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『信用処刑人レオン』 ― 帝国監査局第零課 ―  作者: 神代零


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第二十三話 「執行者《エクスキューター》」

 中央監査塔ネメシス深層。


 封印兵器区画。


 重い警報音が、

 塔全域へ響き続けていた。


《最終処刑機構起動》


《執行者権限接続》


《監査兵器解放》


 ルークの顔は完全に青ざめている。


「終わった……」


「本当に起動しやがった……!」


 レオンは静かに問う。


「そんなに危険なのか」


 答えたのはセリスだった。


「《執行者》は、

 国家反乱鎮圧用兵器です」


「通常監査官では対処不能」


 その声にも、

 僅かな緊張が混じっている。


 ヴァルディスが低く続けた。


「元々は黒月恐慌後、

 アルヴェイン抹消のために作られた」


 空気が止まった。


 レオンの目が細まる。


「……俺達を殺すための兵器か」


「そうだ」


 老人は苦々しく頷く。


「アルヴェイン監査術式へ対抗するための、

 唯一の国家級執行機構」


 その時だった。


 塔全体が激しく揺れる。


 轟音。


 まるで巨大な何かが目覚めるような振動。


《深層封印解除》


《執行者起動率二十%》


 世界信用図の一角が、

 黒く染まり始める。


 レオンの信用視が警告を発した。


(……異常だ)


 普通の契約構造じゃない。


 人間でもない。


 《エレボス》とも違う。


 もっと単純で、

 もっと危険。


「信用そのものを兵器化してる」


 レオンが呟く。


 カインが小さく笑った。


「正解だ」


「《執行者》は、

 国家信用を直接破壊する」


 ルークが震える声で補足する。


「対象国家の契約を強制停止して、

 文明ごと殺すんだ」


「最終処刑兵器ってわけ」


 レオンは静かに息を吐く。


 本当に狂っている。


 帝国監査局は、

 世界を守る組織ではない。


 世界を“管理”する組織だ。


 そのためなら、

 国家ごと消す。


 その瞬間。


 巨大な衝撃。


 会議室壁面が吹き飛んだ。


 爆炎。


 契約嵐。


 そして。


 黒煙の中から、

 一体の人影が現れる。


 長身。


 黒銀色の外装。


 胸部には巨大監査印。


 顔には白い仮面。


 だが。


 一番異常なのは。


 その身体全体が、

 契約文字で構成されていることだった。


「……あれが」


 ルークの声が震える。


「《執行者》」


 人型監査兵器。


 国家級信用破壊機構。


 その仮面中央が赤く光る。


《対象確認》


《レオン・アルヴェイン》


《最優先処刑対象》


 空気が凍った。


 次の瞬間。


 《執行者》の周囲から、

 無数の黒い契約杭が射出される。


 セリスが即座に前へ出た。


「伏せて!」


 轟音。


 監査障壁が展開される。


 だが。


 一撃で砕け散った。


「なっ……!?」


 セリスが吹き飛ぶ。


 壁へ叩き付けられ、

 口元から血が流れる。


 ルークが絶叫した。


「セリス!!」


 《執行者》は止まらない。


 赤い視線が、

 真っ直ぐレオンを捉える。


《アルヴェイン監査権限を確認》


《危険度:世界崩壊級》


《処刑を執行します》


 次の瞬間。


 会議室全体へ、

 巨大な黒色契約陣が展開された。


 レオンの視界が揺れる。


 これは。


 監査術式ではない。


 “信用消去”。


 存在そのものを、

 世界契約から抹消する処刑術式。


 ヴァルディスが叫ぶ。


「レオン!!

 避けろ!!」


 だが。


 レオンは動かなかった。


 静かに《執行者》を見ている。


 視える。


 契約構造。


 中核。


 そして。


 最深部。


 そこに、

 一つの記録番号が刻まれていた。


《ALV-01》


 レオンの瞳が止まる。


(……まさか)


 次の瞬間。


 《執行者》が処刑術式を放つ。


 黒い契約光が、

 レオンへ向かって解き放たれた。

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