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アンチ・ハロウィン  作者: 日雀青柚
第三章 新門
29/56

◆11

「それに」とエンは話を続ける。


「今日鎌鼬に会ってなす術なしって思ったかもしれないけど、なす術はあったんだよ、お前の中に。ヘルハウンドの力を逆手にとってお前が使いこなせてれば倒せてたかもしれない。憑かれた者が弱者じゃなくて強者になるためにはそれしかないんだ」


 その時、パチンパチン、と電気のスイッチを上げる音が地下室に響いた。徐々に白い光で明るくなる地下室に現れたのは鳥の巣のような頭にアンバランスなほど大きい丸眼鏡をかけた、白衣を着た背の高い男だった。


「その辺にしときなよ。時間ないんでしょ」


 眠たげな目と声の持ち主である男はのろのろとエンに近付くと、「準備は出来てるからさ」と声をかけた。


「ああ、脳みそちゃんありがとう」

 ──脳みそちゃん?


 エンの手が頭から離れたのを機に脳みそちゃんと呼ばれた男を見上げると、目が合った。丸眼鏡の奥にある眠たげな両目が興味深げに真鵬を見つめていた。


「こいつは脳みそちゃん。猩々緋のブレーンだから『脳みそちゃん』って呼ばれてる。玄関の罠を作ったのもこいつだよ」


 紹介された脳みそちゃんはといえば呆れた顔でため息をつく。


「勝手にそう呼んでるのはエンだけでしょ。新人くんにまでそう呼ばれちゃたまったもんじゃないね。俺は小隈おぐまオガムっていうから好きに呼んで。ただし脳みそちゃん以外で」


 脳みそちゃんのどこが気に食わないんだという目でオガムを見るエンをよそにオガムは少しかがんで真鵬に握手を求めてきた。その手をおずおずと握り、真鵬も「大鉄真鵬です」と名乗った。


「マホウくんか。君、中々面白そうだね」

「笑いを取るのは得意じゃないんですけど……」

「あはは、そういう意味じゃないよ。もう既に面白いね」


 的外れな真鵬の発言に笑うオガムは「さて」と背筋を伸ばした。


「俺は上でやんなきゃいけないことがあるから戻るね。とりあえずここでやれば死ぬことはないはずだから。もちろん危なくなったら対処するけど」


 真鵬にはわからない話をするオガムにエンは口角を上げた。


「なに、その時は俺がどうにかするから心配するな」

「もう頼れるエンに戻ったの?」

「ほぼ全快した」

「……そう」


 それなら安心だというようにじゃあね、と手をあげて背を向けるオガムの足音が響く中、エンは再び真鵬の前にしゃがんだ。


「今からマホウにはもう誰も傷付けなくて済むように、自分だけの力でヘルハウンドを大人しくさせてもらう。そのやり方を教えるけど……ただし条件がある」

「条件?」

「これが成功したらマホウには正式な猩々緋のメンバーとして悪霊退治に参加してもらう」


 真鵬は困惑した。悪霊退治をやるといったってなにをやればいいのかわからない。


「でも俺退治の仕方なんてわかりません」

「いいや、これが全部無事に終わればわかる。ヘルハウンドの力を利用すればいいんだ。これからお前を助けるんだから恩に報いるのはあたり前だよな?この条件が飲めないならなにも教えないからな。勝手に苦しんでればいい」


 半分脅迫じみた口調に真鵬は言い返せなかった。ここで条件を飲まなければなんのためにエンを頼ってきたのかわからない。


 少しの沈黙の後、真鵬は頷いた。


「俺は自分のせいで人を傷付けました。わざとでなかったとはいえ、罪悪感がすごいです。それで、その……罪滅ぼしの意味も込めてここに来ています。だから……やります。悪霊退治でもなんでもやりますから……助けてください」


 真鵬が頭を下げる。


 辺りが再び沈黙に包まれた。長い間頭を下げている真鵬から本気度を感じたのか、エンは「よし」と言った。


 そしてヘルハウンドをコントロールする方法は二つある、とエンは指を二本立てた。

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