第三話「冒険者」
「タケシ様! 起きてください!」
ミルの慌てた声で、俺は飛び起きた。
「んぁ……どうしたミル。そんな慌てて」
「人が来ました!」
一瞬で眠気が吹き飛ぶ。
「……何人だ?」
「四人です! 見た感じ、冒険者パーティーですね!」
「構成は?」
「魔法使い一人、剣士二人、ヒーラー一人です!」
「なるほど……」
いかにも初心者パーティーって感じだな。
「どうしますか、タケシ様?」
「そのパーティー、今どこにいる?」
「一階層です! あと数分もしないうちにここへ来ます!」
「そんなに早いのかよ……!」
もう来るのか。
まだ心の準備が――いや、そんなこと言ってる場合じゃない。
「とにかく、俺が戦う」
「えっ?」
「ミルは隠れてろ」
「……はい!」
ミルは少し不安そうな顔をしたあと、小さく頷いた。
その時だった。
「あぁぁぁ!!」
「どうした!?」
「来ます!!」
次の瞬間――。
バァン!!
勢いよく扉が蹴破られた。
「ちっ、なんで俺たちが新しくできたダンジョンの調査なんかやらなきゃいけねぇんだよ」
「仕方ないでしょ。まだ私たちEランクなんだから」
「でもよぉ……」
冒険者たちは文句を言いながら部屋へ入ってくる。
そして、そのうちの一人が俺を見て固まった。
「っ!? お、おいみんな!」
「どうした?」
「あいつ……もしかして魔王じゃねぇか?」
「え?」
全員の視線が俺に集まる。
「……そうだが?」
なんとなく返事をすると。
「しゃ、喋ったぁぁ!?」
「知能高っ!?」
「いや魔王なんだから喋るだろ」
なんか失礼だなこいつら。
「一階層に魔王がいるのか……」
「でも、一階層の魔王なら俺たちでも倒せるんじゃね?」
「馬鹿! 一応魔王だぞ!」
「でも見た感じ弱そうじゃ――」
「おい」
「あ?」
「ごちゃごちゃうるさいんだよ」
俺が睨むと、冒険者たちの空気が変わった。
「っ……!」
「や、やばい! 逃げるぞ!」
「逃がすか」
俺は銃を構えた。
そして引き金を引く。
バンッ!!
「ぎゃっ!?」
さらに。
バンッ!! バンッ!!
三発の銃声が部屋に響いた。
冒険者たちはそのまま倒れ、動かなくなる。
静寂。
すると目の前に文字が浮かび上がった。
『1800ポイント獲得しました』
「ポイントゲット……?」
すると隠れていたミルが飛んできた。
「はい! ダンジョン侵入者を倒すと、その生命力がポイントへ変換されるんです!」
「なるほど……」
つまり侵入者を倒すほどダンジョンは強くなるわけか。
「おめでとうございます! 初ポイント獲得ですね!」
「ああ……」
正直、人を殺した感覚はあまりない。
ゲームの敵を倒したみたいな、不思議な感覚だった。
もしかすると、魔王になった影響かもしれない。
「そのポイントで二階層を作ってみてはどうですか?」
「二階層か……」
確かに、これからもっと冒険者が来るだろう。
一階層だけじゃ危険だ。
「よし。二階層を作る」
「どんな階層にします?」
「迷路とかどうだ?」
「いいですね!」
「じゃあ、罠だらけの迷宮にするか」
「はい!」
俺はダンジョンコアへ意識を向ける。
「新階層購入」
『新階層を購入しました』
『2500ポイント消費』
ゴゴゴゴゴ……!!
地面が揺れ始めた。
「うおっ!?」
「階層生成中です!」
すると、部屋の右側に新しい階段が現れた。
「これが二階層への道か」
「降りましょう!」
俺たちは階段を下りていく。
そこには、広大な空間が広がっていた。
「広っ……」
「ここを改変して迷宮を作ります!」
「どうやるんだ?」
「“ダンジョン改変”と念じながら、作りたい階層を想像してください!」
「分かった」
俺は目を閉じた。
複雑な通路。
行き止まり。
落とし穴。
毒矢。
壁が動く罠。
ゲームで見たような迷宮をイメージする。
すると目の前に画面が現れた。
━━━━━━━━━━━━━━━
【ダンジョン改変】
迷宮階層
必要ポイント:700pt
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「七〇〇ポイントか……」
でも必要経費だ。
「承認」
その瞬間。
ゴゴゴゴゴゴ……!!
地面がうねり始めた。
土と石が生き物みたいに動き、巨大な壁を形成していく。
しばらくして揺れが止まると――。
そこには本物の迷宮が完成していた。
「すげぇ……」
「完成です!」
「本当に迷路になってる……」
「タケシ様なら道が分かるはずですよ!」
「ん?」
俺は迷宮を見る。
すると自然と、“正解ルート”が頭に浮かんできた。
「……見える」
「ダンジョンマスター権限ですね!」
「便利だなこれ」
俺は迷宮の中を歩き始めた。
だが予想以上に広い。
「この迷路、かなり長いな……」
「もっとポイントを使えば、さらに難しくできますよ!」
「やっぱポイントって重要だな……」
強い魔物。
強い罠。
広い階層。
全部ポイント次第か。
「タケシ様?」
「いや、なんでもない」
「早く行きましょう!」
「そうだな」
そしてしばらく歩き――。
ようやく最奥へ到着した。
「疲れた……」
「結構歩きましたね」
「今日はもう飯食って寝るか」
「はい!」
俺はポイントを使い、ハンバーグ弁当を二つ購入した。
『200ポイント消費』
湯気の立つ弁当が現れる。
「うまそう……」
「いただきます!」
俺とミルは並んで弁当を食べた。
そして、そのまま眠りにつく。
――だが。
この時の俺はまだ知らなかった。
明日、さらに厄介な来訪者が現れることを。




