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チート魔法で推し活無双 ~推しを救うつもりが推しに溺愛されてます~  作者: 雨ノまどろみ


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第二話 推しに誤解されたままでは死ねません


目の前には、骨の髄まで凍り付くような殺気を纏った魔王様。



足はガクガク震えてる。

それでも私は、必死に声を振り絞る。


推しに誤解されたまま、死んでなるものか!



――その一心が、私を突き動かしていた。



「ち、違います、魔王様っ! これは魔王様そのものではなく、敢えて小さく簡略化した姿で、お作りしているんですっ!」


「……目的は何だ?」


「肌身離さず連れ歩く為です!」


「持ち運びが楽という事か」



ぬいを眺めながら、魔王様は呟く。



「誇張したデザインは特徴を捉えやすく、比率も崩れにくい。……なるほど、よく考えられている」



さすが魔王様!


ちびキャラのデザインに、そんな意図があったなんて全然知らなかったけど。


顔が良くて頭も良いなんて。

ズルいッ! 好きッ!



魔王様から放たれていた、怒りと殺気がスッと消える。


良かった。

とりあえず、まだ話は聞いて貰えそう。



「小さく簡略化したお姿でも、クールな表情が愛らしい……。見てるだけで心が癒されますよねぇ」



あまりの尊さに思わず合掌。



「……愛?」



あ、ヤバい。

愛らしいなんて表現、魔王様の逆鱗にまた触れちゃったかも。


でも、他に言葉が見つからないし。


目をキョロキョロさせながら、ちらりと魔王様の様子を伺う。



その瞬間――。



私は、自分史上最大サイズ(推定)まで、目をかっ開くことになった!



(おおぉぉぉ推しが、推しが、自作ぬいに触れているうぅ~~~!)



改めて気づいた衝撃がヤバい。


汚れた雑巾を摘まむような持ち方が、多少気になるけれどッ。


ぬいの魅力を知らない魔王様だから……うんっ、仕方ない!



「しかし、これを持ち歩くのか? 確かに素晴らしい出来だが……。何の意味がある?」


「意味……と、申されましても……」



ぬいとお出かけするのは、息をするより当たり前で。


意味なんて考えた事もない。

もちろん、理由はいくつも思い浮かぶけど……。


見てるだけで癒される、とか。

喜びや感動を共に分かち合いたい、とか。



でも、きっと一番シンプルな理由は――。



「『推し』と一緒にいたいだけです」


「ッ!」



魔王様が、一瞬赤くなった。

いや、見間違いかも。


確認する間もなく、魔王様は横を向いてしまった。


その横顔を、さらに白銀の帳が優しく隠す。

何もかもが詩的で美しい。


胸の奥から感動と興奮が大波となって、押し寄せてくる。


この気持ちを、魔王様にも分かっていただきたい!



「……だ、だとしたら、何故、それを我に渡す? お前が持ち歩くべき物だろう?」


「いいえっ!! 推しグッズは『究極の愛の形』なのです!」


「……愛、だと?」



魔王様の目が、激しく泳ぐ。

どんな宝石よりも美しい真紅の瞳。


その色が滲んだのか、白磁の頬が薄っすら紅に染まってる。



……いや、一体どんな魔法ですか。



美しすぎて目が眩む。

五体投地して、神に感謝の祈りを捧げたい。



「このぬいは、力が目覚めて初めて作った、私の特別な推しグッズです」


「……お前の、特別?」



ピクリと震え、魔王様が食い付いた。



「推しグッズは、生きる力と癒しを与えてくれます」


「あ、あぁ」


「それと同時に自分が、誰を、どれほどの熱量で愛しているかを、内外に知らしめる物でもあります」


「……そ、そうか」



『推し』という概念が存在しないこの世界では、理解しにくい感情かも知れない。


魔王様は気圧されて、ただ頷いているだけかも知れない。


それでも私は、ありったけの思いを込めて叫ぶ。



「つまり、その『魔王様ミニぬい』には、私の溢れんばかりの愛が、余すところなく詰め込まれているのですっ!!」


「お、お前の……愛?」


「そうです!」



食い入るようにぬいを見つめていた魔王様が、驚いた顔で私を見た。


今やその頬は隠しようもなく真っ赤だ。


ゴクリと唾を飲み込んだ魔王様の手が、優しくぬいを持ち替える。



手のひらに、そっと包み込むように。



よっしゃぁぁ!

