第四十三話 磁石の階層
「ぐぁぁ……」
俺はベッドの上で目を覚ました。
目の前には、少し困った顔をしたミル、ゼキナ、メリ、ビビ、セリ、サリ、エリ、そしてガルドがいた。
「お前ら、どうしたんだ?」
「あ、タケシ様。起きていたんですね。おはようございます」
「おはようございます」
ミルに続いて、みんなが一斉に頭を下げた。
「ああ、おはよう。それで、どうしたんだ?」
俺が聞くと、ミルが少し困った顔でモニターを開いた。
「それがですね、強い冒険者が階層を突破したあと、その後ろから弱い冒険者たちも奥へ進めるようになってしまっています」
「どういうことだ?」
「強い冒険者が魔物を倒したり、罠を突破したりすると、その道を利用して弱い冒険者が次の階層へ進んでいるんです」
「なるほどな」
確かに、それは厄介だ。
強い冒険者だけなら俺たちが直接対応すればいい。
だが、そいつらが道を作ってしまうと、弱い冒険者まで奥に進んでくる。
「それなら、前に決めた階層の主が守ればいいんじゃないか?」
「そう思ったのですが……」
ミルがモニターを操作する。
そこには、強い冒険者たちが戦っている間に、こっそり次の階層へ進む冒険者たちが映っていた。
「バレないように次の階層へ行く弱い冒険者が出てきたのです」
「なるほど」
これは面倒だ。
強い敵だけに集中していると、弱い敵がすり抜けてくる。
こうなってくると、いつか玉座の間までたどり着くやつが出るかもしれない。
「マスター、どうしますか?」
ゼキナが静かに聞いてくる。
「ん……階層を増やすしかないな」
「分かりました」
ミルが頷く。
「では、三十一階層から四十階層はどうしますか?」
「そうだなぁ……」
俺が考えていると、ミルが手を上げた。
「タケシ様、磁石の階層なんてどうでしょうか?」
「磁石?」
「はい。磁力を利用する階層です」
「磁力って、金属を引き寄せたりするやつか?」
「そうです。他のダンジョンでも、磁石の階層はかなり厄介な階層として知られています」
「へぇ」
「金属の武器や鎧を引き寄せたり、逆に弾き飛ばしたりできます。さらに魔力の流れも乱せるので、冒険者にとってかなり戦いにくい階層になります」
「なるほどな」
金属の武器や防具を使う冒険者は多い。
剣士、盾役、騎士。
そういう相手にはかなり効きそうだ。
昨日の騎士団みたいな相手にも有効かもしれない。
「面白そうだし、やってみるか」
「はい!」
俺は管理画面を開いた。
「三十一階層から四十階層を購入。磁石の階層にする」
『三十一階層から四十階層を購入しました』
『磁石の階層へ改変します』
『二五〇〇〇ポイント消費』
ゴゴゴゴゴゴ……!!
ダンジョン全体が大きく震えた。
三十階層の奥に、新しい階層への道が作られていく。
三十一階層。
三十二階層。
三十三階層。
そこから四十階層まで、一気に新しい空間が広がった。
モニターには、奇妙な階層が映る。
黒い岩。
銀色に光る壁。
地面には鉄砂のようなものが流れている。
空中には、青白い磁力の線のような光が揺れていた。
「おぉ……」
見ているだけで少し変な感覚になる。
壁や床そのものが磁力を持っているようだ。
「ここに金属鎧の冒険者が入ったら、かなり動きにくそうだな」
「はい。武器を落としたり、盾が引っ張られたりするはずです」
「よし。次は魔物だな」
俺はみんなを見る。
「磁石に合った魔物って何がいる?」
「ゴーレムではないでしょうか」
ミルがすぐに答えた。
「ちょうど、ゴーレムの進化系で磁石ゴーレムという魔物がいます」
「磁石ゴーレムか」
名前からして、この階層にぴったりだ。
「磁石ゴーレムは、磁力を操るゴーレムです。金属武器を引き寄せたり、逆に弾いたりできます。さらに、磁力を集中させてビームのように放つこともできます」
「強そうだな」
「はい。磁石の階層とはかなり相性がいいです」
「じゃあ、魔物は磁石ゴーレムにするか」
「分かりました」
俺はショップ画面を操作した。
「磁石ゴーレム、一〇〇〇体購入」
『磁石ゴーレム×1000を購入しました』
『一〇〇〇〇ポイント消費』
モニターの中に、無数の魔法陣が広がった。
そこから現れたのは、黒鉄色のゴーレムたちだった。
体のあちこちに磁石のような赤と青の鉱石が埋め込まれている。
腕は太く、背中には金属片が浮かんでいた。
普通のゴーレムよりも、機械っぽい不気味さがある。
「これはいいな」
「かなり厄介な階層になりそうですね」
ゼキナが静かに言う。
「ああ。すぐにでも試してみたいところだな」
