第五十六話 星の評価
――一週間後。
俺の前には、各種族の長たちが並んでいた。
オーク族の建築責任者、ギガルド。
ガロウ族長、ガルフ。
ゴブリン族長、ロギ。
猫族長、ミーナ。
ダークエルフ族長、ゼルド。
五十五話で、それぞれに仕事を与えてから一週間が経った。
その間、俺たちはSランク冒険者への対策を進めながら、魔物の国づくりも進めていた。
そして今日は、その成果を聞く日だ。
「お前たち、自分たちの仕事はできたか?」
俺が聞くと、全員が嬉しそうな顔をした。
「はい!」
長たちは自信満々に答えた。
「そうか。だったら、それぞれの成果を聞こう」
「はい!」
正直、かなり楽しみだ。
一週間でどこまで進められたのか。
国づくりがどこまで形になったのか。
俺は玉座に座り、最初の一人を見る。
「じゃあまず、ギガルドから順番に言ってくれ」
「承知しました」
ギガルドが一歩前に出た。
「まず、我らオーク族は、各種族の居住区を完成させました」
「もう完成したのか?」
「はい」
ギガルドは力強く頷いた。
「ガロウ族には、鍛冶場に近く、火と金属に強い石造りの家を作りました。ゴブリン族には、服や小道具を作るための作業場を家の近くに置きました」
「なるほど」
「猫族には、五十一階層の中心付近に居住区を作り、各居住区へすぐ移動できるよう道を整えました」
「いいな」
「ダークエルフには、五十七階層に森と暗所を組み合わせた居住区を作りました。弓の訓練場、闇魔法の訓練場も近くに置いてあります」
「そこまでやったのか」
思ったより、かなり進んでいる。
「それと、魔王様の城についてですが」
「魔王城か」
「はい。六十階層に建てる魔王城の設計が完成しました。現在は土台作りに取りかかっております」
「なるほど」
この調子なら、魔王城も思ったより早く形になりそうだ。
国に城ができれば、魔物たちの士気も上がる。
「良い成果を出したな、ギガルド」
「ありがたきお言葉」
「よし。お前たちオーク族には、星を五つ与える」
「星、ですか?」
ギガルドが不思議そうな顔をした。
「ああ」
俺は頷いた。
「これから、成果に応じて星を与えることにする。星が多いほど、この国に貢献した証だ」
「つまり、我らは働いたと認められたということですか?」
ギガルドの目が輝く。
「そうだ」
俺がそう言うと、ギガルドの目に涙が浮かんだ。
「ありがたき幸せ……!」
「これからも頼むぞ」
「はい! 必ずや、魔王様にふさわしい国と城を作ってみせます!」
ギガルドは深く頭を下げた。
「次、ガロウ族」
「はい!」
ガルフが前に出る。
「お前たちは、何を作った?」
「我らガロウ族は、戦うための武器と防具を作りました」
「どんな武器だ?」
「魔法の剣です」
「魔法の剣?」
俺は少し身を乗り出した。
「はい。魔剣ほど強力ではありませんが、魔力を込めることで、自分の属性に応じた魔法を放つことができます」
「つまり、火属性の魔力を込めれば火の斬撃、水属性なら水の斬撃が出るということか?」
「その通りです」
「面白いな」
ガルフはさらに続ける。
「防具にも同じ仕組みを組み込みました。魔力を流せば、自分の属性に合った守りを強めることができます」
「例えば、火属性なら火への耐性、水属性なら水への耐性という感じか?」
「はい」
これはかなり使える。
魔物たちは、種族ごとに得意な属性が違う。
それに合わせた武器や防具を作れるなら、戦力は大きく上がる。
「ガルフ。お前たちは良いものを作った」
「ありがとうございます!」
「ガロウ族には、星を六つ与える」
「六つ……!」
ガルフは驚いた顔をした後、深く頭を下げた。
「この評価に恥じぬよう、さらに良い武器を作ってみせます!」
「期待してるぞ」
「はい!」
「次、ゴブリン族」
「はい!」
ロギが前に出る。
「お前たちは、服を作ったんだったな」
「はい。各種族に合わせた服を用意しました」
「具体的にはどんなものだ?」
「まず、オーク族には丈夫で動きやすい作業服を作りました。建築や運搬で破れにくいよう、厚めの布を使っています」
「いいな」
「ガロウ族には、鍛冶場で火花を受けても燃えにくい服を作りました。ゴブリン族には細かい作業をしやすい軽い服を作り、猫族には動きやすく清潔感のある服を用意しました」
