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ダンジョン妖精と始める異世界魔王ライフ  作者: 西園寺
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39/50

第三十八話 毒糸の巣

「あぁ、やっぱセリたちのご飯は絶品だなぁ」


 俺は食後のお茶を飲みながら、満足して息を吐いた。


「ありがとうございます、ご主人様」


 セリが嬉しそうに頭を下げる。


 今日の料理も本当にうまかった。


 水魅五姉妹は戦闘もできるし、料理もできる。


 正直、かなり優秀すぎる。


 そんな穏やかな空気の中、ミルが急に顔を上げた。


「タケシ様、大変です!」


「どうした、ミル」


「それが、冒険者が二十階層のボスを倒しました!」


「は?」


 俺は思わず声を出した。


 二十階層のボス。


 つまり黒曜石ゴーレムだ。


 町を滅ぼすと言われるほど強力なゴーレム。


 それを倒したのか。


「しかも、そのままものすごい速度で二十一階層に向かっています!」


「マジか」


 黒曜石ゴーレムを倒されたのは痛い。


 だが、逆に考えればチャンスでもある。


 二十一階層から三十階層まで作った毒階層。


 その実戦性能を確かめるには、ちょうどいい相手だ。


「ミル、ここは様子を見るぞ」


「分かりました!」


 俺は管理画面を開いた。


 モニターに、二十階層を突破した冒険者たちが映し出される。


 人数は五人。


 剣士、盾役、魔法使い、弓使い、回復役。


 かなりバランスのいいパーティーだ。


「おい、さっきのボス、めちゃくちゃ強かったよな」


「ほんとそれ。二十階層であれとか、このダンジョンやばくないか?」


「でも大丈夫よ」


 女魔法使いが笑う。


「噂では、このダンジョンは三十階層までしかないって言われてるわ」


「確かにそうだな。なら、もう少しで終わりか」


「魔王も、噂ほど強くないんじゃない?」


 あおられてるな。


 俺は黙ってモニターを見つめた。


 横ではゼキナが静かに目を細めている。


「マスター」


「なんだ?」


「あの者たち、今すぐ始末してもよろしいですか?」


「絶対にやるなよ」


「……承知しました」


 少し残念そうにするな。


 今は毒階層の性能確認が優先だ。


「それより、二十一階層に入るぞ」


 冒険者たちは二十一階層へ続く扉の前に立った。


「行くぞ」


「ええ」


 扉が開く。


 その先には、紫色の霧が漂う毒の階層が広がっていた。


    ◇◇◇


 二十一階層。


 毒階層。


「おぉ……毒の階層か」


「空気が重いわね」


「気をつけろ。何がいるか分からない」


 冒険者たちは慎重に進んでいく。


 足元には黒緑色の沼。


 壁には毒々しい草。


 天井からは、細い糸のようなものが垂れていた。


「おい、あそこに何かいるぞ」


 盾役が声を出した。


 見つけたか。


 モニターの先には、アラクネタが一体、静かに立っていた。


 下半身は蜘蛛。


 腕からは毒糸。


 赤く光る目が、冒険者たちをじっと見ている。


「はぁ? なんだ、あの蜘蛛は」


「変な糸を出してるわね」


「どうする?」


「やるしかないだろ」


 剣士が剣を構える。


「イリシア、強化魔法と回復魔法を頼む」


「分かったわ」


 回復役の女が杖を掲げる。


「身体能力強化、回復支援」


 淡い光が冒険者たちを包み込んだ。


「なかなかやるな」


 俺はモニターを見ながら呟く。


 ただ進んできただけの雑魚ではない。


 二十階層の黒曜石ゴーレムを倒しただけはある。


「くらえ!」


 剣士が前に出る。


「炎の斬撃!」


 炎をまとった斬撃がアラクネタへ飛んでいく。


 だが、アラクネタは腕を振った。


 細い糸が空中に広がる。


 次の瞬間、炎の斬撃は毒糸に絡め取られ、そのまま消えた。


「なっ!?」


「炎を止めた!?」


「次は私よ!」


 女魔法使いが杖を振る。


「土魔法、デッドバレット!」


 鋭い土の塊がいくつも飛んでいく。


 だが、それも同じだった。


 アラクネタの毒糸が空中を走り、土の弾丸を次々と砕いていく。


「なんだと……」


「攻撃が全く効かない!」


 冒険者たちの顔に焦りが浮かぶ。


 その時、アラクネタが口を開いた。


