第六話「新しい仲間」
「ステータス、開け」
俺がそう呟くと、半透明の画面が目の前に現れた。
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【新帝ダンジョン 魔王】
名前:タケシ
レベル:3
体力:5500
魔力:5700
スキル
・鑑定E
・魔力操作
残りポイント:2500
持ち物
・魔剣
・魔銃
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「おぉ……結構上がってるな」
レベルが二つ上がっただけなのに、体力も魔力もかなり増えている。
しかも。
「鑑定のレベルまで上がってるのか」
「はい!」
ミルが嬉しそうに頷いた。
「スキルは使用回数やレベルアップによって成長するんです!」
「へぇ……」
「ちなみに、ポイントを使って直接強化することもできますよ!」
「なるほどな」
やっぱりこのダンジョン、ゲームっぽい。
「それでタケシ様、次はどうされますか?」
「そうだな……」
俺は床に座り込んでいる女魔法使い――ヒアを見る。
首元には、まだ魔剣を突きつけたままだ。
さっきまで威勢が良かったのに、今は顔色が真っ青だった。
「まずは、こいつから外の情報を聞きたい」
その瞬間、ヒアの肩がビクッと震える。
「ひっ……」
するとミルがさらっと言った。
「それなら、拷問向きの魔物を召喚してみてはどうでしょう?」
「……拷問向き?」
「はい!」
ミルはいつも通りの笑顔だ。
「精神系が得意な魔物なら、簡単に情報を引き出せますよ!」
怖いことを笑顔で言うなこの妖精。
「そんな魔物いるのか?」
「今のポイントなら、Aランク魔物の“トーチャ”とかどうでしょう?」
「Aランク?」
そんな上位魔物が買えるのか。
「戦闘特化じゃないので、比較的安いんです!」
「なるほどな……」
俺は少し考えた後、頷いた。
「じゃあ召喚してみるか」
そう言って玉座へ向かおうとした時だった。
「あ、そうだタケシ様!」
「ん?」
「もうモンスター召喚に玉座のボタンを押す必要ありませんよ!」
「……は?」
「“管理画面”と念じれば、ダンジョン機能を直接使えるようになってるはずです!」
「そんな機能増えてたのか?」
「冒険者を倒してレベルが上がったことで、タケシ様とダンジョンの結びつきが強くなったからだと思います!」
「なるほどな」
俺はミルに言われた通り、心の中で唱えた。
「管理画面」
すると。
目の前に巨大な半透明の画面が現れる。
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【管理画面】
階層追加 階層改変 ショップ 魔物召喚
ポイント モニタ
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「おぉ……」
完全にゲーム画面だ。
「今まで玉座でやっていたことを、どこでもできるようになったと考えてもらえば大丈夫です!」
「つまり迷宮操作も自由ってことか」
「はい!」
「便利すぎるだろ……」
「モニタも、いつでもどこの階層でも見れるようになりました!」
どんどんダンジョン運営が快適になっていく。
「じゃあ早速――魔物召喚」
俺は画面から“トーチャ”を選択した。
『Aランク魔物・トーチャを召喚しますか?』
「承認」
その瞬間。
淡い紫色の光が部屋に広がった。
光はゆっくり人型を作り上げていく。
そして現れたのは、一人の女性だった。
長い黒髪。
白い肌。
額から一本だけ伸びた黒い角。
妖艶な雰囲気を纏った美女だ。
彼女は俺の前で静かに膝をついた。
「初めまして、マスター」
落ち着いた声だった。
「私は“トーチャ”です」
「初めまして……って、そのトーチャって名前なのか?」
「いえ」
女性は静かに首を振る。
「トーチャは種族名です」
「なるほど」
確かに呼びにくい。
「新しい名前をつけてもいいか?」
すると彼女の表情が少しだけ柔らかくなった。
「……はい」
「名前を頂けるなら、嬉しいです」
俺は少し考える。
黒髪に黒角。
なんとなく強そうな名前がいい。
「じゃあ、お前の名前は今日から“ゼキナ”だ」
「……ゼキナ」
彼女は小さく呟く。
「嫌だったか?」
「いいえ」
ゼキナは深く頭を下げた。
「ありがたき幸せです、マスター」
なんか急に部下っぽくなったな。
するとミルが思い出したように言った。
「そういえばタケシ様!」
「どうした?」
「先ほどの戦闘で、二階層のゴブリンがかなりやられています!」
「なに?」
Cランク相手だったからな。
迷宮を突破されかけたし、かなり消耗してるのか。
「でも今はポイントを節約したいんだよな……」
「それなら大丈夫だと思います!」
「どういうことだ?」
「レベルアップしたことで、低級魔物の価格が安くなっているんです!」
「なるほど」
つまりダンジョンが成長したことで、下級魔物を量産しやすくなったわけか。
「じゃあ三階層も安く――」
「階層は安くなりません!」
「そこは据え置きか……」
なかなか世知辛い。
そんな話をしていると、ゼキナが静かに口を開いた。
「マスター」
「ん?」
「私のスキルに“魔物召喚”があります」
「魔物召喚?」
「はい。現在のレベルでは下級魔物しか召喚できませんが、ゴブリン程度なら可能です」
「マジか!?」
「はい」
それはかなり便利じゃないか?
「すぐ頼む!」
「承知しました」
ゼキナが片手を前に出す。
「――スキル・魔物召喚」
魔法陣が展開される。
次の瞬間。
大量の光が現れ、そこからゴブリンたちが次々と姿を現した。
「おぉぉ!?」
ざっと五十体ほど。
一瞬で補充部隊が完成した。
「すごいぞゼキナ!」
「ありがとうございます、マスター」
するとミルが羽をぱたぱたさせながら言う。
「これなら二階層をすぐ立て直せますね!」
「そうだな。……ミル、このゴブリンたちを二階層へ送れるか?」
「もちろんです!」
「どうやる?」
「“魔物転移”と念じれば大丈夫ですよ!」
「便利機能多いな……」
俺は苦笑しながら念じた。
「魔物転移」
すると。
シュンッ!!
ゴブリンたちが一瞬で消えた。
「転移完了です!」
「よし」
これで二階層の補充も終わった。
「二人とも、よくやってくれた」
「えへへ!」
「当然です、マスター」
ミルとゼキナがそれぞれ反応する。
「さて……」
俺は玉座へ腰掛けた。
「次はどうされますか、マスター?」
「そうだな」
ポイントも欲しい。
三階層も欲しい。
もっと強い魔物も必要だ。
やることは山ほどある。
だが――。
「今日はもう休む」
「え?」
「頭が疲れた。明日また考える」
異世界に来てから、まともに休んでいない。
少し整理したかった。
「承知しました!」
「おやすみなさい、マスター」
こうして俺は、新しい仲間を得たダンジョンで再び眠りについた。