「でしたら、試してみてはどうでしょうか」
ミルがさらっと言った。
「え? でも、まだ三十階層のボスは倒されてないだろ?」
「倒されてはいません。ですが、二十七階層付近に冒険者がいます」
「まさか、その冒険者を転移させるってことか?」
「はい」
「そんなことできるのか?」
「タケシ様はダンジョンの魔王ですから。条件はありますが、ダンジョン内の侵入者なら転移させることができます」
「便利すぎるな」
もっと早く知りたかったことが多すぎる。
まあ、今知れたならいいか。
「だったら、早速やるか」
「はい」
ミルが管理画面を操作する。
『二十七階層にいる冒険者を三十一階層へ転移します』
モニターの中で、数人の冒険者が光に包まれた。
◇◇◇
三十一階層。
磁石の階層。
「おい、ここどこだ!?」
「どうやら転移されたみたいね」
「何階層か分かればいいんだが……」
冒険者たちは突然の転移に混乱していた。
剣士、魔法使い、盾役、弓使いの四人。
そこそこ慣れた冒険者に見える。
だが、三十一階層に対応できるかは別だ。
「ぐああ……」
低い音が階層内に響いた。
「何だ?」
冒険者たちが振り向く。
そこには、一体の磁石ゴーレムが立っていた。
黒鉄色の体。
赤と青の鉱石。
周囲には小さな金属片が浮かんでいる。
「なんだこいつ」
「ゴーレムか?」
「どうせ雑魚だろ」
剣士が剣を振る。
「くらえ!」
斬撃が磁石ゴーレムへ飛んでいく。
しかし、その斬撃はゴーレムに届く直前、横に逸れた。
「なに!?」
「斬撃が曲がった!?」
磁石ゴーレムの周囲にある磁力が、金属を含んだ斬撃の軌道をずらしたのだ。
「次は私の魔法よ!」
魔法使いが杖を構える。
「ウォーターボール!」
丸い水の塊が磁石ゴーレムへ飛んでいく。
だが、磁石ゴーレムは腕を振った。
周囲の鉄砂が水球に混ざり込み、形を崩す。
ウォーターボールはゴーレムに当たる前に、ぐしゃりと崩れた。
「なんだと……」
「魔法も効かないのか!?」
「ぐああああ!」
磁石ゴーレムの胸の鉱石が赤く光った。
次の瞬間、青白い光が一点に集まる。
「まずい、避け――」
ビィィィィィィッ!!
磁力を帯びたビームが放たれた。
青白い光が冒険者たちを飲み込み、金属の鎧ごと吹き飛ばす。
「あああああっ!」
叫び声が響き、すぐに消えた。
しばらくして、三十一階層には静けさが戻った。
『新帝ダンジョンの魔王タケシが三〇〇〇ポイントを入手しました』
「結構強かったな」
「そうですね」
ミルが嬉しそうに頷いた。
「磁石階層と磁石ゴーレムの相性はかなり良さそうです」
「ああ。これなら、騎士団みたいな金属装備の相手にも効きそうだ」
「はい。三十一階層から四十階層の防衛力はかなり高いと思います」
「今日はもうやることもないし、ケーキでも食べて寝ようか」
「はい!」
セリたちがすぐに食事とケーキを用意してくれた。
俺たちはみんなでケーキを食べながら、今日作った磁石階層の様子をモニターで確認した。
一階層から十階層は洞窟。
十一階層から十九階層は森。
二十階層は黒曜石ゴーレム。
二十一階層から三十階層は毒。
そして、三十一階層から四十階層は磁石。
新帝ダンジョンは、また大きくなった。
弱い冒険者が強い冒険者の後ろについて進む問題も、これで少しは防げるはずだ。
俺はそう思いながら、ゆっくり眠りについた。
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第四十三話終了時点
タケシ:魔王Eランク Lv90
階層数:40階層
残りポイント:66160pt
新階層:
・三十一階層〜四十階層
・磁石の階層
配置魔物:
・磁石ゴーレム×1000
磁石階層の特徴:
・金属武器や鎧を引き寄せる
・逆に弾き飛ばすこともできる
・魔力の流れを乱す
・鉄砂や磁力ビームで攻撃する
ポイント計算
第四十二話終了時点:83250pt
翌朝の地脈ポイント:
30階層 × 500pt = +15000pt
第四十三話開始時点:
83250pt + 15000pt = 98250pt
三十一階層〜四十階層購入・磁石階層化:-25000pt
残り:73250pt
磁石ゴーレム×1000購入:-10000pt
残り:63250pt
冒険者テスト撃破:+3000pt
残り:66250pt
ケーキ購入:-90pt
残り:66160pt
第四十三話終了時点:66160pt
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