雑巾扱いから昇格ッ。


ヤバい、モチベ上がる!!

きっとここが攻め時。



一気に畳み掛けて、魔王様にぬいを納めていただこう!!



「魔王様ご覧くださいこのクオリティの高さを簡略化された姿でありながら魔王様の美しさを可能な限り再現し気高く高潔な魂すらも感じさせるこのぬいはまさしく神これは私が持つべきものではありません本来あるべき場所――つまり『魔王様の元に帰るべき存在』なのですっ!」


「……意味が分からん……」



ヤバい。

早口過ぎたか。



「つ、つまり! 自作のぬいを献上するという行為は、私が魔王様をどれほど愛し、敬い、尊き存在と崇め奉っているかを、感謝と共にお伝えする『究極の愛情表現』なのです!」


「究極の、愛……だと?」


「そうです! ぬい、それはすなわち――『言葉以上のラブレター』に他ならないのですっ!」



いつか見た政治家の街頭演説ばりに、私は気持ちよく言い切った。



「ッ!……つまり、お前は……人間でありながら、我を……あ、愛していると……そう言っているのか……?」


「そうです! 魔王様は私の愛する『推し』ですからっ!」



鼻息荒く宣言する。

魔王様は、瞬きも忘れて私を凝視している。



ここで、トドメだっ!



「魔王様、その『魔王様ミニぬい』を……お納めいただけますか?」



緩急つけて今度は静かに問いかける。


完璧なプレゼン! 手ごたえバッチリ!

魔王様にも、ぬいの魅力が充分伝わった筈!



あとは『よかろう』と、その一言さえ貰えればっ――。



「……愛……か。お前はそれ程までに、私を愛していると……」



赤く染まった顔で、魔王様は噛みしめるようにポツリと言う。


魔王様の返答は期待したものではなかったけど、その問いには即答できる。



「いいえ、魔王様っ! そんなものではありません!」


「ッ……!」



私はグイッと顔を近づけた。

魔王様は少し距離をとる。私はさらに近づいた。



「まだまだ足りないのですっ! 時間が欲しい! もっと色んな魔王様を見てみたい!」


「……なっ!?」


「何よりそのお心の内を、もっと知りたいのです、魔王様っ!」


「~~~ッ!!?」



勢いに押されたのか魔王様が、少し後ろによろめいた。


首まで真っ赤に染まってる。

愛しいがすぎるッ。


私はそっと、鼻の下を拭った。


……良かった。

鼻血は出てないみたい。



魔王様に、自作ぬいを納めて貰えたら満足。

そう思っていた筈なのに。


少し話しただけで、こんなにも『欲』が溢れてる。


ぬいだけじゃない。

あれもそれも、あんなものだって作りたい!



魔王様は、公式グッズ作成の許可を下さるだろうか……?



いや。

何としても許可を頂かなくては!



『推し活文化のない異世界で、推しがいる生活の豊かさを発信する』



これこそが、私がこの世界に転生した理由に違いないっ!  





「……フッ。」



私の妄想をかき消すように、魔王様が鼻で笑った。



「まさか、お前のような小娘に、我が心臓を撃ち抜かれる日が来ようとは……」


「え?」



今、なんて?

もしかして、ぬいを受け取っても良い、とおっしゃって下さった?



「いいだろう、お前の想いは受け取った」


「お、お納めくださるんですかっ!? あ、あ、ありがとうございますっ!」



キタこれ! 優勝! 大願成就!!



諸手を上げて喜ぶ私を、魔王様は突然抱きよせた。



「――来い!」


「え?」



ヒッ……。

待って、ムリ無理、キャパオーバー!


推しが、推しが――近過ぎるぅぅぅっ!

この距離は心臓に悪すぎますって、魔王様ッ!



「お前を、我が城に迎え入れてやろう」



魔王様の後ろに控えていた配下の魔族たちが、激しくどよめいている。



けど、こっちはそれどころじゃない!



お読みいただき、ありがとうございました!


ご指導コメントも歓迎です。よろしくお願いします!(何卒、お手柔らかにお願いします)

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