有名なモデル達の有名番組撮影生活~番組側からの言葉~
プロデューサーのいる場所、さきほどとは別の会議室までやってきました。
(この施設、けっこう会議室があるのですね。)
少なくとも3部屋以上ありますね。この会場では、多くの人が会議室を使いたがるのでしょうか?それとも別の理由が・・・?別にどうでもいいですね。
「来た。」
私達が入ると、そこには番組のプロデューサーだけでなく、番組に携わってきた多くの者がいました。
「「「!!!???」」」
みなさん、私の姿を見るなり驚きましたね。どうしてでしょう?
(・・・この治療のせいですね。)
ですが、表立って私の怪我に対して何も言ってきませんね。事前に知らせてくれたおかげでしょう。
(あの方はカメラを回していましたね。その隣の方はカンペを見せていましたね。)
そして・・・あれ?
(あの方達は・・・?)
どうやらこの場には。番組スタッフだけでなく出演者も、潮田さん達モデルもいました。
「みなさん、どうしたのですか?」
私がそう聞くと、全員一斉に立ち始めました。やけにタイミングが合っていますね。全員、事前に何か合図を決めていたのでしょうか?
「あなたに、優ちゃんにお礼が言いたくて、ね。」
「お礼、ですか?」
私、何かしましたっけ?・・・色々しましたね。
「ああ。優ちゃんの咄嗟の行動のおかげで、番組は無事放送を終えることが出来た。優ちゃんのあの行動がなければ、あの番組そのものが放送中止になっていた可能性があったからね。それに、あの番組を楽しみにしている人が数多くいるから。本当に、本当にありがとう。」
「いえ。私も暴走してしまったと反省しています。」
正直、あの行動が最善だったかと問われれば、否定してしまうでしょう。
当初、自分一人で色々決めてしまい、指示を出していました。ですが、他の方に作業を分配する余裕があれば、その分冷静に行動出来ていたかもしれません。
あの警備会社の責任者は、あの場で警察に突き出す必要まであったでしょうか?今考えると、あの場で罪を追求するより、後で罪を追求した方が、私が暴行される、なんて事態にはならなかったでしょう。
(あの行動が最善だったと言えるでしょうか?)
自分でも不安になります。
「ううん!優は凄かったわ。!私が保証するわ!!」
潮田さんの発言に、
「そうよ!」
「あの時の優ちゃん、本当にかっこよかったわ!」
「私、尊敬する人は優ちゃんって公表するわ!」
そんな声が聞こえてきました。別に尊敬する人を変えるほどではないと思いますよ?
「別にそのようなお世辞は言わなくて大丈夫ですよ?これを機にモデルを引退しようと考えていますし。」
私のこの発言に、
「「「!!!???」」」
何故か全員が驚いていました。
「ど、どうして引退しようなんて言い出したの?」
峰田さんは何故か申し訳なさそうに聞いてきます。普通に聞いていいのですが、どうしてそこまで恐縮しているのでしょう?
「元々私は誘われたから始めただけです。ですので私はここにいる誰よりも、モデルをやりたいという意識が希薄なのです。」
「「「・・・。」」」
私の言葉を静かに聞いてくれてありがたいです。
「そんななか、このような事態が発生しました。既に全国放送され、私に対する非難が集中していると思います。例え誤解を解いたとしても、私は全国放送している最中にあのような大噓をついたモデル、として全国に名を轟かせることになるでしょう。」
「つまり、誤解を解いても解かなくても・・・?」
「はい。どちらにしろ、私へのマイナスイメージを払拭する事は不可能、という事です。」
「「「!!!???」」」
もちろん、分かってくれる人は分かってくれると思いますが、全国民がそうだと限りません。私が苦し紛れの言い訳をしている、という認識をするかもしれません。
「ですので、これを機会に引退するのも一つの手だと思いましてね。」
私は淡々と宣言します。
「・・・優ちゃん、あなたが考えて出した結論なら、私は何も言わないわ。そう、私は、ね。」
?何か含みのある言い方ですね。
「でもね優ちゃん、あなたの引退発言に反対している同業者はいるわ。少なくとも1人。その子の話を聞いてあげてもいいんじゃないかしら?」
「1人、ですか?」
峰田さんは横に移動した。
そして、さきほどまでいた峰田さんの後ろから突如、ある者が私の前に現れました。
「ふざけないでよ!」
そしてその者、潮田さんは私の肩に手を置きました。いえ、置いたというよりめり込ませている、と言った方がいいかもしれません。肩が少し痛いです。
「私があの番組の最後に何を言ったのか覚えていないの!?忘れたとは言わせないわよ!!」
・・・え?
(潮田さんはなんのことを言っているのでしょうか?)
