第二話「階層を作ろ」
「ダンジョン名、“新帝のダンジョン”。そして魔王名、“タケシ”ですね!」
妖精――ミルが嬉しそうに笑う。
「タケシ様、とお呼びしてもいいですか?」
「ああ、いいぞ。俺もミルって呼んでいいか?」
「はい!」
……。
なんだこの気まずい空気。
お互い初対面だから仕方ないんだけど、微妙に会話が続かない。
「み、ミル」
「はい! なんでしょう?」
「その……ダンジョンについて説明してくれるか?」
「もちろんです!」
ミルはぴしっと姿勢を正した。
「では、ダンジョンの説明を始めますね!」
「お、おう。頼む」
「まずダンジョンとは、人々を誘い込み、その滞在時間や探索によってポイントを得る場所です!」
「ポイント?」
「あっ、説明を忘れてました!」
ミルは慌ててぺこりと頭を下げた。
「ポイントとは、ダンジョンを強化するための力です! 階層、家具、武器、スキル、食品、魔物など、さまざまなものを購入できます!」
「ゲームみたいだな……」
「ちなみにタケシ様の初期ポイントは五〇〇〇ポイントです!」
「五〇〇〇……多いのか?」
「最初としてはかなり多いですよ!」
なるほど。
つまり、このポイントを使ってダンジョンを発展させていくわけか。
「試しに何か買ってみますか?」
「そうだな」
するとミルが玉座の右側を指差した。
「そこにボタンがありますよね?」
「ああ、この黒いボタンか?」
「はい! それを押しながら欲しいものをイメージすれば購入できます!」
「へぇ……」
「ただし、すごい物ほどポイントは高くなりますけどね」
「なるほど」
かなり便利な能力だ。
「まずは一階層作ってみてはどうですか?」
「階層って、どうイメージすればいいんだ?」
「最初なら草原とか森が定番ですね!」
「じゃあ草原でやってみるか」
俺はボタンを押したまま、広い草原を想像した。
すると。
『草原を購入しました』
『二〇〇〇ポイント消費』
その瞬間――。
ダンジョン全体が光に包まれた。
気づけば、俺たちの周囲には青空と草原が広がっていた。
「おぉぉ……!」
さっきまで石の洞窟だったのに、一瞬で景色が変わった。
風が吹き、草が揺れている。
本物の自然みたいだ。
「すごいな……」
「残りポイントは三〇〇〇ですね!」
「次は魔物を配置してみましょう!」
「魔物か……」
一階層に出る魔物と言えば、やっぱり定番はあれだよな。
「スライム購入」
『スライム×100を購入しました』
『一〇〇ポイント消費』
次の瞬間。
草原のあちこちに青いゼリー状の生物が現れた。
ぴょんぴょん跳ねている。
「おぉ、本当にスライムだ」
「一階層にはちょうどいいですね!」
「ちなみにスライムは倒されても一定時間で復活します!」
「便利だな」
これなら毎回補充しなくていいのか。
「次は何を買いますか?」
「そうだな……魔物も配置したし、武器でも試してみるか」
「武器ですか?」
「前世の武器も出せるのかな」
「大抵の物ならいけると思いますよ?」
「じゃあ――銃とかどうだ?」
俺は拳銃をイメージした。
『銃を購入しました』
『三〇〇ポイント消費』
すると、俺の手の中に黒い拳銃が現れた。
「うお、本当に出た」
重みも感触も本物だ。
異世界なのに銃が使えるとか強すぎるだろ。
「前世の武器まで出せるなんて……」
これはかなり便利だ。
「次はスキルなんてどうですか?」
「スキルもあるのか?」
「ありますよ!」
「ならやっぱり定番だな」
「何を買うんです?」
「鑑定だ」
異世界系で鑑定は絶対必要だろ。
「鑑定F、購入!」
『スキル・鑑定Fを購入しました』
『五〇〇ポイント消費』
「お、なんか頭の中に情報が入ってきた」
「ステータスに追加されてるはずですよ!」
「ステータス……?」
「“開け”って念じれば見れます!」
「便利だな……。開け」
すると目の前に半透明の画面が現れた。
━━━━━━━━━━━━━━━
【新帝のダンジョン 魔王】
名前:タケシ
レベル:1
体力:5000
魔力:5000
スキル
・鑑定F
残りポイント:2100
所持品
・銃
━━━━━━━━━━━━━━━
「これが俺のステータスか」
正直、かなりシンプルだ。
「思ったより普通だな……」
「これから強くなるんですよ!」
ミルが胸を張る。
「まあ、レベル1だしな」
これからってことか。
「さて、残りのポイントで飯でも買うか」
「いいですね!」
異世界に来てから何も食ってないし、普通に腹が減っている。
「おにぎりとお茶を四つずつ購入」
『おにぎり・お茶セット×4を購入しました』
『一〇〇ポイント消費』
すると目の前にコンビニみたいな包装のおにぎりとペットボトルのお茶が現れた。
「うわ、普通に日本のだ」
「タケシ様の記憶を参考に生成されてますからね!」
「便利すぎるだろこのダンジョン」
俺は鮭おにぎりを開けて一口食べる。
「うまっ……」
異世界一食目がおにぎりになるとは思わなかった。
「残りのポイントで布団も買うか」
「はい!」
「安布団×2購入」
『安布団×2を購入しました』
『一〇〇ポイント消費』
床に薄い布団が出現する。
「よし」
今日は色々ありすぎた。
異世界転移。
魔王。
ダンジョン。
頭が全然追いついてない。
「飯食って、今日は寝るか」
「はい! おやすみなさい、タケシ様!」
「おう、おやすみミル」
こうして俺の――。
ダンジョン魔王としての生活が始まった。




