第四十六話 魔王の領域
「ぐぅぅ……」
俺はゆっくりと目を開けた。
まだ部屋の中は少し静かだった。
いつもならミルが飛んできたり、ゼキナが近くに控えていたりするのだが、今日は珍しく水魅五姉妹だけがいた。
「ご主人様、起きるのが早いですね」
セリが少し驚いたように言う。
「ああ、セリたちか」
俺は体を起こしながら答えた。
「Dランクの魔王になった時に、結構寝てたからな。あまり眠くないんだ」
「そうですか」
セリが少し心配そうな顔をする。
メリ、ビビ、サリ、エリも、俺の様子を見ながら少し不安そうにしていた。
進化で二週間も眠ったから、みんな心配してくれているのだろう。
「大丈夫だよ。体はむしろ軽いくらいだ」
「それならよかったです」
セリがほっとしたように微笑む。
「ところで、ゼキナたちはどこに行ったんだ?」
「ゼキナ様は、タケシ様が眠っている間に冒険者をたくさん倒していましたので、今は爆睡されています」
「そうか」
ゼキナもかなり頑張ってくれていたらしい。
俺が二週間も眠っていた間、ミルとゼキナが中心になってダンジョンを守ってくれていた。
今日は寝かせておいてやるか。
「ミルは?」
「ミル様はもう少しで起きると思います」
「そうか」
俺は頷いた。
「ところで、ガルドはどこに行ったんだ?」
「ガルド様は、近づいてきた冒険者を倒していると思います」
「そうか」
ガルドも働きすぎだな。
進化したばかりなのに、もうダンジョンを守っているのか。
頼もしいけど、少し休ませた方がいいかもしれない。
それに、気になることもある。
十階層から三十階層までのボスは倒されても復活する。
だが、四十階層はまだ本格的なボスを置いていない。
磁石ゴーレムはいるが、四十階層の守護者としてのボスはまだ必要だ。
早めに考えないとな。
「タケシ様、ただいま起きました!」
その時、ミルが部屋に入ってきた。
「ミル、起きたか」
「はい!」
続けて、黒い羽織を揺らしながらガルドも戻ってきた。
「我が王、ただいま帰りました」
「ガルドも来たか」
「はい。近くにいた冒険者は処理しておきました」
「助かる」
俺は二人を見て頷いた。
「じゃあミル、昨日できなかった説明を頼む」
「はい!」
ミルは真剣な顔になった。
「まず、一度ステータスを開いてください」
「ああ、分かった」
俺は息を整え、言った。
「ステータスオープン」
黒い光が広がり、俺のステータスが表示される。
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【新帝のダンジョン 魔王Dランク】
名前:タケシ
レベル:0
体力:50000
魔力:50000
スキル
・鑑定S
・魔力の極み
・ファイヤーボール
・煉獄斬り
・黒葬の惨撃
・未来予知Lv10
・魔王の威圧Lv1
・身体能力強化
・超速再生
・エンゲル
・残像
・重力反転
・魔王の領域
残りポイント:398160pt
所持品
・魔銃
・上位魔剣
・アルティアレギオン
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「やっぱり何回見てもすごいな……」
体力五万。
魔力五万。
Eランクの頃とは完全に別物だ。
「タケシ様、まずは新しいスキルから説明しますね」
「ああ、頼む」
「まず、重力反転です」
ミルが小さな手を上げる。
「重力反転は、名前の通り、対象の重力の向きを反転させるスキルです」
「重力の向きを反転?」
「はい。普通なら地面へ向かって働く重力を、上や横へ変えることができます」
「なるほど」
つまり、相手を空中に落とすこともできるし、壁に叩きつけることもできるということか。
「敵の動きを封じたり、隊列を崩したりするのにかなり便利です」
「かなり強いな」
「ただし、強い相手ほど抵抗される可能性があります。魔力差がある相手には特に有効です」
「分かった」
重力を操るスキル。
使い方次第では、かなり戦い方が変わりそうだ。
「そして、ここからが大事です」
ミルの表情が真剣になる。
「もう一つの新スキル、魔王の領域について説明します」
「魔王の領域か」
「はい。これは以前少し話した、ダンジョンの支配領域を広げる力です」
「つまり、ダンジョンを大きくできるってことだな」
「はい」
ミルは頷いた。
「今までタケシ様は、ダンジョン内のことしか分かりませんでした。ですが、魔王の領域を使えば、ポイントを消費してダンジョンの支配範囲を外へ広げることができます」
