表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『信用処刑人レオン』 ― 帝国監査局第零課 ―  作者: 神代零


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/30

第二十四話 「ALV-01」

 黒い契約光が、

 レオンへ一直線に迫る。


 《執行者》による信用消去術式。


 存在そのものを世界契約から抹消する、

 絶対処刑。


 通常なら回避不能。


 だが。


 レオンの目には視えていた。


 術式構造。


 契約流動。


 そして。


 《執行者》中核に刻まれた識別番号。


《ALV-01》


 次の瞬間。


 レオンは監査印を振るう。


 赤黒い監査光。


 黒い処刑術式と正面衝突した。


 轟音。


 会議室全域が吹き飛ぶ。


 壁面崩壊。


 契約嵐。


 監査塔そのものが激しく揺れる。


 ルークが吹き飛ばされながら叫ぶ。


「レオン!!」


 煙が晴れる。


 そこに。


 レオンは立っていた。


 だが、

 完全ではない。


 監査外套が裂け、

 左腕の契約線が焼けている。


 セリスが血を流しながら立ち上がった。


「……無事ですか」


「問題ない」


 レオンは静かに答える。


 だが。


 その視線は《執行者》から外れていない。


 視えてしまった。


 中核契約。


 この兵器の正体。


「……そういうことか」


 カインが目を細める。


「気付いたか」


 レオンは低く呟く。


「《執行者》は、

 アルヴェイン監査術式を基盤にしてる」


 沈黙。


 ヴァルディスが苦しげに目を閉じた。


 それが答えだった。


「黒月恐慌後」


 老人が重く言う。


「帝国はアルヴェイン残留記録を回収した」


「その一部を兵器転用した」


 ルークが絶句する。


「……狂ってる」


「だから《ALV-01》」


 レオンの声は冷たかった。


「アルヴェイン第一号監査兵器」


 《執行者》がゆっくり前進する。


 仮面奥の赤光が揺れる。


《監査権限照合》


《対象:レオン・アルヴェイン》


《適合率98.7%》


 その瞬間。


 レオンの信用視が激しく反応した。


 違和感。


 この契約構造。


 どこか、

 見覚えがある。


 そして。


 最深部へ触れた瞬間。


 レオンの呼吸が止まる。


「……嘘だろ」


 中核記録。


 そこへ刻まれていた名前。


《ユリウス・アルヴェイン》


 世界が止まった。


 ルークが聞き返す。


「誰だそれ」


 レオンは答えられない。


 代わりに、

 カインが静かに言った。


「お前の父親だ」


 空気が凍る。


 セリスですら目を見開いた。


「……まさか」


 カインは《執行者》を見つめる。


「黒月恐慌後、

 帝国はユリウスの監査記録を回収した」


「そして人格残滓ごと、

 兵器へ封入した」


 ルークが顔を歪める。


「そんなの……」


「人間じゃない」


 レオンの拳が静かに震える。


 父は死んだ。


 だが。


 帝国は死後すら利用した。


 監査官として。


 兵器として。


 《執行者》が再び処刑術式を展開する。


《アルヴェイン監査権限を確認》


《同系統存在を排除します》


 だが。


 その瞬間。


 《執行者》の動きが止まった。


 赤い視線が揺れる。


 ノイズ。


 契約文字が乱れる。


 そして。


 初めて。


 機械音声ではない声が漏れた。


『……レ……オン……』


 室内が凍り付く。


 レオンの目が見開かれる。


『逃げ……ろ……』


 《執行者》が頭を押さえるように揺れる。


《人格残滓異常》


《処理エラー》


 カインが叫んだ。


「今だ!」


「中核監査を叩き込め!」


 レオンは動かなかった。


 ただ。


 《執行者》を見ている。


 仮面奥。


 崩壊しかけた契約の奥に。


 確かに、

 父の痕跡があった。


『監査……するな……』


 苦しそうな声。


『《エレボス》は……

 まだ終わってない……』


 次の瞬間。


 《執行者》全身から、

 暴走した黒い契約光が噴き出した。


《中核崩壊》


《強制殲滅モード移行》


 ヴァルディスの顔色が変わる。


「不味い!」


「自爆する気だ!!」


 監査塔全体が激震する。


 国家級信用破壊兵器。


 もしここで暴走すれば。


 帝国中央そのものが吹き飛ぶ。


 レオンは静かに監査印を握る。


 そして。


 初めて、

 感情を露わにした。


「……ふざけるな」


 赤黒い監査光が、

 一気に解放された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