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天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
宣戦布告編

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第十九話 第一騎士団

 馬が走る。

 馬車が走る。

 パンチェッタ率いる第一騎士団、第二騎士団、および第三騎士団。

 そして、ストリーキー率いる第一魔道師団、第二魔道師団、第三魔道師団。

 町一つを焦土に化すと言われてもおかしくない戦力が、ブッチーノ町へと向かっていた。

 

 先頭を走る馬車には、黄金製のカルボナーラ王国の紋が刻まれており、馬車の中にはパンチェッタとストリーキーが座っていた。

 

「町に到着後、私が一度だけ降服勧告をする。それに対し、無反応、あるいは拒絶の反応を示した場合、武力によって町を制圧する」

 

「ええ。それで構いませんよ」

 

「その際は、ストリーキー殿と部下たちの魔法によって、門を破壊してもらいたい」

 

「おやおや。私たちに手柄を譲る、と?」

 

「そちらのほうが、効率がいいというだけの話だ」

 

「さすが、騎士団様は余裕ですねえ」

 

 魔道師団を活躍させたいストリーキーと、魔道師団の力を借りたいパンチェッタ。

 くしくも二人の思惑は一致しており、開幕時の動きという結論は早々に出た。

 とはいえ、ストリーキーとしてはパンチェッタの思惑通りに動かされたという不満はぬぐえない。

 ちくりと嫌味を言ってのけるも、パンチェッタはどこ吹く風だ。

 

「ブッチーノ町の門は、石の塀に木の扉でできています。であれば、炎で燃やし尽くしてしまうのが最善かと」

 

「民家に火の粉が飛んで、家事にならないか?」

 

「地図を見る限り、民家は門から離れているので大丈夫でしょう。それに、いっぱしの領主であれば炎の魔法や火の矢で攻め込まれることを考えて、燃え広がらないような工夫くらいしているでしょう」

 

「それもそうだな」

 

 言葉の強さを覗けば、ストリーキーとパンチェッタの話す内容は、実に建設的だ。

 即ち、いかにしてブッチーノ町を奪還するか。

 感情的な中の悪さや各々の利害関係はあれど、王命を遂行するという一点において、二人は非常に合理的だ。

 

「見えてきましたね」

 

 ストリーキーが窓から町の外観を眺める。

 パンチェッタは自身の剣を手に取り、その輝きを眺めて剣の調子を確認する。

 

 戦いの前には、誰もが恐怖と興奮を持ち、心をざわつかせるものだ。

 だが、現状に至って、馬車の周りで兵たちのざわつきが異常なほど増していた。

 

 馬車の扉がコンコンと叩かれる。

 

 パンチェッタは、扉についた小窓を開く。

 小窓の先で、馬車と並走して走る兵は焦ったような表情を向けていた。

 

「何事だ?」

 

「町の周りに、人だかりが!」

 

「何?」

 

 パンチェッタが小窓から顔を出して前方を確認すると、報告の通り、門の周囲に人だかりが見えた。

 不気味なことに、兵ではない。

 防具一つつけていない、武器を持った町人たち。

 

 男も女も。

 子供も大人も。

 喧嘩もしたことがないだろう人々まで。

 そして、町人たちの首には、もれなく首輪がついている。

 

「奴隷の首輪か!?」

 

「形状からすれば、そのようですねえ。あれだけの数を、いったいどうやって手に入れたのか」

 

 自然と、馬車の速度が落ちる。

 御者が、そこへ向かうことへの強い拒否感を示した。

 

「うあああああああああああああああ!!」

 

 逆に、町人たちは馬車に向かって走り出した。

 

 パンチェッタが、即座に現状を把握する。

 奴隷の首輪によって行動を制限された町人たちが、自身の命を人質に自分たちへ突撃させられている、と。

 

 轢かれることをいとわない町人たちの人の壁によって、馬車は囲まれ、兵たちの乗った馬も囲まれる。

 馬車に、剣や桑が何度も振り下ろされる。

 馬に、剣や桑が何度も振り下ろされる。

 

「ヒヒイーン!?」

 

 痛みを前に馬は叫び、前足を大きく上げる。

 

「お、落ち着け!」

 

 暴れる馬に巻き込まれ、町人たちが蹴り飛ばされる。

 手綱を持っていた御者が降り落とされる。

 地面に転がった御者や騎兵の上に落ちるのは、町人たちの振り上げた武器の影。

 

「おい、待て!」

 

 叫び声は、涙と剣にかき消された。

 

「団長! どうすれば!?」

 

「落ち着け! 武器を持っているとはいえ、相手はただの平民だ! 武器を取り上げ、動きを封じろ!」

 

 兵たちは馬を降り、町人たちから武器を取り上げていく。

 狂気的な行いであることに目を瞑れば、所詮は素人の突撃。

 冷静に対応する兵たちの敵ではない。

 

「ぐっ!?」

 

「ぎゃあっ?!」

 

 一人、また一人と、町人たちが地面に叩き伏せられていく。

 苦痛に顔を染める町人たちを見ながら、兵の一人が零す。

 

「俺たちは、民を痛めつけるために鍛えているんじゃないのに……」

 

 泣き言を零そうとも、町人一人の制圧は実に容易だった。

 もしも相手が騎士団と魔法団と同数であれば、時間の問題で制圧が完了したことだろう。

 

「うわああああああ!」

 

 一人の町人を取り押さえる騎士に、首輪をつけた子供が剣を振り下ろす。

 目に、たくさんの涙をためて。

 

「止せ!?」

 

 騎士は片手を伸ばして、子供の腕を咄嗟に掴んだ。

 

「痛いっ!?」

 

 そして、剣を落とした子供を自身の方へと引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。

 

「大丈夫だ! もう、大丈夫だ! おじちゃんが、必ず助けてやるからな」

 

「……本当? もう、戦わなくていいの?」 

 

「ああ」

 

 兵は、努めて優しい瞳で、子供の目を見る。

 子供の目からは絶えず涙があふれ、救いを求めるように騎士へと抱き着いた。

 

「恐かった! 本当に! 嫌だった!」

 

「ああ。もう、もう大丈夫だ」

 

 戦いの中においても、騎士団は騎士団だ。

 救える無実の命があるならば、自然と救ってしまうものだ。

 

 

 

 ところで、奴隷の首輪には、二つの殺し方がある。

 一つは、奴隷の首輪をつけた人間が、首輪の爆破を望むこと。

 もう一つは、奴隷の首輪をつけられた人間が、つけた人間の定めたルールを破ること。

 

 後者の条件を満たした奴隷の首輪は爆発し、兵の腕の中で子供は絶命した。

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