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『信用処刑人レオン』 ― 帝国監査局第零課 ―  作者: 神代零


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第十七話 「世界信用崩落警報」

 帝国全土が、

 赤く染まった。


《超緊急警報》


世界信用管理機構エレボス

《監査不適合判定を確認》


《世界契約網に重大異常》


 警報が、

 帝国全通信網へ流れる。


 銀行。


 市場。


 軍事企業。


 国家中枢。


 全てが一斉に停止した。


 帝国中央市場では、

 群衆が空を見上げている。


 空間全域へ、

 巨大な赤黒い契約文字が浮かび上がっていた。


《監査中》


 ただその一文だけで、

 市場は凍り付いた。


「嘘だろ……」


「《エレボス》が監査されてる……?」


「誰が……?」


 答えを知る者達は、

 もっと青ざめていた。


 帝国中央信用議会。


 超高層議場。


 七つの巨大座席。


 そこへ座る財閥代表達が、

 一斉に立ち上がる。


「馬鹿な!」


「アルヴェインだと!?」


「なぜ生き残っている!」


 怒号。


 恐怖。


 動揺。


 そして。


 初めてだった。


 世界を支配する側が、

 本気で怯えている。


「直ちに監査を停止しろ!」


「第零課を拘束しろ!」


「《エレボス》接続を遮断する!」


 だが。


 議場中央監視術式が、

 冷酷に答える。


《拒否》


《監査権限優先順位を確認》


《アルヴェイン監査権限が上位です》


 沈黙。


 誰も言葉を失う。


 アルヴェイン。


 かつて世界を監査した一族。


 その権限は、

 帝国すら超えていた。


「あり得ない……」


 財閥代表の一人が震える。


「抹消したはずだぞ……!」


 同時刻。


 中央監査塔ネメシス


 会議室では、

 世界信用図そのものが崩れ始めていた。


 《エレボス》へ走った亀裂。


 それが、

 世界契約網全体へ広がっている。


「信用逆流発生!」


 ルークが叫ぶ。


「世界中の偽装契約が浮き始めてる!」


 セリスの顔色も悪い。


「国家保証が崩れる……!」


 レオンは静かに契約核を見つめていた。


 視える。


 無数の嘘。


 偽装された国家信用。


 財閥による市場支配。


 架空担保。


 粉飾資産。


 全てが、

 監査によって暴かれていく。


 《エレボス》が悲鳴を上げている。


 それは、

 世界そのものの悲鳴だった。


「レオン」


 ヴァルディスが低く言う。


「このままでは本当に世界市場が崩壊する」


「分かってる」


 レオンは静かに答えた。


 《エレボス》は腐っている。


 だが。


 今や世界全体が、

 この怪物へ依存していた。


 完全破壊すれば、

 文明そのものが死ぬ。


 カインが壁へ寄りかかりながら言う。


「だから四十年前、

 アルヴェインは止まった」


 レオンの目が細まる。


「止まった?」


「世界を救うためだ」


 カインの声は苦かった。


「《エレボス》を壊せば、

 数十億人が死ぬ」


「だから監査結果を封印した」


 その結果。


 帝国はアルヴェインを消した。


 真実ごと。


 レオンはゆっくり目を閉じる。


 世界を壊すのは簡単だ。


 監査結果を通せばいい。


 だが。


 その先にあるのは、

 地獄だ。


 その時。


 《エレボス》契約核が、

 突然大きく脈動した。


 次の瞬間。


 世界信用図中央へ、

 一つの映像が浮かび上がる。


 巨大議場。


 七人の財閥代表。


 帝国中央信用議会。


 その一人が、

 冷たい目でレオンを見ていた。


「レオン・アルヴェイン」


 低い声が響く。


「監査を中止しろ」


 レオンは無言。


 男は続ける。


「《エレボス》は世界秩序だ」


「壊せば文明が終わる」


「だから放置しろと?」


「そうだ」


 財閥代表は迷いなく言った。


「世界は管理されねばならない」


「国家も、

 市場も、

 人間もだ」


 レオンの瞳が冷える。


 理解した。


 こいつらは。


 本気で世界を所有物だと思っている。


「……なるほど」


 レオンは静かに監査印を握る。


 赤黒い光が空間へ広がる。


 その瞬間。


 七大財閥側の空気が変わった。


 彼らは知っている。


 この男が何をできるか。


 レオンは静かに宣言した。


「帝国中央信用議会」


 世界が静まる。


「追加監査対象へ指定する」


 次の瞬間。


 七大財閥全契約網へ、

 巨大監査術式が接続された。

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