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天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
五大大国編

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第四十九話 滅国魔法

 ブオン村の村人たちが、空を見上げる。

 青い空が白い光で隠されれば、当然の行動だろう。

 

「村長! あれはいったい!?」

 

「わからん! だが……!」

 

 白い光に籠った魔力の大きさに、ベルヴェは目の前が絶望で染まった。

 如何なる魔法であれ、世界が変わるのは必然の力。

 もしも何かを破壊する魔法であった場合、絶対的不可避の死以外の何物でもない。

 

 同時に、ベルヴェの頭の中に浮かんだのは唯の姿だ。

 唯の発した世界征服の意味が『世界全体を滅ぼすこと』であったならば、白い光の発生源は唯である可能性が高い。

 しかし、真偽を確認する時間など、ベルヴェにはもうない。

 

「全員、急いで倉庫へ避難しろ! 地下室に入れる限り入れ!」

 

 速やかに指示を飛ばした後、ベルヴェは力なく空を見上げた。

 

「……こんなに呆気なく、終わるのか」

 

 ベルヴェの抵抗する気力はそぎ落とされていた。

 最後の言葉は、少しでも村人たちが希望を持った状態で死ねるようにする、詭弁。

 エルヴェの経験が、死を感じとっていた。

 ブオン村の村人の中で最も戦場に近かったからこそ、最も最初に諦めてしまった。

 ベルヴェはただ、目の前で起こることに身をゆだねた。

 

 村人たちは、あわただしく走り回る。

 倉庫へと逃げ込む者、防具を着こむ者、各々が最善と思われる行動を選択する。

 

 ところで、最善の行動をとれる人間とは、どういった人間だろうか。

 最も経験豊富で、最も危機を乗り越えてきた人間だろうか。

 であれば、ベルヴェはあくまで、村人の中で一番最善の行動をとれる人間でしかない。

 

 現在、ブオン村にいる人間の中では、二番目だ。

 

「父様!」

 

「村長、すみません! 緊急事態っぽいので、俺達の独断で牢から出しました!」

 

「マイエラ? グリゾリ?」

 

 佇むベルヴェに向かって、マイエラとグリゾリが焦った表情で走って来る。

 そして、マイエラとグリゾリの腕には、一人の女が抱えられていた。

 

 四肢を失ったフーを。

 

「お前たち、何を」

 

「ごめんない父様! でも、他に方法が」

 

「喧嘩は後にして! 早く! 私を村の中心へ連れて行って!」

 

 鬼気迫る表情で叫ぶフーを前に、ベルヴェは口ごもった。

 

 唯からの命令は、フーを牢から出さないことだ。

 マイエラとグリゾリの行動は、明確な命令違反。

 唯が知れば、二人を罰し、場合によってはブオン村全体も罰せられる可能性がある。

 だが目の前には、唯からの罰より早く訪れるだろう絶望が迫っている。

 

 故に、ベルヴェは何も言わなかった。

 一瞬でも諦めた自分が、諦めていないマイエラとグリゾリの行動に口を挟む資格などないと判断した。

 

 ベルヴェの横を、マイエラとグリゾリが走って過ぎる。

 村の中心に到着すると、マイエラとグリゾリはフーを下ろした。

 

「杖! なんでもいいから!」

 

「倉庫の中に、多分」

 

「急いで持って来て!」

 

 グリゾリが倉庫に走り、高級そうな杖を数本持って戻って来る。

 どれもこれも唯の戦利品であり、ブオン村では決して手に入らない高級品。

 しかし、フーの持つ神杖ケッパーには格段に劣る程度。

 

「神杖があれば……。いえ、泣き言いってる暇はない!」

 

 フーは存在しない手の代わりに、一本の杖を噛みついて持ち上げる。

 そして、自身の魔力を杖に注ぎ込む。

 

 フーにとって幸運だったことは、唯が奴隷の首輪に、魔法の発動を禁止するルールを適用していないことだ。

 

「結界魔法!」

 

 フーが魔法を発動する。

 村全体を覆うドームのように、透明な壁が作られていく。

 

 結界は、落ちてくる白い光を正面から受け止めた。

 

 湾曲する結界の面は波打ち、ぐにゃぐにゃと歪み、いたる所にひびが入り始める。

 

「ぐぎ……ぎいいいいい……!」

 

 フーの杖を噛む力が強くなる。

 強く強く食いしばり、フーの歯が欠け、口から血が流れ出て来た。

 

「勇者、嘗めんなああああああああ!!」

 

 絶望の瞬間、フーの叫び声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 同国。

 カルボナーラ王国王都。

 

「ねえ、あんた。あれ、何か知ってる?」

 

「何……あの……膨大な魔力……」

 

 唯は、会話にならないエルから視線を外し、ロマーネたちが帰っていっただろう方角へ視線を向ける。

 当然、唯が見ている方向にも平等に光が落ちてきている。

 

 唯はつかつかとエルの元へ歩き、その頬を引っぱたいた。

 

「痛っ!?」

 

「ボーっとしないで。で、あれ何か知ってる?」

 

「わ、わかりません」

 

「あ、そう。あれ、防げる?」

 

「……防ぎ、ます!」

 

 険しい表情をするエルの頬を、唯が再び引っぱたく。

 

「意気込みは聞いてないの。可能性を聞いたの。この国全部、防ぐことはできる?」

 

「それは、無理です」

 

「どこまでならできるの?」

 

「私たち二人だけなら、確実に。王都全体は三割くらい。それより外は……やってみないとわかりません」

 

「あっそ。じゃあ、あんたはあんたでよろしく。防げる限り防いで」

 

「え?」

 

 ぽかんとした表情を浮かべるエルを放置し、唯は準備運動を行う。

 屈伸で膝を曲げ伸ばし、両腕で十字を作って腕を伸ばす。

 

「よっし」

 

 そして、全力で上空へと跳んだ。

 

「ええええええ!?」

 

 エルの驚いた声も、唯にはとっくに届かない。

 白い光の目前に、唯の姿が現れる。

 唯は全身に力を入れ、落ちてくる月を殴り返す自身をイメージした。

 

「どっせーい!!」

 

 そして、思いっきり白い光を殴りつけた。

 

 

 

 ゴキン。

 

 ボキン。

 

 バキン。

 

 

 

 唯の全身の骨が砕ける音がした。

 

 

 

 ミシリ。

 

 ベキリ。

 

 バキリ。

 

 

 

 光の断面がひび割れる音がした。

 

 しかし、落ちるのを止めるには至らない。

 

「んぎぎぎぎ!」

 

 唯は白い光に押し返されながら落下し、落下途中で白い光に全身が飲み込まれた。

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