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天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
五大大国編

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第五十七話 道連れ

 唯が決めた目的地は、プッタネスカ王国であった。

 深い理由はなく、ハーからフリーク・カルボナーラが来訪したと聞いたからだ。

 

 唯が最初に滅ぼす場所をカルボナーラ王国に決めた理由も、最初の転移先がカルボナーラ王国であり、手近だったというだけの理由だ。

 そして今、カルボナーラ王国は形を失い、王族たちは唯が始末した。

 ならば次の目的地がいる。

 つまり、プッタネスカ王国を選んだのは、ハーの言葉からの連想ゲームだ。

 

 加え、もう一つ理由を挙げるとするならば、唯はカルボナーラ王国の王族たちがどこかで生きているのではないかと言う予想をしていた。

 違和感は一つ。

 五大大国の同意を以てなされるはずの滅国魔法が、何故フリーク・カルボナーラがプッタネスカ王国を訪問してから時間が経たずして撃たれたのか。

 誰が、残りの二国の王族と接触したのか。

 その事実に、人間ではできないだろう所業を感じ、唯はフリークたちの生き残りの可能性を見た。

 痕跡を見つけるのであれば、フリークが確実にいたと思われる場所が一番。

 

「おはよう。いい朝ね」

 

 唯は、綺麗に洗濯されたセーラー服に身を包んで現れた。

 アイロンがかけられないのでところどころ皴がついてはいるが、どうせ戦闘の中でぐちゃぐちゃになる定め。

 唯は気にも留めない。

 

 唯とマイエラは仲良く家から出てきて、ベルヴェと勇者パーティ、そして数人の村人に迎えられる。

 

「おはようございます、唯様」

 

「ん」

 

 ベルヴェと村人たちが頭を下げるのを見届け、唯は勇者パーティの方へ視線を移す。

 

「おはようございます」

 

 勇者パーティのスミヤキ以外が、唯を敬語で迎える。

 スミヤキだけは怒りを目に宿しつつ、仏頂面で唯を見ていた。

 

 唯はスミヤキの表情をくだらなさそうに見た後、視線をフーへと移す。

 

「あたしをプッタネスカ王国に転移させて?」

 

 滅国魔法が発動されてから、八日目。

 回復魔法でさえ取り除き切れなかった膨大な疲労をとるためとはいえ、唯にとっては休み過ぎだ。

 回復中の期間、フーの転移魔法によってカルボナーラ王国の各地に飛び回り、生き残りの捜索や滅国魔法の痕跡を探り情報収集を行ってはいたが、遠回りだ。

 唯が好むのは、最短最速。

 すぐにでも他の王国へ攻め込みたかった。

 

 二度目の滅国魔法が発動された時、唯がどこまで防ぎきれるか予想できなかったため、放たれる前にと考えていたことも否めない。

 

 しばらく戦いに身を投じることができていない飢餓感で、唯は全身を小刻みに震わせ、催促する瞳をフーに向ける。

 

 フーは勇者パーティの面々の顔を見回した後、杖を掲げる。

 神具ではない、ただの杖を。

 

「唯様。私の持つ神杖ケッパーは、滅国魔法とともに消滅しました」

 

「それが何?」

 

「神杖なしでは、私の転移魔法の力が落ちるということです」

 

 転移をしろという命令に対し、会話と言う対応。

 唯は人差し指で自身の肘を叩きながら、早々に会話を終わらせようとする。

 

「だから何? あたしはあたしを転移させてって言ってんの。まさか、一人も転移させることができないなんて言わないわよね?」

 

「いえ。国境を超えるほどの長距離を転移させる場合、今の私では、同時に五人が限界です」

 

「? 十分じゃない」

 

 唯は、フーから発せられた言葉が、唯の要望を何一つ阻害する要因にはならないと考えつつ、同時にあえて五人という数字を出したフーの真意を探る。

 上限を、そのまま口にしただけの可能性もある。

 が、この場において、五人という数字は一つの数と一致していた。

 即ち、勇者パーティの数である。

 

 ――転移可能な人数は、私たち五人で精一杯です。

 

 唯には、そんなフーの心の声が聞こえた。

 

「ちょ!?」

 

 唯が手を伸ばす。

 

「私たちの問題は、私たちで決着をつけます」

 

 フーの転移魔法が発動する。

 勇者パーティの五人を魔法が包み込み、五人の姿をかき消した。

 

 唯の伸ばした手は空振り、何も掴むことができなかった。

 敗北したとはいえ、勇者パーティ。

 最も世界が傷つかない方法を考えた結果、この一回、唯を出し抜くことを考えていた。

 八日間の共同生活で、唯が勇者パーティから離反したとしても、ブオン村の村人たちへ報復しないという感情も読み取った上で。

 

 手を伸ばしたまま、唖然とした表情で固まる唯。

 そんな唯を、恐る恐る見る村人たち。

 最も顔を青くしているのは、最も付き合いの薄いハーたちだ。

 

 唯は伸ばした腕をひっこめて、手を開いたり閉じたりし、困惑を示す。

 

 そして、目の前の大地を思いきり蹴飛ばした。

 

「あ、あいつら! ふざけんな!!」

 

 叫び声が、空気を揺らす。

 村人たちが腰を抜かして、地べたにしりもちをつく。

 

 唯の首がグルンと回って、ハーに視線を向ける。

 

「ひっ!?」

 

「あんた、転移魔法仕えないの?」

 

「む、無理です……。短距離であればできますが、フーみたいに、国境を超えるほどは……」

 

「ちっ……くしょお!!!」

 

 唯の頭の中に、一つの言葉がぐるぐると巡る。

 最強がとられる。

 最強がとられる。

 最強がとられる。

 

 もしも勇者パーティが他の四つの王国を滅ぼした場合、その後に唯が勇者パーティ全員を殺そうと、世界最強の称号は勇者パーティに落ちてしまう可能性は少なくない。

 唯が、最後に美味しいとこどりをした盗人と民意が判断しても仕方ない。

 

 唯にとって、それが最も恐ろしかった。

 

「くそっ!」

 

「唯様、どこへ!?」

 

 ベルヴェの声も聴かず、唯は走り出した。

 

 自分の感性を信じ、プッタネスカ王国があるだろう方角へ。

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