第五十二話 魔物の国
――一時間後。
「魔王様、大変です!」
ギガルドが慌てた様子で玉座の間へ入ってきた。
「どうした、ギガルド」
「資材が切れました!」
「マジか、そんなに早く!?」
俺は思わず大声を上げた。
ついさっき、オーク族を国の建築士として任命したばかりだ。
それなのに、もう資材が足りないらしい。
「はい。七百人規模の住居を作るとなると、想像以上に資材が必要です」
ギガルドは申し訳なさそうに頭を下げる。
「木材、石材、金具、屋根材、道を整える石材、倉庫用の柱。それに、今後さらに魔物が増えることを考えると、かなりの量が必要になります」
「なるほどな」
確かに、家を一つ作るのとはわけが違う。
七百人が住む場所を作るなら、資材はいくらあっても足りないだろう。
「分かった。資材を買う」
俺はショップ画面を開いた。
「資材、購入」
『資材を購入しました』
『二〇〇〇ポイント消費』
玉座の間の横に、大量の木材、石材、金具、布、工具が積み上がった。
「おぉ……!」
ギガルドの目が輝く。
「これでいいか?」
「はい! これだけあれば一週間は持ちます!」
ギガルドが自信満々に答えた。
「そうか。じゃあ、引き続き頑張ってくれ」
「はい!」
ギガルドは大きな声で返事をすると、すぐに作業場へ戻っていった。
オークたちの動きはかなり速い。
バルドとギガルドが指示を出し、他のオークたちが資材を運んでいる。
この調子なら、魔物の国づくりも思ったより早く進むかもしれない。
「さて、こっちはこっちで始めるか」
「はい、タケシ様!」
ミルが元気よく返事をした。
国づくりも大事だ。
だが、俺たちにはもう一つ大きな問題がある。
一ヶ月後に戻ってくる、あのSランク冒険者だ。
あいつを倒すためには、俺自身も強くならなければならない。
そして、ダンジョンの防衛力も上げる必要がある。
「ミル」
「はい」
「一ヶ月後にSランク冒険者がまた来るよな」
「はい。あの冒険者は、そう言っていました」
「Sランク冒険者を足止めできる魔物はいるか?」
「そうですね……」
ミルは少し考え込んだ。
「います」
「マジか。どんな魔物だ?」
「レヴィアスです」
「レヴィアス?」
「はい」
ミルがモニターを開く。
そこに映ったのは、巨大な水の魔物だった。
蛇のように長い体。
龍のような頭。
青黒い鱗に覆われた巨体。
水の中を泳ぐたびに、周囲の水流が荒れ狂っている。
「レヴィアスは、海の深くに生息すると言われる巨大な魔物です」
「海の魔物か」
「はい。大きな街を壊すほどの力を持つと言われています。水の中では圧倒的に強く、Aランク冒険者なら一瞬で倒せるほどです」
「Aランクを瞬殺か」
かなり強い。
Sランク冒険者を倒せるかは分からない。
だが、五十階層のボスとして配置すれば、足止めくらいはできるかもしれない。
「四十一階層から四十九階層までは水階層だ」
俺はモニターを見ながら言う。
「だったら、五十階層は水階層のボス部屋にする」
「はい。レヴィアスなら、五十階層のボスにふさわしいと思います」
「よし。早速買うぞ」
俺はショップ画面を開いた。
「レヴィアス、購入」
『レヴィアスを購入しました』
『二五〇〇〇ポイント消費』
モニターに五十階層が映し出された。
水で満たされた巨大な空間。
中央には、深い青色の湖のような場所がある。
その奥に、巨大な魔法陣が広がった。
青黒い光が渦を巻き、やがて巨大な影が水中に現れる。
レヴィアス。
その巨体がゆっくりと動くだけで、五十階層全体の水が大きくうねった。
「おぉ……」
かなり迫力がある。
普通の冒険者なら、近づいただけで終わりだろう。
「これで五十階層のボスは決まりだな」
「はい!」
ミルが嬉しそうに頷く。
「次は、魔物の国だ」
俺は管理画面を見た。
現在、新帝ダンジョンは五十階層まで整った。
一階層から四十階層までは戦闘用の階層。
四十一階層から四十九階層は水階層。
五十階層はレヴィアスのボス部屋。
だが、魔物たちが住む場所はまだない。
「五十一階層から六十階層を作る」
「はい」
ミルが真剣な顔で頷く。
「十階層すべてを合わせて、魔物の国にする」
俺はそう言った。
「一つの階層に全員を詰め込むんじゃなくて、各種族に一階層ずつ与える」
「種族ごとに街を作るということですね」
「ああ」
オーク族にはオーク族の暮らし方がある。
ゴブリン族にはゴブリン族の暮らし方がある。
ウルフ系には広い走れる場所が必要だろう。
スライム系なら水場や湿地が必要かもしれない。
アンデッド族なら、暗く静かな場所の方が向いている。
それぞれに合った階層を与えた方が、国として長く続くはずだ。
「五十一階層から六十階層、購入」
『五十一階層から六十階層を購入しました』
『魔物の国用階層として改変します』
『八〇〇〇ポイント消費』
ゴゴゴゴゴ……!!
