表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
五大大国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/69

第五十八話 故郷

 フーの転移魔法によって、五人は各国の王都へと飛んだ。

 

 フーは、故郷のプッタネスカ王国へ。

 イカリは、故郷のアラビアータ帝国へ。

 エルは、故郷のボイスカイオーラ王国へ。

 ジビエは、故郷のカチャトーラ王国へ。

 

 スミヤキだけは既に故郷がないため、戦闘要因として戦闘能力のないエルについていき、ボイスカイオーラ王国へ。

 

 突然王都に現れた勇者たちに、国民たちは目を丸くし、すぐに歓迎の声を上げた。

 

「勇者様だ!」

 

「勇者様がお戻りになったぞ!」

 

 勇者の人気は、いまだに根強い。

 特に王都では、勇者たちの像も作られ、国の中でも熱気が冷めていない場所の一つだ。

 

 

 

 ボイスカイオーラ王国。

 王都。

 

 町中にいくつもの大木が生える神秘的な場所。

 大木の下には教会が作られ、教会の周りには民家が作られている。

 鐘の代わりに小鳥たちのさえずりが響き渡り、小鳥たちは木から屋根へと飛び移っている。

 

「いい街だな」

 

「うん、本当に」

 

 スミヤキとエルは国民たちの歓声に手を振り返しながら、王城へと歩を進める。

 同時に、国民たちとも話し、勇者パーティの死亡というニュースが国民へ降りていないこともわかった。

 大半の国民は、生まれ育った都市で生き、一歩も出ることなく死ぬことも珍しくはない。

 定期的に国家間を行き来する商人や吟遊詩人でもない限り、隣国の情報を自力で得ることは難しい。

 王族からの発表こそが、国民の情報源の全てだ。

 

 スミヤキとエルの帰還はすぐに王城へと届いたようで、王城から馬車を引き連れた兵たちがやって来た。

 

「エル様、お帰りなさいませ。そしてスミヤキ様も、よくいらっしゃいました。……誠に失礼なのですが、事前に来訪の予定などを伺っていないのですが」

 

「失礼した。火急の用件ゆえ、事前のご連絡を失念していたこと、謝罪致します」

 

「なるほど、承知いたしました。それで、ご用件はどのような?」

 

「ボイスカイオーラ国王と、カルボナーラ王国の件で少しお話がありまして」

 

 兵たちの表情が固まる。

 滅国魔法によるカルボナーラ王国の滅亡は、最小限の人数のみが知るところ。

 王族、貴族、実際に発動した魔法使いたち、そして王族貴族を護衛する一部の兵。

 勇者を迎えに行くほどの大役を任されたこの兵たちもまた、滅国魔法を知る者たちだ。

 

 表面上は平静を装おうとしているが、死んだと言われていた勇者を目の前に、動揺を隠しきれてはいなかった。

 未だ国民へは公開されていない情報を守るために、勇者の死という情報など存在しないよう、兵たちは健気に振舞う。

 

「承知いたしました。陛下にお伝えします。おい」

 

「はっ!」

 

 一人の兵が、早馬に乗って一足早く王城へと向かう。

 

「どうぞ。王城までお送りします」

 

「ありがとう」

 

 スミヤキとエルは、兵に促されるまま馬車に乗る。

 勇者と言う有名人に堂々と町中を歩かれれば、町中の混乱は必須。

 馬車と言う触れられない空間に隔離するのは、当然の判断。

 

 馬車は方向を変えて、王城へ向かう道へと向き直る。

 

「勇者様ー!」

 

「勇者様ー!」

 

 スミヤキとエルは馬車の窓から、国民に向かって手を振り続ける。

 

 王都の中心をはずれてくると、野次馬のような国民たちの姿は減り、兵は馬車の窓を閉める。

 窓が閉じられた後、スミヤキとエルの表情から笑顔が消え、やや険しい表情で王城のある方向を見ていた。

 

 同じ馬車に乗車している兵は、その変わりように背筋を震わせ、しかし少しでも雰囲気を和らげようと口を開く。

 

「い、いやあ、驚きました。勇者様たちは……その、カルボナーラ王国で蘇った魔王の亡霊と戦い……その……殉職されたと聞いていましたので」

 

 勇者の末路。

 その話題に興味を持ったスミヤキが、険しさを解いた表情で振り向く。

 

「そうですか。私たちは、死んだことになっているのですね」

 

「も、もちろん、我々は勇者様が死んだなど信じておりませんでした。敵に情報を与えぬよう、意図的に虚偽の情報を広める策であると」

 

 兵は時折震えながら、手を自身の剣から離さなかった。

 勇者の生存が真実であれば、兵に不安はない。

 勇者の死亡が真実であれば、兵にとって目の前の二人は勇者の形をした何か別物、つまり自身の命を脅かす可能性がある何かだ。

 故に、警戒を解くことができなかった。

 

 とはいえ、スミヤキは兵の態度程度で怒るほど、狭量ではない。

 むしろ、警戒を解かない姿勢を評価したほどだ。

 あらゆる可能性を考え、対応するのは、戦士の正しい姿だ。

 

「気にしていませんよ」

 

 少しだけ微笑み、スミヤキは言った。

 スミヤキの言葉に、兵は明らかに安堵した。

 

 軽くなった心は、兵の口を気軽に動かす。

 

「そういえば、ただいまフリーク・カルボナーラ様もお越しになっております。スミヤキ様が生きていると知れば、フリーク様もさぞお喜びに」

 

 気軽な言葉は、スミヤキの脳を突き刺した。

 

「……フリーク様が?」

 

「ひっ!?」

 

 スミヤキの視線が、狂気のように険しく、兵に刺さる。

 

 スミヤキの中で、フリークはとっくに死んでいるのだ。

 ハーから、フリークが異形に変わり、唯が討ち取ったと聞いているのだから。

 

「わかった」

 

 スミヤキは、小さく感謝を述べた。

 

 ハーが偽っているのか。

 死んだフリークが偽物か。

 生きているフリークが偽物か。

 

 スミヤキは、手元に神剣がない事実を睨みつけながら、自身の持つ剣の柄を撫でた。

 

 王城が近づいてくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