第十八話 「七大財閥監査」
その瞬間。
帝国全金融網が悲鳴を上げた。
《緊急警報》
《七大財閥契約網へ監査接続を確認》
《市場安定指数急落》
中央市場。
銀行街。
証券塔。
全ての空間投影へ、
赤黒い監査文字が浮かび上がる。
《監査実施中》
群衆が凍り付いた。
「七大財閥が……監査?」
「あり得ない……!」
「帝国そのものだぞ!?」
世界中の市場が揺れる。
海運株暴落。
軍事契約停止。
国家保証低下。
誰もが理解していた。
七大財閥とは、
帝国そのものだ。
それを監査するということは。
世界を裁くのと同義。
帝国中央信用議会。
議場全域へ、
激しい警報が鳴り響く。
《財閥契約保護障壁損傷》
《アルヴェイン権限侵入》
「止めろ!!」
財閥代表の一人が絶叫する。
「市場が耐えられん!」
だが。
監査術式は止まらない。
赤黒い契約線が、
七大財閥全ネットワークへ侵入していく。
レオンの視界には、
全てが視えていた。
国家債務操作。
恐慌誘導。
戦争利益契約。
人口調整市場。
保険操作。
世界そのものを商品化した巨大契約群。
(……腐ってるな)
余りにも。
余りにも深い。
セリスが小さく息を呑む。
「これ全部……
財閥が?」
ルークの顔は完全に青ざめていた。
「戦争まで市場操作で起こしてる……」
カインが冷笑する。
「だから言っただろ」
「世界はとっくに壊れてる」
レオンは黙って契約群を見つめる。
そして。
見つける。
最深部。
七大財閥全てを繋ぐ、
一つの中核契約。
そこへ刻まれた名前。
《統一信用継承契約》
レオンの目が細まる。
「……継承?」
ヴァルディスが顔を上げる。
「まさか」
レオンの信用視がさらに深層へ潜る。
そして。
世界が止まった。
「……人間じゃない」
静かな声だった。
全員の視線が向く。
「何が見えた」
セリスが問う。
レオンはゆっくり答える。
「七大財閥、
全員と融合してる」
沈黙。
理解不能な言葉。
だが。
レオンには視えている。
財閥代表達の契約構造。
普通の人間ではない。
《エレボス》へ人格と信用を接続された、
半契約生命体。
世界管理のために、
人間を捨てた存在。
「……だから恐慌を繰り返せたのか」
ヴァルディスが苦しげに呟く。
国家が滅ぼうが、
人間が死のうが関係ない。
連中にとって重要なのは、
《エレボス》維持だけ。
その時。
議場中央の男が、
静かに笑った。
「ようやく理解したか」
帝国中央信用議会議長。
第一財閥当主。
アウグスト・レイヴン。
その瞳は、
既に人間のものではなかった。
黒い契約光が脈動している。
「我々は進化した」
低い声が世界へ響く。
「国家は不完全だ」
「市場も、
人間も、
感情もな」
「だから管理する」
「完全な信用秩序によって」
レオンは静かに男を見ていた。
理解した。
こいつらはもう、
止まらない。
《エレボス》へ全てを捧げている。
なら。
監査するしかない。
「レオン!」
ルークが叫ぶ。
「待て!
これ以上やれば本当に世界が……!」
だが。
レオンの瞳には、
既に監査結果が映っていた。
七大財閥。
世界信用管理機構。
帝国中央信用議会。
全て。
不適合。
完全に。
レオンは静かに監査印を掲げる。
空間が凍る。
七大財閥代表達の顔から、
初めて余裕が消えた。
彼らは知っている。
この宣告の意味を。
レオンは冷たい声で言った。
「監査結果を通達する」
世界が静まり返る。
「七大財閥は、
世界信用法違反を確認」
巨大監査術式が展開。
赤黒い契約光が、
帝国全土を覆い始める。
そして。
信用処刑人レオンは、
世界最大権力へ裁定を下した。
「全財閥資産を差し押さえる」




