第五十三話 種族の長たち
――次の日。
「みんな、集まってるか?」
俺は玉座の間で声を出した。
目の前には、ミル、ゼキナ、水魅五姉妹、ガルド、バルド、ギガルド、そして昨日ダンジョンに入ってきた魔物たちの代表が並んでいた。
五十一階層から六十階層。
そこは、これから魔物の国になる場所だ。
だが、ただ階層を作っただけでは国にはならない。
誰がどこに住むのか。
誰が何を担当するのか。
それを決める必要がある。
「魔王様、今日は何をされるのですか?」
ギガルドが質問してきた。
「今日は、とても大事なことを決める」
「大事なこととは?」
「五十一階層から六十階層までの十階層。その中で、どこにどの種族が住むかを決めたい」
俺は大きな声で言った。
魔物たちがざわつく。
不安そうな者もいれば、期待した目で見てくる者もいる。
そりゃそうだ。
自分たちがこれから住む場所が決まるのだから、気になるに決まっている。
「タケシ様」
ミルが手を上げた。
「そうなさるのであれば、一番上の六十階層には、タケシ様の城を築かれてはどうですか?」
「俺の城か」
「はい。国と言うのであれば、中心となる場所が必要です」
「そうだな」
俺は頷いた。
国と言えば、やはり城が必要だ。
王がいる場所。
国の中心。
魔物たちにとっても、そこが国の核だと分かりやすい。
「六十階層は、魔王城と国の中心にする候補だな」
「はい!」
ミルが嬉しそうに頷いた。
「魔王様」
今度はギガルドが口を開く。
「それぞれの階層を決めるのであれば、やはり各種族のリーダーを早く決めるべきだと思います」
「リーダーか」
「はい。種族ごとに暮らし方も、得意な仕事も違います。魔王様がすべてを直接決めるより、各種族の長を通してまとめた方が国づくりは早く進みます」
「確かにな」
俺はギガルドの言葉に頷いた。
全部を俺一人で管理するのは無理だ。
オーク族にはバルドがいる。
だが、ゴブリン、ウルフ系、スライム系、アンデッド族、そして他の種族にも、それぞれの代表が必要になる。
「じゃあ、まずは各種族の長老や代表を連れてきてくれ」
俺はミルに言った。
「はい、タケシ様!」
ミルはすぐに玉座の間を出ていった。
◇◇◇
しばらくして、ミルが戻ってきた。
「タケシ様、連れてきました」
ミルの後ろには、四人の魔物が並んでいた。
一人目は、犬や狼に近い雰囲気を持つ魔物。
鋭い耳と牙を持ち、体は引き締まっている。
二人目は、小柄なゴブリン。
弱そうには見えるが、手先が器用そうで、腰には針や布のようなものを下げていた。
三人目は、猫のような耳と尻尾を持つ、小柄な魔物。
かなり怯えているようだが、目には必死さがある。
四人目は、長い耳を持つ青年のような魔物。
見た目はエルフに近い。
だが、肌は少し暗く、目には深い闇のような色が宿っている。
「お前たちが、各種族の長老や代表か?」
俺が尋ねると、四人は一斉に頭を下げた。
「はい」
声が揃う。
どうやら、やる気はあるらしい。
だが、国づくりを任せるなら、ただ従順なだけでは困る。
覚悟が必要だ。
俺は少しだけ魔力を放った。
黒い魔力が玉座の間に広がる。
空気が重くなる。
「お前たちは、俺のダンジョンに住みたいんだよな?」
「そうです」
四人は震えながらも答えた。
逃げ出す者はいない。
「そうか」
こいつら、なかなか度胸がある。
「だったら、役に立て」
俺は大きな声で言った。
「俺の国に住むなら、ただ守られるだけではなく、それぞれの力を出してもらう」
「もちろんです」
四人が揃って答える。
「そうか。だったら、お前たちにできることを言え」
俺がそう言うと、長い耳を持つ青年が一歩前に出た。
「私たちには、それぞれの個性があります」
青年は落ち着いた声で言った。
「戦うこと、作ること、支えること。できることなら、何でもいたしましょう」
「いい返事だ」
俺は頷いた。
「じゃあ、一人ずつ話してもらう。まずはお前からだ」
俺は犬のような魔物を指した。
「はい」
その魔物は一歩前に出る。
「私はガロウ族のガルフと申します」
「ガロウ族か」
「はい。ウルフ系に近い種族です」
「ガルフ、お前にできることは何だ?」
「武器を作ることができます」
「武器?」
「はい」
ガルフは胸を張った。
「ドワーフほどではありませんが、魔物の中では一番と言ってもいいほど、武器作りには自信があります」
「なるほどな」
武器作り。
これはかなり大事だ。
今後、魔物の国を作るなら、戦う者たちの装備が必要になる。
騎士団や冒険者が来る以上、武器を作れる種族は絶対に必要だ。
「いいな。お前たちガロウ族には、鍛冶や武器作りを任せられそうだ」
「ありがたき幸せ」
ガルフは深く頭を下げた。
「次はお前だ」
俺はゴブリンの長老を指した。
「はい」
ゴブリンは少し緊張しながら前に出た。
「僕たちゴブリン族は、戦いでは最弱に近い魔物です」
「自分で言うのか」
「はい。事実ですから」
ゴブリンは少し苦笑いした。
「ですが、僕たちは手先が器用です。服を作ったり、小さな道具を作ったりすることができます」
「服か」
なるほど。
国を作るなら、武器や家だけでは足りない。
服も必要だ。
布、衣服、寝具、袋。
そういうものを作れるなら、かなり役に立つ。
「大事な仕事だな」
「ありがとうございます」
ゴブリンは驚いたように目を開き、それから深く頭を下げた。
「次はお前だ」