「ダークエルフは?」
「森で動きやすく、暗い場所で目立ちにくい服を作りました。戦いにも使えるよう、袖や裾は邪魔にならない形にしています」
「なるほど」
服も文化の一部だ。
ただ着られればいいわけじゃない。
種族の生活、仕事、戦い方。
それに合わせた服を作れるのは大きい。
「ロギ、お前たちはよく考えて作ったな」
「ありがとうございます!」
「ゴブリン族には、星を四つ与える」
「星四つ……!」
ロギは嬉しそうに頭を下げた。
「もっと役に立てるよう、さらに改良していきます!」
「ああ。頼む」
「次、猫族」
「はい!」
ミーナが前に出る。
「猫族は、何を進めた?」
「私たちは、生活支援の準備を進めました」
「具体的には?」
「ゴブリン族に協力してもらい、ベッド、シーツ、枕、毛布を作りました」
「寝具か」
「はい。それと、各居住区の掃除の仕組みを作り、食事を配る場所も決めました」
「料理はどうだ?」
「いくつか考えました。オーク族には力が出る料理、ガロウ族には鍛冶場で働いた後に食べやすい料理、ゴブリン族には作業の合間に食べられる軽い料理を用意しています」
「かなり進んでるな」
「それと、メイド服も作りました」
「メイド服?」
「はい。城で働く者、居住区を管理する者、食事を運ぶ者で、少しずつ形を変えています」
「なるほど」
意外とかなりしっかりしている。
しかも、ゴブリン族と協力して寝具や服を作ったのは大きい。
他の種族の力を借りることも、国づくりには必要だ。
「ミーナ。お前たちはよくやった」
「ありがとうございます!」
「猫族には、星を四つ与える」
「星四つ……!」
ミーナは目に涙を浮かべた。
「ありがとうございます、魔王様!」
「ああ。これからも生活面を支えてくれ」
「はい! 必ず!」
「次、ダークエルフ族」
「はっ」
ゼルドが静かに前に出る。
「お前たちは、冒険者対策を進めていたな」
「はい」
「成果を言え」
「我らは、冒険者が弱る場所を調べました」
「弱る場所?」
「はい」
ゼルドは静かに説明を始めた。
「冒険者は、ダンジョンに入ると地図を作ります。特に、三十階層までは何度も調査し、道順や魔物の配置を記録するはずです」
「確かにそうだな」
「そのため、三十階層までは慣れた動きで進んでくる可能性が高い。ですが、逆に言えば、地図を信じて進む場所ほど罠にかかりやすくなります」
「なるほど」
「そこで我らは、三十階層付近に複数の罠を仕掛けました」
「どんな罠だ?」
「足止め、視界封じ、魔力を乱す闇の霧、矢の雨、偽の安全地帯です」
「偽の安全地帯?」
「はい。冒険者が休憩できると思って入った場所に、闇魔法の結界を仕掛けています。命を奪うためではなく、体力と集中力を削るための罠です」
「面白いな」
「Sランク冒険者なら、一つ一つの罠では倒せないでしょう。ですが、道中で少しずつ疲れさせることはできます」
俺は思わず笑った。
こいつらはかなり考えている。
ただ戦うだけではない。
冒険者の動きを予測して、弱らせる場所を作る。
これは俺でもすぐには思いつかなかった。
「ゼルド。お前たちはかなり良い成果を出した」
「ありがたきお言葉」
「ダークエルフ族には、星を七つ与える」
その瞬間、玉座の間が大きくざわついた。
「七つ……!」
「今までで一番高い……!」
「すごい……」
ゼルドは表情を変えなかったが、後ろにいたダークエルフたちは驚いた顔をしている。
「ありがとうございます。ですが、まだ足りません」
ゼルドは静かに言った。
「Sランク冒険者を相手にするなら、さらに罠と連携を磨く必要があります」
「いい心がけだ」
俺は頷いた。
これで現在の星の数はこうなった。
オーク族、星五つ。
ガロウ族、星六つ。
ゴブリン族、星四つ。
猫族、星四つ。
ダークエルフ族、星七つ。
今のところ、一番はダークエルフ族だ。
「お前たち、よく聞け」
俺は全員に向かって言った。
「星は、今の働きを示すものだ。だが、これで終わりじゃない」
全員が俺を見る。
「今はダークエルフ族が一番だ。だが、一番低い者でも、一番高い者を抜かせる」
「どういうことですか?」
ロギが不思議そうに聞いてくる。
「一か月後、Sランク冒険者が攻めてくる」
その言葉で、玉座の間の空気が変わった。
