表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
五大大国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/69

第六十一話 勇者の理由

「何故だ? 何故当たらぬ?」

 

 王都を囲う門の上で、カチャトーラ王国国王ティキン・カチャトーラは目を丸くしていた。

 体から生えた十本の手の内、五本には神弓ミイトが握られ、残り五本でひたすら弓を引いている。

 だが、次から次へと放たれる光速の矢は、獲物を仕留める前にことごとく撃ち落されている。

 

 ただの弓を持つ、ジビエによって。

 

 ジビエは背中に背負った籠から矢を八本まとめて取り出し、同時に放つ。

 同時に放たれた矢は、ジビエに向かってくる光の矢と正面衝突し、双方の威力を殺す。

 光の矢は、本来形を持たない矢。

 威力が殺されるや否や、その場で消滅する。

 しかし、ジビエの放つ矢は、ただの矢。

 折れることはあれど、消滅することはない。

 威力が殺されたただの矢は、光の矢の勢いに押されて元来た方向へと戻される。

 そして、戻された先にあるジビエの背負った籠へ、すっぽりと入っていた。

 

 つまり、ジビエの残弾は一向に減っていかない。

 事実上の、無限の矢である。

 

「どうして! こんな! こっちには、無限の矢があるのに!?」

 

 弓を引くカチャトーラ王国第一王女ヘン・カチャトーラが嘆く。

 

「所詮は物だ! 光の矢を撃ち続ければ、いつかは壊れる!」

 

 弓を引くカチャトーラ王国第二王子ティック・カチャトーラが強がる。

 

 勇者と言えども、神具がなければ何もできない。

 それが、ティキンの読みだった。

 

「糞! 何故! 何故だ!」

 

「何故って? 決まっている! 俺が、勇者だからだ!」

 

「……違う! 貴様が、貴様らが勇者であるはずがない!」

 

「何言ってんだ? 神弓を授かった俺を勇者と認めたのは、陛下、他でもないあんただろ?」

 

「違う! 違う!!」

 

 ジビエは、同時に籠から取り出す矢の本数を倍にした。

 指と指の間に四本ずつ。

 合計十六本。

 ジビエにとっても同時に十六本を放つのは人生で初めてのことだが、必ず打てると確信があった。

 

「問題は、弓の方が耐えられるかだな」

 

 十六本の重量で弓を引き、放つ。

 

 半分が、ジビエに向かってくる光の矢を落とす。

 残り半分が、ティキン、ヘン、ティックの喉元を貫いた。

 

「ああああああ!?」

 

 ティキンの喉には風穴があき、苦しそうな呼吸が漏れる。

 が、すぐに喉の奥から肉がせりあがり、空いた穴を埋めた。

 

「ひゅう。マジで化け物かよ」

 

 ジビエは、頬に汗をたらしながら呟く。

 王族として世界に君臨していた者たちが人間とは別の生き物だった。

 その事実は、世界を大きく揺るがす。

 

 だが、秘密にするには大きすぎる事実。

 公開して大騒ぎになることは確実。

 

「ま、そこらへんは、貴族様たちが上手くやってくれるだろ」

 

 ジビエは、そんな問題を先送りにし、目の前の化け物を倒すことに集中した。

 勇者として。

 正義として。

 

 ジビエはさらに倍、三十二本の矢を構える。

 

「なあ、置き土産に教えてくれよ。なんで、あんたらが神具を持ってんだ?」

 

 三十二本の弓が放たれる。

 弓を見たヘンとティックは、ティキンへと手を伸ばす。

 ティキンに触れた二人の手は、ティキンの体に沈み込んでいき、最後にはヘンとティックの全身が飲み込まれた。

 

「……あ?」

 

「冥途の土産に教えてやろう。神弓ミイトを創ったのが、我々だからだ」

 

 二人を飲み込んだティキンの身体は、人間の形を失った。

 全身から血が噴き出し、血は凝固して泥色になった。

 泥色の血は零れた水のように大気中へ広がり、ティキンの身体をすっぽりと囲い込んだ。

 

 ジビエの目の前には、巨大な卵の形をした何か。

 泥色の何か。

 三十二本の矢は、卵の殻にぶつかり、ジビエの籠の中へとはじき返った。

 

 ピシピシと、卵にひびが入る。

 グルルグルルと、卵の中から産声が響く。

 

「こういうのは、生まれる前に殺すのが鉄則だろ!」

 

 ジビエは籠の矢を一本掴み、先程よりも強く弓を引いた。

 一矢入魂。

 矢の数を減らした分、一撃の威力を上げる。

 

 不幸だったのは、そのタイミングで弓の弦が切れたこと。

 

「あ!?」

 

 複数本を同時に放つ負荷により、弓の限界が来た。

 

「ちっ」

 

「神のしもべにすら成れぬ凡夫は、運まで悪い」

 

「勇者に向かって、誰が凡夫だ!?」

 

 卵が割れる。

 中からは泥水が集まって人型になった何かが現れた。

 体表はどろどろと流れて全身を循環しており、目の部分にはむき出しの眼球がぷかぷかと浮いている。

 口がガバッと大きく開き、ゲタゲタと大声で笑う。

 

 異形。

 しかし、ジビエが最も驚いたのは、その不気味な姿形ではない。

 

「おい。どういうことだ。何でお前から、神弓の気配がする?」

 

 異形は、神弓ミイトと同一の存在感を以て君臨していた。

 人類に仇名す存在が、人類を守る神具と重なる。

 ジビエにとって、理解できない事象が起こっていた。

 

「グハハハハハ! 当然だ! 神具は、我らが創り出したのだからな!」

 

 答えは、異形の口から放たれた。

 

「なん……だと……」

 

「神具に選ばれた人間が勇者だと? 愚かな。貴様はただの人間! 我らが平和な世界を作るための、操り人形にすぎんのだ!!」

 

 異形が開いた口に、魔力が貯まる。

 魔力は、神弓ミイトの能力――光の矢を作り出す。

 ジビエの持っていた光の矢の、数十倍の大きさを誇る、巨大な矢。

 

「もう、用済みだ」

 

 巨大な矢が、ジビエの腹部を貫いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