番外編③ リオン様の手紙事情
リオンは書斎で悩んでいた。
セイラに送る手紙の色を、何色にするか。
セイラは、その見た目から派手な色や大人びた色を好むように見えるが、実は乙女らしい色を好む。
「やっぱり、パステルカラーかな。前は水色だったから……今日は黄色にしよう」
リオンのデスクには、パステルカラーの他にも、白や金箔の入った豪華なもの、そして裏方で働く彼用のシンプルなものが並んでいる。
リオンは、さらさらと筆を走らせた。
内容は、仕事の愚痴だ。
書き終えると封筒に入れ、いくつも並ぶスタンプの中から妖精のものを選び、しっかりと押す。
封筒のスタンプを一目見れば、内容が大まかに分かるように——。
それが、セイラと取り決めたルールだった。
始めはイラストを描いていたが、うさぎも、ネズミも、妖精も、花ですら、すべて虫に見えると言われてしまった。
星とハートだけは、何度も練習してセイラから合格点をもらえたが、なぜか他のイラストは上達しなかった。
「ちゃんと書き分けているんだけどな……そう思わないか?」
筆頭執事のユージンに問いかけると、「左様でございますね」と、曖昧な笑みが返ってくる。
「文字はとても美しいのに、不思議なものです」
ユージンは、机の上にそっと紅茶を置いた。
「何故だろうね……」
リオンは小さく息をつくと、紅茶の香りを確かめる。
「しかし、もうウサギのスタンプに星は描きたくないな」
「そうですね……ですが、もう必要ないかもしれません。ジャスミン様は回復なさいましたから」
「あぁ……そうだな」
リオンは紅茶を一口飲むと、穏やかに微笑んだ。
パステルカラーの封筒には、『りーちゃんより』と署名する。
「では、これを届けてくれ」
「承知いたしました」
「あぁ……それと、これは彼に」
シンプルな封筒には、薄い黄色の紙に紺色のインクで書いた依頼書を入れ、『R』と署名する。
二通の封筒をユージンに渡すと、リオンは静かに筆を置いた。
スタンプの意味
うさぎ→ジャスミン
花→町
ネズミ→諜報部員
妖精→愚痴
他、多数あります。
星は、危険度、緊急度。ハートは解決、対策済みのサインです。
セイラが、ルシナにうさぎのモチーフの財布をプレゼントしたのは、ルシナとジャスミンを、無意識に重ねていたからなのかも知れません。