ダンジョン全体が揺れた。
五十階層の奥に、新しい道が開かれていく。
五十一階層。
五十二階層。
五十三階層。
そこから六十階層まで。
十の階層が、一気に生まれた。
ただの戦闘階層ではない。
住むための階層。
国を作るための階層。
魔物たちが安心して暮らすための場所。
「よし、割り当てを決めるぞ」
「はい!」
俺はモニターに新しい十階層を表示した。
「まず、五十一階層はオーク族だ」
「ありがとうございます、魔王様」
バルドが深く頭を下げた。
「オーク族には、国づくりの中心になってもらう。建築区、工房、資材置き場を作ってくれ」
「承知しました」
「五十二階層は、まだ未定にしておく」
「はい」
「今後、新しい種族が来るかもしれないからな。空けておいた方がいい」
ミルが頷く。
「五十三階層はゴブリン族」
「ゴブリン族ですか」
「ああ。数が多いし、手先も器用な個体がいる。工房や道具作りを任せられるかもしれない」
「良いと思います」
「五十四階層はウルフ系」
モニターに、広い草原のような空間を映す。
「走れる場所が必要だろうから、広い平原みたいにする」
「ウルフ系にはかなり合いそうですね」
「五十五階層はスライム系」
「スライム系はどう使いますか?」
「浄化や農地、あと水場の管理に使えるかもしれない。柔らかい湿地みたいな階層にする」
「なるほど」
「五十六階層はアンデッド族」
俺はガルドを見る。
「ガルド、アンデッド族の階層は任せてもいいか?」
「はっ。我が王の命とあらば」
「暗く静かな場所にして、訓練場も作る。将来的にはアンデッド騎士団みたいなものも作りたい」
「必ずや、我が王の盾となる騎士団を作り上げます」
「頼む」
俺は再びモニターを見る。
「五十七階層、五十八階層、五十九階層、六十階層は未定だ」
「全部決めないのですか?」
ミルが聞いてくる。
「ああ。今決めすぎるより、今後来る種族に合わせた方がいい」
「確かにそうですね」
「六十階層は国の中心にしてもいいし、魔王城下みたいにしてもいい。そこは後で考える」
「分かりました」
これで、魔物の国の基本形は決まった。
五十一階層、オーク族。
五十二階層、未定。
五十三階層、ゴブリン族。
五十四階層、ウルフ系。
五十五階層、スライム系。
五十六階層、アンデッド族。
五十七階層から六十階層は、今後のために空けておく。
「バルド、ギガルド」
「はい」
「まずは五十一階層から作ってくれ。オーク族の居住区と、建築用の工房。それから資材置き場だ」
「承知しました」
バルドが力強く頷く。
「五十三階層以降は、種族ごとに必要な形を確認しながら作ります」
「頼む」
「魔王様」
ギガルドが一歩前に出る。
「外にいる魔物たちを、先に五十一階層へ一時的に案内してもよろしいでしょうか?」
「ああ。まだ各階層は完成していないから、まずは一時避難場所として使おう」
「分かりました」
「コウにも外の様子を見てもらいながら、魔物たちを安全に誘導してくれ」
「はい!」
こうして、魔物たちの受け入れが始まった。
弱い魔物。
子どもの魔物。
戦うことが苦手な魔物。
彼らが少しずつ、新帝ダンジョンの中へ入ってくる。
最初は不安そうだった魔物たちも、オークたちが案内すると、少しずつ落ち着いていった。
ここはもう、ただのダンジョンではない。
魔物たちの国になる場所だ。
「タケシ様」
ミルが俺の横に来た。
「本当に、国づくりが始まりましたね」
「ああ」
俺はモニターに映る五十一階層から六十階層を見る。
まだ何もない。
ただ広い空間があるだけだ。
だが、ここに家が建つ。
道ができる。
種族ごとの街が生まれる。
そして、いつか魔物たちが笑って暮らす国になる。
「世界の魔王になるなら、まずは守るべき国が必要だ」
「はい」
「ここを、俺の最初の国にする」
俺はそう言った。
新帝ダンジョンは、また一つ形を変えた。
戦うためのダンジョンから、魔物の国へ。
俺たちの新しい一歩が、ここから始まる。
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第五十二話終了時点
タケシ:魔王Dランク Lv0
階層数:60階層
残りポイント:253160pt
新階層:
・五十階層
水階層のボス部屋
ボスモンスター:レヴィアス配置
・五十一階層〜六十階層
魔物の国
十階層すべてを合わせて一つの国にする
各種族に一階層ずつ与える方針
階層割り当て:
・五十一階層:オーク族
・五十二階層:未定
・五十三階層:ゴブリン族
・五十四階層:ウルフ系
・五十五階層:スライム系
・五十六階層:アンデッド族
・五十七階層:未定
・五十八階層:未定
・五十九階層:未定
・六十階層:未定
新魔物:
・レヴィアス
五十階層ボス
海の深くに生息すると言われる巨大な魔物
大きな街を壊すほどの力を持つ
Aランク冒険者を瞬殺できるほど強い
Sランク冒険者の足止め役として期待
国づくり:
・資材を追加購入
・バルド、ギガルドたちが建築継続
・外にいた魔物たちを五十一階層へ一時的に受け入れ開始
・種族ごとの街づくりが始まる
ポイント計算
第五十一話終了時点:288160pt
同日中のため、地脈ポイント追加なし
資材購入:-2000pt
残り:286160pt
レヴィアス購入:-25000pt
残り:261160pt
五十一階層〜六十階層購入・国用階層化:-8000pt
残り:253160pt
第五十二話終了時点:253160pt
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