◆12
「一つ目。ヘルハウンドが反発してこようがなにをしてこようがとにかく力づくで抑え込む。これはヒロナの魔法陣みたいに強制的に言うことを聞かすってことだ。恐怖政治のやり方を真似るといいかもな。二つ目。ヘルハウンドと対話し、納得させて言うことを聞かせ、平和的かつ友好的に収める。これが一番理想的だ」
「そんなこと出来たら苦労しませんよ」
「ここでそんな減らず口を利くなよ」
「だってやり方もわからないのに……」
暗闇の中を懐中電灯も蝋燭もなしでまっすぐ進めと言われているようで気が滅入った。抽象的な話ばかりで具体的なアドバイスがなにもない。
「マホウ、お前なんのためにここに来たんだ?」
「……ヘルハウンドをどうにかしたいからです」
「そうだろ。それなら飼い主は誰なのかをはっきりさせるんだ。ヘルハウンドを飼うマホウになるのか、ヘルハウンドに飼われるマホウになるのか。ここでしっかり手綱を握って躾けとかないとめちゃくちゃになるからな」
そう言うとエンは目の前で小さな火を人差し指の先に灯した。マッチの火ほどの大きさの明かりが微かに揺れる。
「俺がこれを出せるのはマホウと同じで俺の中に猩々っていうやつがいるからなんだ。俺の火の力っていうのは猩々の力なんだよ。マホウがヘルハウンド憑きなら俺は猩々憑きだ」
大きくしたり小さくしたりして火を自由自在に操るエンの顔は心なしか愁い哀しそうだった。
「……俺も昔、猩々を自分だけの力でコントロールしたんだ。だから今お前が感じてる不安は多少わかってるつもりだ。とか言って見当違いだったらごめんな」
眉を下げて困ったように微笑み、火を消す。
「芯を強く持ちながら敵対する意思はないことを誠実に伝えて、真摯に向き合えばうまくいくはずだ。でも決して弱く下手に出ちゃだめだよ。相手の話もよく聞いて取り込むんだ。まあそこが難しいんだけど」
頭をぽん、と撫でてエンはにかっと笑った。
「でもマホウなら出来る。大丈夫だ」
屈託のないエンの笑顔に真鵬はまた可愛げもなく疑問を投げかけた。
「……なんでそう言い切れるんですか」
「そうだなあ。昔の俺にちょっと似てるから、かな」
「なんですかそれ」
エンの答えに真鵬はつい頬が緩んだ。なんと説得力がありそうでなさそうな理由なのだろう。
「あと少ししたら小猩々の霊気も完全に消える。そしたらヘルハウンドが暴れだすはずだ。そこをどうにか片付けろよ。俺は全てが終わるまで待ってるから」




