第五十八話 決戦の日
――決戦の日。
俺の前には、決戦の準備を終えた国の仲間たちが並んでいた。
ミル。
ゼキナ。
水魅五姉妹。
ガルド。
バルド。
ギガルド。
ガルフ。
ロギ。
ミーナ。
ゼルド。
そして、オーク族、ガロウ族、ゴブリン族、猫族、ダークエルフ族。
この国を作ってきた魔物たちが、玉座の間に集まっている。
空気は重い。
誰も騒がない。
誰も笑っていない。
今日は、Sランク冒険者との決戦の日だ。
「お前たち」
俺は玉座の前に立ち、全員を見渡した。
「今日は、Sランク冒険者との決戦の日だ」
その言葉に、全員の間に緊張が走った。
当然だ。
相手はSランク。
普通の冒険者とは格が違う。
前に来た時も、あいつは余裕を残していた。
今の俺たちは、あの時より強くなった。
国も作った。
仲間も増えた。
罠も用意した。
武器も、防具も、休憩場所も、回復手段も整えた。
それでも、油断はできない。
「お前たちは緊張していると思う」
俺は静かに言った。
「だが、お前たちはこの日のために動いてきた」
全員が俺を見る。
「家を作った。武器を作った。服を作った。料理を作った。罠を作った。戦い方を磨いた」
俺は拳を握った。
「だからこそ、今日は一人でも欠けることは許さない」
玉座の間が静まり返る。
「いいか。一人でも欠けたら、俺たちの負けだと思え」
俺の言葉に、何人かが目に涙を浮かべた。
だが、誰も下を向かない。
「はい!」
全員が力強く答えた。
「まだSランク冒険者が来るまで少し時間がある」
俺は一度息を吐いた。
「最後に、全員の成果を聞く」
その言葉で、全員の表情が少しだけ明るくなった。
緊張の中にも、自信がある。
この三週間で、自分たちがやってきたことに誇りを持っているのだ。
「まずは、オーク族から言え」
「はい!」
ギガルドが前に出た。
その顔には疲れも見える。
だが、それ以上に強い自信があった。
「我らオーク族は、ダークエルフ族と協力し、多くの罠を設置しました」
「罠か」
「はい。落とし穴、足止め用の壁、矢を放つ仕掛け、魔力を乱す通路などです」
「なるほど」
「それだけではありません」
ギガルドは胸を張った。
「国の中心部を守るため、防壁を作りました」
「防壁?」
「はい。五十一階層から六十階層へ続く重要な道を守る壁です。万が一、敵が奥まで来た時に備えています」
「そこまで作ったのか」
「はい。さらに、味方だけが通れる避難通路も作りました」
俺は思わず笑った。
国となれば、やはり守るための壁は必要だ。
だが、ここまで早く完成させるとは思わなかった。
「よくやった、ギガルド」
「ありがとうございます」
「だが、今日はまだ星は与えない」
ギガルドは静かに頷いた。
「分かっております」
「今日の戦いで、誰が一番成果を出すか決まる。だからこそ、最後まで気を抜くな」
「はい!」
「次、ガロウ族」
「はい!」
ガルフが前に出た。
「我らガロウ族は、武器と防具の改良を進めました」
「具体的には?」
「まず、魔法の剣の効果を上げました。魔力を込めた時の威力が、以前より強くなっています」
「いいな」
「さらに、属性を持たない者でも魔法に近い力を使える仕組みを完成させました」
「無属性でも使えるのか?」
「はい。魔石を剣に組み込み、その魔石に魔力を通すことで、火、風、水、土の簡単な魔法効果を発動できます」
「なるほど」
属性がない者でも魔法効果を使える。
これはかなり大きい。
戦える者が増えるということだ。
「防具の方は?」
「防具には、衝撃を弱める魔法回路を入れました。完璧ではありませんが、普通の攻撃ならかなり耐えられます」
「いい成果だ」
「ありがとうございます!」
「次、ゴブリン族」
「はい!」
ロギが前に出た。
「我らゴブリン族は、オーク族と協力して細かい道具を作りました」
「細かい道具?」
「はい。罠を動かす小さな部品、扉の仕掛け、武器の調整具、矢を自動で補充する箱などです」
「なるほど」
「さらに、ガロウ族とも協力し、魔法の剣に細かい調整を加えました」
「調整?」
「はい。魔力を流しすぎると暴発する危険があったので、魔力の流れを調整する小さな部品を組み込みました」
「それは大事だな」
武器が強くても、使う者が危険なら意味がない。
ゴブリン族の細かい作業は、思った以上に国を支えている。
「それと、戦闘用の服も改良しました」
「どんな感じだ?」
「動きやすく、破れにくく、魔力を通しやすい布を使いました。軽い防具の下にも着られます」
「よくやった、ロギ」
「ありがとうございます!」
「次、猫族」
「はい!」
ミーナが前に出た。
いつもより緊張しているが、目はしっかりしている。
