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『信用処刑人レオン』 ― 帝国監査局第零課 ―  作者: 神代零


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第六話 「秘密清算区画」

 北海中央市場。


 世界最大級の金融都市。


 海上へ幾重にも積層された白銀都市群は、

 二十四時間眠ることがない。


 巨大電光掲示板。


 高速契約演算塔。


 無数の金融術式。


 市場そのものが、

 一つの巨大魔法陣だった。


 だが今、

 その全てが悲鳴を上げている。


《連邦通貨急落》


《海運指数暴落》


《第二中央銀行株価停止》


 街中に警報が響く。


 銀行前では群衆が怒鳴り合い、

 輸送業者達が契約解除を叫び、

 市場全体が恐慌状態へ陥っていた。


 その上空を、

 黒い監査艦アストレアが通過する。


「監査局だ!」


「第零課が来たぞ!」


「信用処刑人……!」


 群衆の顔が青ざめる。


 市場関係者達が逃げ始めた。


 誰もが知っている。


 帝国監査局第零課が動く時、

 必ず何かが終わる。


 艦内。


 レオンは空中投影を見つめていた。


 地下構造図。


 中央市場深層区画。


 通常には存在しない隠蔽層。


「秘密清算区画」


 ルークが説明する。


「正式記録には存在しません」


「超大型国家間取引専用の裏市場です」


「つまり黒市場か」


「国家公認の、ですね」


 レオンの視線が細まる。


 構造が異常だ。


 隠蔽術式が幾重にも重なっている。


 普通の監査官では発見すら不可能。


「見つけた」


 レオンが呟く。


 視界の奥。


 赤黒い契約核。


 巨大な中枢術式。


 そこから全市場へ、

 崩壊契約が流されていた。


 セリスが問う。


「原因は?」


「偽装信用保証」


 レオンは即答する。


「存在しない国家資産を担保に、

 市場へ超過契約を流してる」


 ルークの顔色が変わる。


「待て……

 それって」


「国家規模粉飾だ」


 静かな声だった。


「しかも故意」


 市場崩壊は事故ではない。


 誰かが意図的に、

 北海連邦を破綻させようとしている。


 その瞬間だった。


 艦内警報。


《敵性契約反応検知》


《監査妨害術式展開》


 艦橋が揺れる。


「攻撃!?」


 窓の外。


 市場上空に、

 巨大な黒色魔法陣が展開していた。


 無数の契約文字。


 金融術式。


 そして中央には、

 黒い鴉の紋章。


「来たか」


 レオンが低く呟く。


 次の瞬間。


 市場全域の契約光が反転した。


 赤から黒へ。


《市場封鎖》

《外部監査権限拒絶》


 ルークが叫ぶ。


「市場そのものが監査局を拒否してる!」


 セリスが冷静に命令を飛ばす。


「障壁維持」


「強制侵入を実施します」


 だが。


 レオンだけは、

 別のものを見ていた。


 契約線の奥。


 地下最深部。


 誰かがいる。


 黒衣。


 長身。


 顔は見えない。


 だが、

 こちらを見て笑っていた。


(……見えている?)


 あり得ない。


 信用視へ干渉している。


 相手も監査系能力者だ。


 その瞬間、

 レオンの脳裏へ声が響く。


『ようやく来たか』


 低い男の声。


『アルヴェインの生き残り』


 レオンの目が細まる。


『誰だ』


『君と同じだよ』


 黒い契約線が揺れる。


『世界の腐敗を視る者だ』


 通信が切れる。


 同時に、

 市場全域の契約圧力が急上昇した。


《信用率低下》

《崩壊予測まで残り四時間》


 ルークが青ざめる。


「不味い!

 市場が耐えきれない!」


 セリスがレオンを見る。


「中核契約を断てますか」


 レオンは黙って地下構造図を見る。


 通常侵入では間に合わない。


 なら。


「直接行く」


「……地下へ?」


「秘密清算区画に降りる」


 ルークが顔を引きつらせた。


「いや待て、

 あそこ完全封鎖区域だぞ」


「だから黒幕がいる」


 レオンは静かに監査外套を翻す。


 胸元の銀印が光った。


「終わらせる」


 その瞳には、

 巨大市場を覆う契約網が映っていた。


 北海連邦全体を殺そうとしている、

 一つの巨大な“嘘”。


 ならば。


 暴けばいい。


 レオンは低く呟く。


「監査対象を確認」


 そして。


「これより、

 秘密清算区画への強制監査を開始する」

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