第四話「魔物召喚」
「タケシ様、おはようございます!」
朝一番、元気なミルの声が部屋に響く。
「ん……ミルか。おはよう」
俺は布団から起き上がり、大きく伸びをした。
異世界生活にも少しずつ慣れてきた気がする。
「今日はどうされますか?」
「そうだな……ミルはどうした方がいいと思う?」
「でしたら、魔物を強化してみてはどうでしょう!」
「魔物強化か」
確かに前回来た冒険者たちは、スライムだけでは簡単に突破してきた。
もっと防衛力を上げないと危険だ。
「いいな。スライムの数を増やして、新しい魔物も追加するか」
「はい! まずはスライムを百体から二百体に増やしてみてはどうでしょう?」
「そうするか」
俺はダンジョンショップを開く。
「スライム百体追加購入」
『スライム×100を購入しました』
『100ポイント消費』
「よし」
これで一階層のスライムは二百体。
かなり鬱陶しい階層になったはずだ。
「次は新しい魔物だな」
「ミル、何がいいと思う?」
「そうですね……二階層ならゴブリンなんてどうでしょう?」
「ゴブリンか」
定番だな。
「スライムみたいに自動復活はしませんが、武器も扱えますよ!」
「いいな。それでいこう」
「ゴブリン五十体購入」
『ゴブリン×50を購入しました』
『250ポイント消費』
するとモニターに、小柄な緑色の魔物たちが現れた。
棍棒や短剣を持ってうろうろしている。
「おぉ、ちゃんとゴブリンだ」
「かなり二階層らしくなりましたね!」
「あとは人が来るのを待つだけか」
「はい!」
◇◇◇
――数時間後。
「タケシ様!」
「どうした?」
「二階層、かなり機能しています!」
「そうなのか?」
ミルは嬉しそうに頷く。
「ゴブリンたちがちゃんと巡回もしてます!」
「へぇ……」
そこで俺は前から気になっていたことを聞いた。
「なぁミル」
「はい?」
「お前、前からダンジョン全体の様子見えてるみたいだったけど、どうやって見てるんだ?」
「あっ」
ミルが固まった。
「……言ってませんでしたっけ?」
「聞いてない」
「すみません!」
ミルは慌てて頭を下げた。
「ダンジョンには“モニタールーム”という場所があるんです!」
「モニタールーム?」
「はい! 最終階層の奥に自動生成される、魔王専用の管理部屋ですね!」
「そんな便利な部屋あったのかよ」
「そこではダンジョン内の全てを確認できます!」
「俺も使えるのか?」
「もちろんです!」
「どうやって行くんだ?」
「“迷宮内転移”と念じながら、モニタールームを想像してください!」
「迷宮内転移……」
その瞬間。
視界が一瞬歪んだ。
次に気づいた時、俺は別の部屋に立っていた。
「おぉ……!」
そこは豪華な空間だった。
巨大なソファ。
高級感のある絨毯。
そして正面には、空中に浮かぶ巨大モニター。
「すごいなこれ……」
「ここから全階層を確認できます!」
モニターには一階層の草原や、二階層の迷宮が映っていた。
まるで監視カメラだ。
「便利すぎるだろ」
「あと、ポイント残高も見れますよ!」
「それも分かるのか」
「はい!」
ミルはなぜか得意げだった。
その時。
「タケシ様、大変です!」
「今度はなんだ?」
「Cランク冒険者パーティーが接近しています!」
「Cランク!?」
前回のEランクより遥かに上だ。
「現在、一階層のスライムを突破して二階層へ向かっています!」
「まずいな……」
今のダンジョンで勝てるか?
「タケシ様、どうされますか?」
「……まずポイント確認だ」
「モニターへ念じれば表示できます!」
俺はモニターに向かって念じた。
すると画面が変化する。
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【ダンジョンポイント】
3000pt
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「えっ?」
俺は目を見開いた。
「昨日ほとんど使い切ったよな? なんでこんな増えてるんだ?」
「ダンジョンは“魔力の地脈”の上に存在するんです!」
「地脈?」
「はい! ダンジョンは地脈から魔力を吸収し、少しずつポイントへ変換しています!」
「なるほど……」
「さらに侵入者からも余剰生命力を吸収しています!」
「そういう仕組みか」
つまり放っておいても少しずつポイントは増える。
これはかなり大きい。
「……なら」
「はい?」
「新しい武器を買う」
「なるほど!」
確かに、今の俺の武器は拳銃だけ。
Cランク相手には火力不足かもしれない。
「強い武器……」
俺はショップ画面を眺める。
その時だった。
一つの項目が目に入った。
【魔剣】
「魔剣?」
「魔力を込めて使う特殊武器ですね!」
ミルが説明する。
「使用者の魔力量に応じて強化補正が付きます!」
「俺の魔力って五〇〇〇だったよな?」
「はい! つまり攻撃力+5000です!」
「強っ!?」
チート武器じゃねぇか。
「価格は……三〇〇〇ポイントか」
今の全財産。
かなり賭けだ。
でも――。
「買う」
『魔剣を購入しました』
『3000ポイント消費』
次の瞬間。
黒い刀身の剣が空中に現れた。
禍々しい赤い紋様が浮かんでいる。
「これが魔剣……」
「タケシ様、本当に買ったんですね!?」
「ああ。使い方教えてくれ」
「はい!」
俺はミルから急いで使い方を学ぶ。
すると不思議なことに、すぐ感覚を理解できた。
体が自然に覚えていく。
「……なるほど」
「もう理解したんですか!?」
「なんとなく分かる」
どうやら魔王の体は、普通の人間より遥かに順応力が高いらしい。
「よし」
俺は魔剣を握り直す。
「冒険者が来たら、ミルは隠れてろ」
「……承知しました」
ミルが物陰へ隠れる。
その直後。
ギィィィ……。
玉座の間の扉がゆっくり開いた。
そして――。
五人の冒険者たちが姿を現した。