「私たち猫族は、休憩場所と回復の準備を進めました」
「休憩場所?」
「はい。オーク族に頼んで、戦いの途中で味方が休める場所を作ってもらいました」
「なるほど」
「そこには、水、食事、包帯、回復薬を置いています」
「回復薬も用意したのか」
「はい。ダークエルフ族が五十七階層で見つけた薬草を使い、回復薬を作りました」
「料理は?」
「回復薬を少し混ぜた料理を作りました。戦いの前に食べれば体力が回復しやすくなり、戦いの後にも力を取り戻しやすくなります」
「いいな」
戦闘で一番危険なのは、長引いた時だ。
疲れた者。
怪我をした者。
魔力を使いすぎた者。
そういう者を支える場所があるだけで、生存率は大きく変わる。
「ミーナ。お前たちは戦場で一番大事なことを分かっている」
「ありがとうございます!」
「次、ダークエルフ族」
「はっ」
ゼルドが前に出た。
「我らダークエルフ族は、とにかく戦闘を重ねました」
「戦闘?」
「はい。この二十日ほどの間に侵入してきた冒険者たちと何度も交戦し、冒険者の動きを調べました」
「なるほど」
「Sランク冒険者とは比べものにならない相手ばかりでしたが、人間の剣筋、魔法の使い方、撤退の仕方、地図の作り方を確認できました」
「それは大きいな」
「さらに、三十階層以降の罠を増やしました」
「どんな罠だ?」
「視界を奪う闇の霧、魔力を乱す結界、偽の道、休憩所に見せかけた足止め空間、そして狙撃用の隠し通路です」
「かなり本格的だな」
「はい」
ゼルドは静かに頷く。
「また、五十七階層で回復に使える薬草を見つけ、猫族に渡しました」
「それで回復薬が作れたのか」
「はい」
戦闘だけではない。
罠。
情報。
薬草。
他種族との協力。
ダークエルフ族も、かなり動いている。
「全員、良い成果を出したな」
俺は全員を見渡した。
「だが、成果を出しても、死んだら意味がない」
玉座の間が再び静かになる。
「だからこそ、全員絶対に死ぬな」
「はい!」
全員の声が揃う。
「今日の目的は、Sランク冒険者を倒すことだ。だが、それ以上に大事なのは、この国を守ることだ」
俺は一歩前に出る。
「俺たちは、ただの魔物の群れじゃない」
全員が俺を見る。
「ここは国だ」
俺ははっきりと言った。
「お前たちは、俺の国の民だ」
ミルが静かに俺を見つめる。
ゼキナが剣に手を置く。
ガルドが膝をつく。
水魅五姉妹が真剣な顔で頷く。
「今日、俺たちはそれを証明する」
俺は玉座の前から歩き出した。
「お前たち、Sランク冒険者を倒しに行くぞ」
「はい!」
全員の声が、玉座の間に響いた。
俺たちは扉の方へ向かった。
その先にあるのは、決戦の場。
Sランク冒険者との戦い。
そして、この国が本当に国として立ち上がるための最初の試練だ。
俺は心の中で、ステータスを確認する。
地獄の狂乱。
無限再生。
瞬間移動。
魔法キューブ。
未来予知Lv10。
魔王領域。
アルティアレギオン。
使えるものはすべて使う。
誰も死なせない。
そして、必ず勝つ。
新帝ダンジョンの決戦が、今始まろうとしていた。
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第五十八話終了時点
タケシ:魔王Dランク Lv0
階層数:60階層
残りポイント:633160pt
時間経過:
・第五十七話から約二十日経過
・Sランク冒険者との決戦の日を迎える
最終成果:
・オーク族
ダークエルフ族と協力して罠を設置
国の中心部を守る防壁を完成
味方用の避難通路を作成
・ガロウ族
魔法の剣と防具を改良
無属性でも魔法効果を使える仕組みを完成
魔石を組み込んだ武器を作成
・ゴブリン族
オーク族と協力して罠用の細かい道具を作成
ガロウ族と協力して魔法の剣の調整部品を作成
戦闘用の服を改良
・猫族
休憩場所を準備
水、食事、包帯、回復薬を配置
回復薬入りの料理を作成
・ダークエルフ族
侵入してきた冒険者たちと交戦し、人間の動きを分析
三十階層以降の罠を強化
回復薬に使える薬草を発見し、猫族へ提供
現在の星:
・オーク族:星5
・ガロウ族:星6
・ゴブリン族:星4
・猫族:星4
・ダークエルフ族:星7
未決定:
・Sランク冒険者との戦いで一番活躍した種族に星10を与える
ポイント計算
第五十七話終了時点:33160pt
決戦日までの地脈ポイント:
60階層 × 500pt × 20日 = 600000pt
33160pt + 600000pt = 633160pt
購入・討伐なし
第五十八話終了時点:633160pt
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