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チート魔法で推し活無双 ~推しを救うつもりが推しに溺愛されてます~  作者: 雨ノまどろみ


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3/6

第三話 初めてはどっち?


「えぇっ!? 本当ですかっ!?」



少女漫画なら私の周りには、無数の花が飛び散っているに違いない。


え?

夢じゃないよね?


私、今……魔王城に招かれたよね?



「フッ。そんなに我と共にいられるのが嬉しいか」


「はいっ!」


「ッ!」



魔王様がビクッと震えた気がするけど。

確認してる余裕はない。

だって。



聖地巡礼だァァァアア!!


生きてて良かった!




「少し揺れるぞ」



ぎゅっと、私の腰を抱く魔王様の左腕に力が籠る。


うわっ、心臓止まる。

絶体絶命! 命の危機ッ。


心なしかクラクラする。

魔王様に変に思われてないかな? 大丈夫?


気になるけど、確認できない。

もしも、虫ケラを見るような目で見られてたら……。


いや、それも悪くない。

――むしろ好物と言っても、過言ではない。


よしっ、開き直った!

心置きなくガン見しよう。



んんっ?



「……魔王様?……耳が赤いですよ?」


「ばっ! バカを言うなっ!!」


「でも、本当に……」


「見間違いだっ」



ぷいっと横を向いて顔を隠す魔王様。


肌が白いので誤魔化しようがないのに。それでも、必死に隠そうとする魔王様が愛らすぎる。


ますます赤くなった耳は、魔王様の瞳と同じ色。白銀の髪が、その美しさを更に引き立てる。



――語彙力が死ぬって本当だ。



こんなに美しいものがこの世に存在するなんて。


私からは魔王様の表情は見えない。かろうじて、真っ赤な耳が見えるだけ。


でも、そのおかげで魔王様を好きに眺めていられる。


後頭部の造形すら完璧。

余裕で一生見ていられる。



あれ?


そういえば、魔王様には魔族の象徴とされる『角』がない。


背中にはコウモリのような、見事な黒い羽が生えているけど。


……確か『角を隠せるのは、魔王の称号を持つ者だけ』って、村の人が言ってたっけ。


てことは、魔王様だけの特別仕様?


さすがは魔王様。

何もかもが、オンリーワン。



「あ、穴が開く……ッ!!」



こちらを見ずに、魔王様が叫んだ。


……あっ。

もしかしてガン見してたの気づかれてた?

ヤバい。



「も、申し訳ございません」



どうか聖地巡礼の取り消しだけは、ご勘弁をッ!



「べ、別に、怒ってはいない。あ、謝るな」


「……あ、ありがとうございます……」



魔王様は恐ろしい方だと聞いていたけれど。

でもきっと、それだけじゃない。



……まさかの、ツンデレ……?



いやいやいや。

いくら何でも、それはない!

……ないないない。


白銀髪×赤目のツンデレ魔王なんて……。


いくら何でも夢見すぎっ。

設定盛り過ぎっ。


そんな夢みたいなこと、実際にあるわけがない。




「――もう行くぞ。」


「は、はいっ。」



魔王様は私の返事を待たずに、そのままふわりと宙に浮いた。



うわっ。ファンタジーの世界っ!



眼下に見える村は、転生後の私を受け入れてくれた唯一の場所。


最初はみんな優しかった。

途中から、よそよそしくなってしまったけど……。


村人たちの姿は、どこにも見えない。

きっと、魔王様たちが現れた瞬間に隠れたのだろう。


……恥ずかしすぎる。


魔王様に見惚れて捕まるような間抜けは、本当に私しかいなかったのか……。




「――ご主人様ッ!!」


「!」



その時、声が聞こえた。

下からだ。


慌ててキョロキョロと、声の主を探す。

聞き覚えのある声に一気に青褪める。


いたっ!


地面に這いつくばって涙を流してる――あれは!



「ハ、ハバキっ!」



いったい何で?

何で、そんな所にっ!?



「魔王様! お待ちくださいっ!」



慌てる私の様子に、魔王様もただならぬものを感じたらしい。


ピタリと空中で動きを止めたまま、言葉の先を待ってくれている。



「――あの子、うちの子なんですっ!!」



そう叫んだ瞬間、魔王様は青ざめ。

そして、出会ってから一番の大声で叫んだ。



「ッ!……お前、子供がいるのかっ!?」



魔王様は何故か焦っているけど、私も冷静ではいられない。



「気持ち的にはそうですが、そうではなく……」


「?……どっちだ?」


「あの子は、私が作った初めてのぬいで、我が子同然であり、親友でもあり――」


「……わ、我のぬいが『初めて作ったお前の特別』と、言ったではないか……っ!」



ぬいを持った魔王様の右腕がプルプル震えてる。


ヤバい。また怒らせてしまった!


ごめんなさい、魔王様。

でも、早く誤解を解いて、ハバキを迎えに行かないとっ!



「魔王様のぬいは、チート能力が目覚めてから初めて作ったもので――」


「……チート能力? 異世界転生者が持つという『世界の理に反した力』の事か?……お前、転生者か?」


「はい。あの子はチート能力が目覚める前に、初めて作ったぬいなんです……」


「……なるほど、な。」



魔王様の誤解は解けたようだけど、申し訳なさでいっぱいだ。


ハバキがいない事にも気づかずに、浮かれていたなんて……。



しょんぼりした私を気遣ってくれたのか、魔王様は地面に降りてくれた。


羽がふわっと地面に舞い落ちるような、柔らかな着地。




「ハバキっ!」


「――ご、ご主人様ッ!」



トテトテと、可愛い足音を立てて駆け寄って来るハバキに走り寄り、ひしッと抱き合う。


比喩ではない。

ハバキには、魂が宿っている。

ゆえに、歩く・喋る・ご飯も食べる!



「そ、そいつは、な、なんだッ? なぜ、動いているッ……!?」


「私にも、その、ハッキリとした理由は分からないのですが……」



これを言ったら魔王様も、ハバキを奇異な目で見るかも知れない。



……村の人たちもみんなそうだった。



最初は親切だった村の人たち。

だけど、ハバキを見るなり『ボロキレ』『怨念の塊』と指をさして、散々バカにして笑った挙句――。


動くと分かった途端『呪いの人形だ』『怒らせたら殺される』と、誰も近づかなくなった。



私はハバキを胸に抱いて、平気なフリで笑って言う。



お読みいただき、本当にありがとうございました!


今後も精進いたします!

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