さっきまでの明るい空気が、一気に緊張に変わる。
「正確には、もう一週間経った。残りはおよそ三週間だ」
俺は全員を見る。
「あいつは強い。今まで来た冒険者とは比べものにならない」
ガルフが拳を握る。
ロギが息を飲む。
ミーナが不安そうに耳を伏せる。
ゼルドは静かに目を細める。
「だが、俺たちはただ待つわけじゃない」
俺は声を強めた。
「国を作り、武器を作り、服を作り、生活を整え、罠を仕掛ける。すべては、その戦いに勝つためでもある」
全員が真剣な顔になる。
「そこで決める」
俺は玉座から立ち上がった。
「Sランク冒険者との戦いで、一番活躍した種族には、星十を与える」
「星十……!」
全員が息を飲んだ。
今の最高が星七つ。
それを一気に超える星十。
この国で最も大きな功績として認めるということだ。
「星十を得た種族は、今後この国の中でも特別な功績を持つ種族として扱う」
玉座の間が静まり返る。
「だが、勘違いするな。これは競争であって、仲間割れをするためのものじゃない」
俺は強く言った。
「お前たちは全員、俺の国の民だ。勝つために競い、勝つために協力しろ」
「はい!」
全員が一斉に答えた。
「ギガルド」
「はっ!」
「城と居住区の完成を急げ。防衛に使える通路や壁も作れ」
「承知しました!」
「ガルフ」
「はい!」
「Sランク冒険者に通じる武器を作れ。普通の武器では足りない」
「必ず作ります!」
「ロギ」
「はい!」
「戦闘用の服も作れ。動きやすく、破れにくく、魔力を流しやすいものだ」
「すぐに改良します!」
「ミーナ」
「はい!」
「戦いの後には、怪我人が出る。看病、食事、休息場所の準備を進めろ」
「分かりました!」
「ゼルド」
「はっ」
「罠をさらに増やせ。ただし、味方が巻き込まれないようにしろ」
「承知しました」
俺は全員を見渡した。
「残り三週間。ここからが本番だ」
Sランク冒険者との戦い。
それは、俺たちの国にとって最初の大きな試練になる。
だが、恐れるだけでは終わらない。
この一週間で、魔物たちは確かに成長した。
国も形になり始めた。
なら、次の三週間でさらに強くなれる。
「俺たちは勝つ」
俺は静かに言った。
「そして、この国を世界に認めさせる」
玉座の間に、力強い声が響いた。
「おおおおおおお!」
魔物たちの声が一つになる。
星の評価。
それはただの褒美ではない。
この国で生きる者たちが、自分の役目に誇りを持つための証だ。
そして、Sランク冒険者との戦いに向けて、すべての種族が本気で動き出した。
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第五十六話終了時点
タケシ:魔王Dランク Lv0
階層数:60階層
残りポイント:253160pt
時間経過:
・第五十五話から一週間経過
・Sランク冒険者襲来まで残り約三週間
新制度:
・星制度を開始
・成果に応じて各種族に星を与える
・星が多いほど、この国への貢献が大きい証となる
現在の星:
・オーク族:星5
・ガロウ族:星6
・ゴブリン族:星4
・猫族:星4
・ダークエルフ族:星7
成果:
・オーク族
各種族の居住区を完成
魔王城の設計完成
六十階層で魔王城建築開始
星5獲得
・ガロウ族
魔法の剣と魔法の防具を作成
魔力を込めることで属性に応じた効果を発揮
星6獲得
・ゴブリン族
各種族の文化や仕事に合わせた服を作成
戦闘にも使える服の基礎を作る
星4獲得
・猫族
ベッド、シーツ、毛布などの寝具を準備
料理、掃除、生活支援の仕組みを作る
メイド服も作成
星4獲得
・ダークエルフ族
三十階層付近に冒険者対策の罠を設置
足止め、視界封じ、闇の霧、矢の雨、偽の安全地帯を準備
星7獲得
新目標:
・Sランク冒険者との戦いで一番活躍した種族に星10を与える
・残り三週間で国づくりと防衛準備をさらに進める
ポイント計算
第五十五話終了時点:43160pt
一週間分の地脈ポイント:
60階層 × 500pt × 7日 = 210000pt
43160pt + 210000pt = 253160pt
購入・討伐なし
第五十六話終了時点:253160pt
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