「一つ聞きたいんだが、どうやって広げるんだ?」
「ポイントです」
「ポイント?」
「そうです。消費したポイントの量に応じて、ダンジョンの支配領域が外へ広がります」
「なるほどな」
つまり、ポイントを使えば、ダンジョンの外だった場所も俺の領域にできるということか。
外の様子が分からない問題を解決できるかもしれない。
「ただし、注意点があります」
「注意点?」
「支配領域を広げても、すぐに完全なダンジョンになるわけではありません。最初は薄い支配領域のようなものです」
「薄い支配領域?」
「はい。外の様子をある程度把握したり、弱い魔物を活動させやすくしたりはできます。ただ、本格的な階層として使うには、さらに改変や強化が必要になります」
「なるほど」
いきなり外の世界を全部ダンジョン化できるわけではない。
でも、情報を得るには十分かもしれない。
「一回、試してみますか?」
ミルが聞いてきた。
「そうだな」
俺は少し考えた。
ポイントはかなりある。
Dランク進化中に二週間分の地脈ポイントが入ったから、今は余裕がある。
ここで試す価値はある。
「じゃあ、やってみる」
俺は目を閉じ、魔力を集中させた。
「スキル、魔王の領域」
黒い魔力が俺の足元から広がる。
まるで水面に落ちた波紋のように、玉座の間からダンジョン全体へ広がっていく。
「一〇〇〇〇〇ポイント消費」
その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
ダンジョン全体に、とてつもない揺れが走った。
「っ!」
地面が震える。
壁が鳴る。
天井から黒い魔力の光が降り注ぐ。
だが、それは崩壊の揺れではなかった。
成長の揺れだ。
新帝ダンジョンそのものが、外へ外へと広がろうとしている。
「タケシ様!」
ミルが声を上げる。
「支配領域が広がっています!」
「どれくらいだ?」
「ダンジョン入口の外側まで、かなり広がっています! 周囲の森の一部が、タケシ様の領域に入りました!」
「森の一部か」
俺は目を閉じたまま、意識を広げた。
今まで感じられなかった外の空気。
木々の気配。
土の匂い。
風の流れ。
それが、ぼんやりとだが分かる。
「これが、外の感覚か……」
完全にはっきり見えるわけではない。
だが、今まで何も分からなかった外が、少しだけ俺の中に入ってきた。
「我が王、これは……」
ガルドが低く呟く。
「ダンジョンが、外へ進出したということですか」
「そういうことだな」
俺はゆっくり目を開けた。
揺れは少しずつ収まっていく。
だが、俺の感覚は変わっていた。
新帝ダンジョンは、もう入口の内側だけではない。
外の森の一部まで、俺の領域になった。
「タケシ様、成功です!」
ミルが嬉しそうに飛び跳ねる。
「魔王の領域、発動成功です!」
「よし」
俺は小さく笑った。
これで、外の様子を少しは見られるようになる。
騎士団や冒険者が近づいてくる前に、察知できる可能性もある。
「世界の魔王になるには、まず外を知ることからだな」
「はい!」
ミルが力強く頷いた。
「これで一歩前進です、タケシ様!」
俺は玉座に座り直し、広がった領域の感覚を確かめた。
ダンジョンの中。
そして、外の森。
新帝ダンジョンは、ついに外の世界へ手を伸ばし始めた。
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第四十六話終了時点
タケシ:魔王Dランク Lv0
階層数:40階層
残りポイント:298160pt
新スキル説明:
・重力反転
対象の重力方向を反転させるスキル
敵を浮かせたり、壁や天井へ叩きつけたりできる
相手の動きを封じるのに有効
・魔王の領域
ポイントを消費してダンジョンの支配領域を外へ広げるスキル
最初は薄い支配領域として広がる
外の様子をある程度把握できる
支配領域内では魔物が活動しやすくなる
今回の変化:
・魔王の領域を初使用
・100000pt消費
・ダンジョン入口の外、周囲の森の一部まで支配領域が拡大
・タケシが外の気配を少し感じ取れるようになった
ポイント計算
第四十五話終了時点:378160pt
翌朝の地脈ポイント:
40階層 × 500pt = +20000pt
第四十六話開始時点:
378160pt + 20000pt = 398160pt
魔王の領域使用:
-100000pt
第四十六話終了時点:
298160pt
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