番外編11: コハナのボーナスステージ
パン屋の仕事を終えたコハナは、ブレンダからもらった売れ残りのパンを抱えて、アパートへ帰ろうと、ちょこちょこと歩いていた。
「も〜どこやったのさ〜」
「わかんない〜どうしよう……ママに怒られちゃうよ〜」
町の少年たちが何やら騒いでいるのを、コハナは見つめた。
(なくしもの……このままだと、家に帰って怒られて、一週間おやつなし……か)
コハナの脳裏に、泣いている少年の未来が流れてきた。
「ねぇ……どこで遊んでたの?」
コハナは、しばらく考えてから、少年たちに声をかけた。
「えー?パン屋のお姉ちゃんだ〜。おれ、チョコクリームパン好きなんだ〜」
「おれ、クリームパン!」
話が脱線する少年たちに、コハナは首を傾げた。
「……何か、なくしたんでしょ?」
「はっ!そうだった!おばあちゃんが、ママにってあげたお守りが、どっかいっちゃったの〜」
「……勝手に持ってきちゃったの〜」
「どんなやつ?」
コハナは、どんなものなのかまでは見えていない。
「うんとね〜青いキラキラした石と、木の実がついたやつ」
「こんくらいの……」
少年は指を広げて、大きさを表現する。
「遊んだところと、通った道……どこ?」
無表情のまま、コハナは問いかける。
「え〜?えっとぉ〜あっちで遊んで〜生垣の下通ってぇ〜あとは〜」
少年は、眉をぎゅっと寄せながら思い返す。
(生垣……)
コハナは、生垣をじっと見つめた。
ふと、少年がお守りを見つける映像が流れてくる。
「生垣の周りは探した?」
「え〜?さっき見たよ〜?」
「……そこ、もう一度じっくり探してみたら?」
「ん〜……わかった〜。探してみる〜」
少年たちは走って生垣に向かい、這いつくばって辺りを探る。
(……これくらいなら、いいよね)
コハナは、少年たちの後ろ姿を見つめながら、かすかに微笑んだ。
パンを抱え直し、そのままアパートへと歩き出す。
(はっきりとした答えは与えない……ヒントをあげて、自分で考えさせる。これが本来の神託の巫女の役割だったのかもしれない……)
「あっ!あった!!」
少年の歓喜の声を背に、コハナはそっと空を見上げた。
パンを食べて、にっこり笑うルシナの姿が、ふと流れてきた。
「早く帰ろっ」
コハナは、いつもより軽い足取りで、アパートの扉を開けた。
ルシナは、コハナを天気予報士がわりにしています。
「ねぇ、明日、晴れかな〜?」
予言もコハナの存在意義だったから、そんな何気ない一言が、コハナは少しだけ嬉しかったりします。




