく見開かれた瞳に星あかりが差し込み、(またた)きとともに揺れる。


「嬉しい……ラオフィーネ。俺も好きだ。ずっと好きだったんだ。他にも言いたいことが山のようにある。……指輪のことも」

「指輪のことは……その、ごめんなさい……」


 サザナミが贈ってくれた指輪を、ラオフィーネは補修してしまった。


「怒ってる?」

「正直、ショックだった。否定されたようで……いや、違うな。ラオフィーネにとって俺は頼りない男だったにかと、自分に対して怒りがわいた……」

「そ、そうなの?」

「でも、もういいんだ。ラオフィーネの気持ちが嬉しかったし、何がなんでも守るって決めているからな」


 微笑んだサザナミに、ふたたび優しく抱きしめられる。


(わたし、本当に……この人を好きになれて幸せ)


 心があたたかくなる。

 サザナミがそばにいるだけで、どんな時でも強い自分でいられる気がする。

 たとえ、これからどんな苦しいことが起こっても、今の幸せがラオフィーネ支えてくれる。


(大好きだよ!)


 ラオフィーネは、思いきり背伸びをして、サザナミの頬に軽く唇を押し当てた。

 自分からする初めての口付けだ。

 驚いてピタリと身体を硬直させたサザナミが「それは反則だろ」と顔を赤くしている。

 ごほんと背後から咳払いが聞こえた。


「サザナミくん、いつの間に娘と、そういう関係に?」

「シ、シオン殿!?」


 まさかラオフィーネの父がいると思っていなかったサザナミが慌てる。


「父さまに会えたの。それにね、母さまにも」

「そうだったのか」

「サザナミくん、()()二人でじっくりと話をしようか」

「……はい」


 苦笑いで返すサザナミのそばから、もう一人、見知った声がする。


「ラオフィーネさん、ご無事で良かったです」

「ハーキマーさん!」

「預かっていた法具、もう少しお借りしてもいいですか?」

「うん。それはいいけど……?」

「ありがとうございます!」


 にっこりと笑ったハーキマーだったが、次の瞬間、目つきが変わる。

 まるで飢えた獣だ。ようやく見つけた獲物を前に、ぎらついた目をしている。


「殿下……手出し無用でお願いします。()()は、オレが仕留めるんで」

「ああ。だが、ひとりで大丈夫か?」

「イーフさんの力を宿した法具がありますから」


 そう言って、ハーキマーは浮遊するガジムを見上げる。

 まるで鎧のようにガジムの全身には鎖が巻き付いている。隙間からわずかに(のぞ)く瞳はひどく(うつ)ろに見える。


「あーあ、完全にイッちゃってますね。このままじゃ、戦ってもつまんないなぁ」


 低い声音で呟いたハーキマーが両手に剣を構える。

 右手には自身の騎士の剣を。

 左手には紋様が施された法具の短剣を。


「まずは正気に戻ってもらわないと……」

 


お読み頂きまして有難うございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ハーキマーキターーーー!! わっしょいわっしょい!! バトルーバトルー!! わっしょいわっしょい!! 次回も楽しみーー!!
[一言] ハーキマーの活躍が見たい反面、ガジムにも情が……
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