「ザァァァ……」


 不気味な鳴き声が、毒の霧の中に響いた。


 次の瞬間、アラクネタの腕から大量の糸が放たれる。


「避けろ!」


 剣士が叫ぶ。


 だが、遅い。


 毒糸は地面、壁、天井を伝い、冒険者たちの体へ絡みついた。


「なんだ、この糸! 解けない!」


「しかも、毒がついてるわ!」


「くそっ、皮膚が焼ける!」


 毒糸が肌に触れた場所から、煙が上がっている。


 さらに、冒険者たちの血の匂いに反応したのか、周囲の毒霧の奥から複数の影が動いた。


「おい……蜘蛛が集まってきてるぞ」


「どうするのよ!」


「俺に言うなよ!」


 毒霧の中から、アラクネタたちが次々と姿を現した。


 一体。


 二体。


 三体。


 いや、それ以上。


 毒糸を揺らしながら、冒険者たちを囲んでいく。


「来るな!」


「助け――」


 叫び声は最後まで続かなかった。


 アラクネタたちが一斉に飛びかかり、毒糸で絡め取った冒険者たちを毒霧の奥へ引きずり込んだ。


 しばらくして、二十一階層は静かになった。


    ◇◇◇


「どうでしたか、タケシ様?」


 ミルが聞いてくる。


「結構いい階層だったな」


 俺は素直に答えた。


「毒霧で視界を奪う。毒沼で足場を悪くする。そこにアラクネタの毒糸」


 かなり嫌な組み合わせだ。


 黒曜石ゴーレムを倒すほどの冒険者でも、二十一階層で止まった。


 これは大きい。


「それはよかったです!」


 ミルが嬉しそうに笑う。


「マスター、この後は何をされますか?」


 ゼキナが静かに聞いてくる。


「そうだな……」


 俺はモニターに映る毒階層を見た。


 二十一階層から三十階層。


 アラクネタはかなり強い。


 だが、三十階層にはこの毒階層を締めるボスが必要だ。


「三十階層のボスを決めるか」


「でしたら、良い魔物がいますよ」


 ミルがすぐに反応した。


「良い魔物?」


「はい。アラクネタの進化系の魔物です」


「進化系か」


「名前は、メロスです」


「メロス?」


「はい。強い毒を使い、足が速く、さらに回復魔法も得意な魔物です」


「毒を使えて、足が速くて、回復魔法も使えるのか」


 かなり厄介だな。


 普通の冒険者なら、毒を受けただけで動きが鈍る。


 そこに高速移動で追撃され、さらに自分は回復魔法で粘る。


 ボスとしてはかなり強い。


「三十階層のボスにはぴったりだな」


「はい!」


「それにするか」


 俺はショップ画面を開いた。


「メロス、購入」


『メロスを購入しました』


『二〇〇〇ポイント消費』


 モニターに三十階層が映る。


 毒霧が最も濃い、広い空間。


 その中央に、黒紫色の魔法陣が現れた。


 そこから現れたのは、アラクネタよりも大きく、美しく、そして不気味な魔物だった。


 下半身は巨大な蜘蛛。


 上半身は人型に近いが、背中からは毒糸を操るための細い腕が何本も伸びている。


 瞳は紫色に光り、周囲には強烈な毒気が漂っていた。


「これがメロスか」


「はい。三十階層のボスとして配置します」


「頼む」


 メロスが三十階層の中央に静かに立つ。


 その周囲に、アラクネタたちがまるで女王を守るように集まっていく。


「これで、毒階層もかなり完成したな」


「はい。二十一階層から三十階層まで、かなり強力なエリアになりました」


「よし。今日はもう寝るか」


「はい、分かりました!」


 黒曜石ゴーレムを倒されたのは痛かった。


 だが、その冒険者たちは二十一階層でアラクネタに飲み込まれた。


 そして三十階層には、新たな毒のボス、メロスが配置された。


 新帝ダンジョンは、また一つ強くなった。


 俺はそう思いながら、眠りについた。


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タケシ:魔王Eランク Lv35

階層数:30階層


二十階層:

・黒曜石ゴーレムが冒険者に倒される

二十一階層〜三十階層:毒階層


新魔物:

・メロス ーー アラクネタの進化系、強毒を使う、足が速い、 回復魔法が得意


第三十七話終了時点:36250pt


同日中の出来事のため、地脈ポイント追加なし


メロス購入:-2000pt


第三十八話終了時点:34250pt


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