俺は長老たちの中でも一番小さい、猫のような魔物に視線を向けた。
「は、はい」
その魔物は少し震えながら前に出た。
「私は、猫族の村長です」
「猫族?」
「はい」
猫族の村長は小さく頷いた。
「私たちは数が少なく、戦う力もあまりありません。そのため、人間に捕まり、奴隷にされる者も多い種族です」
「奴隷か……」
「はい」
猫族の村長は目を伏せた。
「村を守るために戦える者たちは、すでに多くが殺されました。今残っているのは、子どもや老人、戦えない者がほとんどです」
「戦える者はいないのか?」
「ほとんどいません」
猫族の村長は悔しそうに唇を噛んだ。
「ですが、私たちは手先が器用で、掃除、料理、世話、身の回りの管理が得意です。どうか、メイドや生活支援の役目として雇ってください」
「なるほど」
メイドや生活支援。
確かに、国を作るなら必要になる。
食事、掃除、子どもの世話、怪我人の看病。
戦うだけでは国は回らない。
「分かった。猫族にも役目はある」
「本当ですか?」
「ああ。戦えないから役に立たないなんてことはない」
俺がそう言うと、猫族の村長は目に涙を浮かべた。
「ありがとうございます……!」
「次はお前だ」
俺は最後の、耳の長い青年を指した。
「おい、お前はエルフじゃないのか?」
俺が尋ねると、青年は静かに首を横に振った。
「近いですが、違います」
「違う?」
「はい。私たちはダークエルフです」
「ダークエルフ?」
「はい」
青年は落ち着いた声で説明を始めた。
「もともとはエルフとして暮らしていました。しかし、エルフ族の中で戦争が起きました」
「内戦か」
「はい。その中で、私たちは闇の力を受け入れた者たちです」
「それでエルフではなくなったのか?」
「はい。エルフたちは私たちを同族と認めず、魔物として追放しました」
「なるほどな」
エルフから追放され、魔物として扱われるようになった一族。
それがダークエルフか。
「それで、お前たちには何ができる?」
「戦いです」
青年は迷いなく答えた。
「戦い?」
「はい」
「お前たちはエルフとの戦争に負けたんじゃないのか?」
「負けました」
青年ははっきりと言った。
「ですが、エルフの軍勢は約三千人。対して、私たちダークエルフはおよそ百人でした」
「百人で三千人を相手にしたのか?」
「はい」
「それで?」
「最終的には敗れました。しかし、私たちはエルフ軍のおよそ半数を削りました」
「なに?」
俺は思わず声を出した。
百人で三千人を相手にして、半数を削った。
それは異常な戦果だ。
「私たちは、エルフとしての弓術と精霊魔法に加え、闇の能力を手に入れました」
「エルフの能力と闇の能力か」
「はい」
これはかなりの戦力になる。
少数精鋭の戦闘部隊として使えるかもしれない。
Sランク冒険者との再戦に向けても、かなり重要な存在になりそうだ。
「面白いな」
俺は思わず笑った。
「お前たちの力、かなり使えそうだ」
「ありがとうございます」
ダークエルフの青年は静かに頭を下げた。
俺は四人の代表を見た。
ガロウ族のガルフ。
ゴブリン族の長老。
猫族の村長。
ダークエルフの代表。
それぞれに役目がある。
武器。
服。
生活支援。
戦闘。
国に必要な要素が、少しずつ揃い始めている。
「今日はここまでだ」
俺は玉座から立ち上がった。
「お前たち、明日また来い」
「はい」
四人が一斉に頭を下げる。
「明日、正式に階層の割り当てと役目を決める」
「お待ちしております」
四人は深く頭を下げた。
俺は背を向け、玉座の奥へ歩き出す。
魔物の国。
それは、ただの思いつきでは終わらない。
オーク族の建築。
ガロウ族の武器。
ゴブリン族の服。
猫族の生活支援。
ダークエルフの戦闘力。
少しずつ、国として必要なものが集まってきている。
これは本格的に、世界の魔王へ近づいてきているのかもしれない。
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第五十三話終了時点
タケシ:魔王Dランク Lv0
階層数:60階層
残りポイント:283160pt
新情報:
・五十一階層〜六十階層の種族割り当てを決める会議開始
・六十階層は魔王城、国の中心候補
・各種族の長老、代表を集める
・ガロウ族のガルフ登場
・ゴブリン族の長老登場
・猫族の村長登場
・ダークエルフ代表登場
各種族の特徴:
・ガロウ族
ウルフ系に近い種族
武器作りが得意
ドワーフほどではないが、魔物の中ではかなり高い技術を持つ
・ゴブリン族
戦闘力は低い
手先が器用
服や小道具を作れる
・猫族
数が少ない
人間に奴隷にされやすい
戦える者は村を守るために多くが死亡
掃除、料理、世話、身の回りの管理が得意
メイドや生活支援役を希望
・ダークエルフ
元はエルフ
エルフ族の内戦で闇の力を受け入れ、魔物として追放された
エルフの能力と闇の能力を持つ
約百人で三千人のエルフ軍の半数を削った戦闘集団
ポイント計算
第五十二話終了時点:253160pt
翌朝の地脈ポイント:
60階層 × 500pt = +30000pt
第五十三話開始時点:
253160pt + 30000pt = 283160pt
購入・討伐なし
第五十三話終了時点:283160pt
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