あの番組とはおそらく、さきほど潮田さんと私が出演し、私が失格になった番組の事でしょう。
(そういえば最後まで見ていませんね。)
後で見ておこうと思ってはいたのですが、まだ見ることは出来ていないですね。
「・・・詩織、多分だけど優ちゃん、番組を最後まで見ていなんじゃないん?そうでしょう?」
峰田さんが私に聞いてきましたので、そのまま頷きます。
「・・・そう。なら仕方がないわね。そして改めて宣言するわ。」
そう言うなり、私を指さします。
「私、必ずモデルのトップになるわ!それでなった後、改めてあなたとモデルのトップの座をかけて勝負よ!」
「・・・いや、モデルのトップになったら、別に私と勝負しなくていいのでは・・・?」
私が疑問に思ったことを口にすると、
「私は優、あなたと勝負して勝ちたいの!あなたに勝ってこそ、私は本当のモデルのトップになれると思っているわ!」
「そう、ですか・・・、」
私としてはどうして?と思うのですが、潮田さんなりの考えがあるのでしょう。
「だから優、私がモデルのトップになるまで、あなたにはモデルを続けなさい!いい、絶対よ!」
「!!??」
私はこの潮田さんの言葉に、軽はずみな返事は出来ないと思いました。
その理由は、潮田さんの目が真剣で、滅多に見ることがない涙を流していたからです。
「あなたがやめるなんて、絶対、絶対嫌なんだから・・・!」
潮田さんは私の胸に重心を預けます。
「やめるなんて、言わないでよぉ・・・。」
潮田さんからそう懇願されてしまいました。
「・・・私は世間からよくない印象を受けていると思われます。それでも、ですか?」
私の印象は少なからずよくないでしょう。そんな私の近くにいると、潮田さんの印象も悪くなるはずです。
「構わないわよ!それにそんな印象、私達がなんとかするわ!」
そう言い、潮田さんは携帯を取り出します。
「もしかして、ネット上で呟くつもりですか?やめた方がよろしいですよ?」
「なんでよ!?この理不尽な評価、なんとかしたくないの!?」
「そのお気持ちは嬉しいです。ですが、それを潮田さん独りだけで行動するのは少々危険かと。」
「どうし・・・!?」
潮田さんが反論する前に、峰田さんが潮田さんの肩を掴み、首を横に振ります。
「優ちゃんは分かっているの。詩織、あなた独りだけが行動したところで誤解は解けないってこと。あなたの誤解とかひいきとか、そういう話にシフトされて有耶無耶となり、あなたの評価が落ちるんじゃないか。優ちゃんはそういうことを気にしてくれているのね?」
私は峰田さんの言葉に対し、首を縦に振ります。
「それじゃあ何もしないってこと!?そんなのってないじゃない!?見損な・・・!?」
「だから、私達が正式に発表させてもらうよ。」
「!?」
そう言ったのは、今回番組を企画してくださった会社の方でした。
「今回の件、もとを辿ればあのような警備会社を選び、緊急時の対応も上手く出来なかった私達番組側の責任だ。だから私達が正式に、君達に対して謝罪するつもりだ。」
そう言い、プロデューサー達は頭を下げます。
「今回の件、未然に防ぐことが出来ず、君達モデルに辛い思いをさせてしまい、本当に申し訳ない。特に優ちゃんには重ね重ね、本当に申し訳ない。この場を借りて謝罪させてほしい。」
そう言い、プロデューサー達は一斉に頭を下げました。
「頭をお上げください。」
私はプロデューサーさん達に進言する。
「私に謝罪は不要です。今回の件、私が手を出さなくてもそちら側で対処出来た可能性は十分あり得ました。それなのに、私は自分の意志で考え、行動し、あの不審者と対峙しました。その結果で受けた非難は全て、自身の身から出た錆です。ですので気にしないでください。」
「だが・・・!」
「本当に気にしないでください。それでもしたいというのなら、私は止めません。あなた方の意志を、気持ちを私は尊重します。」
「・・・なら、思う存分させてもらうよ。優ちゃんの名誉を守る為に。」
どうやらプロデューサーさん達は私の言葉を聞いても、正式に謝罪をするつもりのようです。私の言葉を聞いてなお謝罪するつもりなら、私は止めません。
「分かりました。それではお手間をとらせてもらいますが、よろしくお願いします。」
私はプロデューサーさんに頭を下げます。
「絶対、優ちゃんに迷惑をかけないようにするよ。」
その後、私は多くの人から感謝の言葉をもらいました。私自身、そんなお礼を言われるようなことはしていないと思います。
翌日、あるニュースがテレビで放送され、新聞にデカデカと記事が載り、ネットでも話題となっていた。
そのニュースの内容は、とある番組でファンが暴走した、という内容だ。だが、このニュースには続きがあった。その暴走したファンを、あるモデルが冷静に対処した、という内容も記載されていた。
当初、ネットニュースではあるモデルが某有名番組で失格!?のような記事にするつもりが、その場にいたモデル達や、番組側からの正式な謝罪文から真実が判明し、ニュースの内容が変更された。
ネット民達は最初の文を読み、優を非難していた。が、読み進めていく度、優への非難は減っていった。それでも全て消えたわけではない。
番組側に一任した方がよかったのではないか。
大人達に任せた方がよかったのではないか。
自己満足だけで行動した偽善者じゃないのか。
あのような公の場で嘘をつかなくてもよかったのではないのか。
そんな言葉が今も一定数飛んでいる。そんなヤジが飛び交う中、ある俳優がこんな事を言った。
「?なんで優ちゃんが非難されているの?話を聞く限り、その子はモデルの子達を助けたのでしょう?あの年代で自身を犠牲に助けるなんてそうそう出来る事じゃないと思うのだけど?あなた達は中学生くらいの時、自身が非難されると分かっていても、人を助けることが出来るのかしら?私は出来ないと思うし、なんなら今も出来ないわ。だから私はあの子を凄いと思うし、尊敬する。」
優の行動を肯定する発言、そして、肯定した人物の著名度から、優の行動は瞬く間に拡散される。そして、その勇気ある行動に、モデルとしての優にあるあだ名がつけられた。
その名は、モデルを守護する者、という意味を込めて【モデルガーディアン】、そして【SPモデル】と。
その異名を知った本人は、頭を抱えたとか抱えていないとか。
この出来事の後、モデルとしての優の著名度は大幅に上昇することとなった。
次回予告
『小さな会社員への飲会勧誘生活』
モデルの番組撮影の件が終わり、一息ついている中、工藤直樹から飲み会に誘われる。工藤直樹の提案を受け入れ、素直に参加することにしたが、その裏で様々な者達が早乙女優を心配していた。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?




