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天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
五大大国編

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第五十九話 国王

「ねえ? 私たちは、どこへ向かっているのですか?」

 

 王城へ入ったスミヤキとエルは、兵の後をついて城内を歩いていた。

 しかし、向かう先は玉座の間ではなく、王城の地下。

 

「陛下より、二人を地下闘技場に案内するようにとのご命令がありまして」

 

 兵もまた理由を聞いていないらしく、困ったような声で返事をした。

 

 王城の地下闘技場に用事がある人間など、戦闘の訓練を行う兵や魔法使いくらいだ。

 決して、客人を呼ぶような場所ではない。

 スミヤキとエルは不信感を抱きつつも、兵を責めたところで状況が変わるわけでもなく、また兵の言葉を無視して動けば城内での立場が悪くなるため、何も言わず兵のあとをついて歩く。

 

「こういうことは、よくあるのか?」

 

「いえ、私も初めてのことです」

 

 ボイスカイオーラ王国のしきたりでもあるのかと確認したスミヤキに対し、エルは首を左右に振って答えた。

 

 太陽の光は遮られ、壁は巨大な大木と固められた土。

 廊下には根が張り、自分たちが地下深くへいることを示してくれる。

 

「こちらです」

 

 木製の古い扉が兵によって開かれ、地下闘技場がスミヤキとエルの前に現れた。

 

 動きやすいように、土で固められた床。

 床を囲う大木の壁。

 そして、丸い闘技場の中心には、ボイスカイオーラ王国国王、マツタケ・ボイスカイオーラが立っていた。

 

 スミヤキとエルを案内していた兵たちは、扉の左右に分かれ、背筋を伸ばして立つ。

 スミヤキとエルは地下闘技場に一歩入ると、その場に跪いた。

 

「ただいま戻りました、陛下」

 

「うむ」

 

「お久しぶりで御座います、ボイスカイオーラ様。突然の訪問にもかかわらず、快く受け入れてくださったこと、感謝いたします」

 

「うむ」

 

 マツタケは、キノコのような髪をふらふらと揺らしながら、短い言葉で受け答える。

 

「楽にせよ」

 

 マツタケの言葉で、スミヤキとエルが立ち上がる。

 マツタケの表情は、エルの生に喜ぶわけでも、スミヤキの訪問を不思議がるでもなかった。

 ただ、二人のどちらかの言葉を待っていた。

 

「して、用件は?」

 

 スミヤキとエルは視線を交わし、エルが口を開く。

 

「はい。先日のカルボナーラ王国への滅国魔法使用についてです」

 

「ふむ」

 

 マツタケの表情は変わらない。

 目も眉も動かすことなく、エルの次の言葉を促す。

 

「風の噂で、私たちが敗北し、カルボナーラ王国の民は全滅。カルボナーラ王国を滅ぼした何者かを倒すため、やむを得ずに放った。このように聞いていますが、事実ですか?」

 

「うむ」

 

「それにしては、私が戻って来たとき、驚いたりしていないようですが」

 

「神のご加護が、あったのだろう」

 

「……そうですね。私がいま生きているのは、まさに神のご加護なのかもしれません」

 

「うむ」

 

 エルは、あの日の唯の姿を思い出す。

 滅国魔法に向かって跳びあがり、王都の一部を拳で守った唯の姿を。

 同時に、その直前も。

 即ち、滅国魔法が落とされる直前。

 

 カルボナーラ王国の第一王子フリークを除く王族が、唯と戦っていた事実を。

 

「陛下、もう一つお伺いします」

 

「うむ」

 

「陛下に、カルボナーラ王国の滅亡と滅国魔法の発動を進言したのは、誰ですか?」

 

「……」

 

 マツタケは、扉の側に立つ兵を見る。

 扉の側に立つ兵は、マツタケが滅国魔法の発動を承認した際、玉座の間に建っていた人物。

 つまり、誰かを知っているのだ。

 

 この場において、マツタケは『誰』を偽ることができなくなった。

 

「カルボナーラ王国第一王子、フリーク殿だ」

 

 マツタケの言葉で発生する不整合。

 ハーもまた、プッタネスカ王国にてフリークと会っている。

 

 転移でもできない限り、整合性のとれない時間的矛盾と物理的矛盾が、スミヤキとエルの目の前に落ちてきた。

 エルは落ち着くために一度深呼吸をし、マツタケの目をじっと見る。

 

「おかしいです。陛下のおっしゃる時、フリーク様はプッタネスカ王国に訪問されていたことを確認しております」

 

「…………」

 

 マツタケの表情は変わらない。

 しかし、兵の表情が驚きで染まった。

 同時刻、別々の場所にフリークが存在したことになるのだから。

 

「陛下」

 

「…………」

 

「何か、ご存じでしょうか?」

 

「…………」

 

「それに、プッタネスカ王国にいたフリーク様は、神剣ブラペを持っていました。それについても、何か」

 

 エルは、期待していた。

 マツタケがただ一言、知らぬというのを。

 マツタケはただ、フリークの言葉を聞いて、国王として判断しただけだと。

 

 カルボナーラ王国の王族が異形なのも無関係。

 フリークが複数いることも無関係。

 神剣が複数存在することも無関係。

 隣に立つスミヤキへの申し訳なさを感じつつも、カルボナーラ王国のみが化け物の支配下にあったという仮定を、信じたかった。

 

「もう、いいじゃないですか」

 

 地下格闘技の奥から、声が響く。

 スミヤキが、よく聞いた声。

 

「フリーク様!?」

 

「久しぶりだな、スミヤキ」

 

 フリークの手には、黄金色に輝く神剣ブラペが握られていた。

 

 スミヤキは、自然な流れで剣を抜いた。

 

 壁の大木の根が動き、地下闘技場の扉を閉める。

 そして、扉に根が張り付いて、開閉を封じる。

 驚いた兵たちが扉を動かそうとするも、ピクリとも動かない。

 

 マツタケは目を細め、エルを見る。

 

「そうだな」

 

 そして、その身を異形へと変えた。

 マツタケの全身の皮膚が木のように固くなり、体が大樹のように大きくなっていく。

 

「全ては、争いのない平和な世界のために」

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