第四十九話 水の階層
「あぁ……」
俺はゆっくりと目を開けた。
そこは玉座の間だった。
俺は玉座の上に寝かされていた。
まるで、最初にこの世界へ転生した日のようだった。
「タケシ様ぁぁ! よかったぁ!」
ミルが泣きそうな顔で俺に抱きついてきた。
「ミル……」
「ご主人様、本当によかったです」
「本当ですよ」
セリとゼキナも近くにいた。
メリ、ビビ、サリ、エリも心配そうに俺を見ている。
「セリにゼキナまで……」
俺は少しぼんやりした頭で周りを見る。
体が重い。
胸の奥に、まだ少し気持ち悪さが残っている。
「タケシ様、何があったか覚えていますか?」
「あ……」
ミルに言われて、俺はすべてを思い出した。
Sランク冒険者。
二十五階層。
炎の矢。
無数の斬撃。
瞬間移動。
そして、毒。
「ああ、全部思い出した」
俺はゆっくりと息を吐いた。
「それで、あれからどうなったんだ?」
「タケシ様は急に倒れて、ガルド様がここまで運んでくれたんです」
「なるほど」
さすがガルドだ。
あの場で倒れた俺を運んでくれたのか。
「それで、ガルドは?」
俺が聞くと、ミルの表情が少し曇った。
「今、タケシ様の毒が移って倒れています」
「マジか」
俺は思わず体を起こそうとした。
だが、まだ体に力が入らず、少しふらついた。
「タケシ様、まだ無理しないでください」
セリが慌てて支えてくれる。
「ガルドは大丈夫なのか?」
俺は心配になって聞いた。
「はい。多分大丈夫だと思います」
ミルが答える。
「ガルド様はアンデッドですし、毒への耐性もかなり高いです。ただ、Sランク冒険者の毒は普通ではなかったようで、今は少し動けない状態です」
「そうか……」
俺は拳を握った。
俺を運んだせいで、ガルドまで毒を受けた。
あのSランク冒険者。
やっぱりただの強敵じゃない。
「ダンジョンの様子はどうなんだ?」
「三十階層までの魔物は復活しますから、そこまで大きく変わってはいません」
「そうか」
少しだけ安心した。
だが、問題は山ほどある。
Sランク冒険者が来た。
しかも、俺たちを殺さずに一ヶ月後の再戦を告げて去っていった。
遊ばれている。
そう感じるくらい、実力差があった。
国が動いた可能性も高い。
これから先、もっと強い敵が来るかもしれない。
なら、俺がやることは決まっている。
階層を増やす。
自分を強くする。
仲間を強くする。
そして、一ヶ月後にあいつを倒す。
「そうだ、コウはどこに行ったんだ?」
「コウには、引き続き外の様子を見てもらっています」
「そうか」
外の情報は大事だ。
Sランク冒険者がまた来るなら、少しでも早く動きを知りたい。
「ミル」
「はい」
「階層を増やすぞ」
「分かりました」
ミルの顔が真剣になる。
「四十一階層から先ですね」
「ああ」
「では、四十一階層から五十階層はどんな階層にしますか?」
「そうだな……」
俺は少し考える。
Sランク冒険者が来た以上、中途半端な階層では意味がない。
毒階層も磁石階層も強い。
だが、Sランクには突破される可能性がある。
なら、次はもっと別の方向で厄介な階層にしたい。
「水の階層なんてどうだ?」
「水の階層ですか」
ミルが目を開く。
「いいと思います」
「水中戦なら、普通の冒険者はかなり動きにくいだろ」
「はい。呼吸の問題もありますし、動きも鈍ります。水に適応した魔物を配置すれば、かなり強い階層になります」
「よし。だったらそれでいこう」
「はい!」
俺は管理画面を開いた。
「四十一階層から四十九階層を購入。水の階層にする」
『四十一階層から四十九階層を購入しました』
『水の階層へ改変します』
『二五〇〇ポイント消費』
ゴゴゴゴゴ……!!
