第五話「Cランク冒険者」
「――来たか」
玉座の間へ入ってきた五人組を見ながら、俺は静かに立ち上がった。
全員、前に来たEランクとは雰囲気が違う。
装備も動きも洗練されていた。
特に先頭の大男。
巨大な盾を持ち、全身を金属鎧で固めている。
明らかに前衛職だ。
「どうやら本当に魔王みたいだぜ、リーダー」
片手剣を持った男が俺に剣を向けながら言った。
「あぁ、しかも魔剣持ちだ」
リーダーと呼ばれた男は目を細める。
「言葉も理解してる。下級魔王にしちゃ厄介そうだな」
一瞬で魔剣に気づいたのか。
さすがCランク。
観察力が違う。
「二人とも、油断しないで」
後方にいた女魔導士が口を開く。
「二階層とはいえ、魔王は魔王よ」
冷静な女だった。
その言葉に、剣士たちも表情を引き締める。
するとリーダーが俺に向かって言った。
「なぁ魔王さん。取引しないか?」
「……取引?」
予想外の言葉だった。
冒険者ってのは、会った瞬間襲ってくるものだと思っていた。
少しだけ興味が湧く。
「どんな取引だ?」
「簡単だ」
リーダーは盾を構えたまま笑う。
「その魔剣とダンジョンコアを俺たちに渡せ」
「……」
「そうすれば命だけは見逃してやる」
なるほど。
最初からそれが狙いか。
「魔剣はともかく、なんでダンジョンコアが欲しい?」
「簡単だろ」
剣士の男がニヤつく。
「魔王討伐の報酬より、ダンジョンコアを売った方が何倍も儲かるからだよ」
「……そういうことか」
つまりダンジョンコアは高級素材扱いらしい。
「理解したか?」
「ああ、よく分かった」
そして俺は静かに魔剣を構えた。
「だが断る」
「……は?」
「コアは俺の命だ。渡す気はない」
その瞬間。
俺は魔剣へ大量の魔力を流し込んだ。
ゴォォォッ!!
黒い刀身に赤い炎が走る。
「っ!?」
「取引決裂だ」
俺は一気に斬撃を放った。
轟音と共に炎の刃が飛ぶ。
だが――。
ガァァン!!
リーダーが盾で受け止めた。
「なにっ!?」
炎が弾け飛ぶ。
「まだまだだな、魔王さん!」
リーダーが笑う。
さすがCランク。
前のEランクとは比べ物にならない。
「へぇ……」
俺は逆に少し興奮していた。
「やっぱ強いな」
「当然だ!」
剣士の男が突っ込んでくる。
だが俺は魔力をさらに剣へ流し込んだ。
炎が一気に膨れ上がる。
「――煉獄斬り」
横薙ぎの炎の斬撃。
「っ!?」
剣士が反応した時には遅かった。
ドォォォン!!
炎が直撃し、剣士の体が吹き飛ぶ。
「ガァァァァッ!!」
そのまま壁へ叩きつけられ、動かなくなった。
「なっ……!?」
冒険者たちの顔色が変わる。
「一撃だと……!?」
「さすが魔剣だな」
俺自身も少し驚いていた。
三〇〇〇ポイントの価値は伊達じゃない。
「3000ポイント……?」
魔導士が眉をひそめる。
やっぱり人間はポイントを知らないらしい。
「あー……こっちの話だ」
「……不気味な奴ね」
魔導士が杖を構える。
「なら、こっちも本気でいくわよ!」
彼女の周囲に火の玉が浮かび上がる。
「火魔法――ファイアボール!!」
三つの火球が飛来した。
だが。
「甘い」
俺は魔剣を振る。
ズバァン!!
火球が真っ二つに切り裂かれた。
「なっ!?」
「煉獄斬り」
再び炎の斬撃。
「くそっ、防げぇ!!」
リーダーが前に出る。
だが遅い。
ドォォォン!!
炎が盾ごとリーダーを両断した。
「が……ぁ……」
巨大な体が真っ二つに裂け、床へ崩れ落ちる。
「リーダァァァ!!」
魔導士――ヒアが叫ぶ。
その瞬間、俺は一気に距離を詰めた。
そして魔剣を彼女の首元へ突きつける。
「動くな」
「っ……!」
「死にたくなければな」
ヒアの顔が青ざめる。
その時、物陰からミルが飛び出してきた。
「タケシ様! 終わりましたか!?」
「ああ、今終わった」
すると目の前に文字が浮かぶ。
『2500ポイント獲得しました』
『レベルが1→3へ上昇しました』
「レベルアップ?」
するとミルが嬉しそうに羽をぱたぱたさせた。
「Cランクを倒したからですね!」
「そんなに経験値高いのか」
「レベルが上がると、全体的なステータスも上昇しますよ!」
「へぇ……」
「試しに見てみます?」
「そうだな。ステータス、開け」
俺がそう呟くと、目の前に半透明の画面が浮かび上がった。