ダンジョンが揺れた。
四十階層の奥に、新しい階層への道が開かれていく。
四十一階層。
四十二階層。
四十三階層。
そこから四十九階層まで、一気に新しい空間が広がった。
モニターには、水に満たされた巨大な階層が映し出される。
青く光る水路。
水没した遺跡のような通路。
天井から流れ落ちる滝。
足場は少なく、ほとんどの場所が水で満たされている。
「おぉ……」
かなり綺麗だ。
だが、同時にかなり危険な階層でもある。
水中で戦えない冒険者なら、それだけで動きが制限される。
「よし、次は魔物だな」
「タケシ様、魔物ならいいものがいますよ」
「本当か?」
「はい。ミラージュです」
「ミラージュ?」
「はい」
ミルが説明を始める。
「ミラージュは、普通の状態でも攻撃力が高い魔物です。ですが、水の中では素早さ、攻撃力、防御力がすべて大きく上がります」
「どれくらい上がるんだ?」
「最大で十倍ほどです」
「マジか」
水の中で十倍。
それはかなり強い。
水階層と組み合わせれば、冒険者にとっては最悪の相手になる。
「さらに、ミラージュは水中で姿をぼかすことができます。まるで幻影のように見えるので、攻撃を当てるのも難しいです」
「なるほど。名前通りってことか」
「はい」
「それにするか」
「分かりました」
俺はショップ画面を操作した。
「ミラージュ、一〇〇〇体購入」
『ミラージュ×1000を購入しました』
『二〇〇〇ポイント消費』
モニターの水階層に、青白い魔法陣がいくつも開く。
そこから現れたのは、水の中を滑るように泳ぐ魔物だった。
魚のようにも見える。
蛇のようにも見える。
だが、体は半透明で、水と一体化しているようだった。
光が当たるたびに輪郭が揺れ、どこに本体があるのか分かりにくい。
「これは見つけにくいな」
「はい。水中ではかなり厄介です」
ミラージュたちは水階層の中へ散っていった。
水路。
滝の裏。
沈んだ遺跡の影。
ありとあらゆる場所に潜んでいく。
「これで、四十一階層から四十九階層は水階層になったな」
「はい」
「五十階層はどうしますか?」
ミルが聞いてくる。
「五十階層はボス部屋にしたい」
「水階層のボスですね」
「ああ。ただ、今日はまだ体が少し痛いから、ボスは明日決める」
「分かりました」
正直、まだSランク冒険者の毒が完全には抜けていない。
体の奥が重い。
無理をして判断を間違えるより、今日はここまでにした方がいい。
「今日はもう、ご飯を食べて寝るか」
「はい」
セリたちがすぐに食事の準備を始めた。
俺は玉座に座りながら、モニターに映る水階層を見る。
Sランク冒険者。
一ヶ月後の再戦。
あいつを倒すには、今のままでは足りない。
もっと階層を増やす。
もっと強い魔物を置く。
もっと俺自身も強くなる。
四十一階層から四十九階層の水階層。
これは、そのための第一歩だ。
俺はセリたちの作ってくれた飯を食べ、少しだけ安心した気持ちで眠りについた。
次に目覚めたら、五十階層のボスを決める。
そして、一ヶ月後。
必ずあのSランク冒険者を倒す。
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第四十九話終了時点
タケシ:魔王Dランク Lv0
階層数:49階層
残りポイント:263660pt
新階層:
・四十一階層〜四十九階層
・水の階層
配置魔物:
・ミラージュ×1000
水階層の特徴:
・水路や水没遺跡のような階層
・冒険者の移動を制限する
・水中戦に弱い冒険者にはかなり不利
・五十階層は水階層のボス部屋予定
新魔物:
・ミラージュ
水中で素早さ、攻撃力、防御力が大きく上がる
水中では最大十倍ほど強化される
水と一体化するように姿をぼかす
ポイント計算
第四十八話終了時点:268160pt
同日中のため、地脈ポイント追加なし
四十一階層〜四十九階層購入・水階層化:-2500pt
残り:265660pt
ミラージュ×1000購入:-2000pt
残り:263660pt
第四十九話終了時点:263660pt
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