第二十五話「魔王進化」
相手は姿が見えない。
攻撃の瞬間しか場所を読めないなら、守る人数が多い分かなり厄介だ。
「俺から離れるなよ」
「はい!」
「承知しました、マスター」
「分かりました、ご主人様」
水魅たちも、すぐに俺の周囲へ集まった。
さて、どうする。
たぶん相手は、ファイヤーボールを連射してくる。
姿が見えない以上、こちらから狙うのは難しい。
なら、まずは飛んでくる魔法を全部切る。
俺は上位魔剣に炎を纏わせた。
その瞬間、未来予知がまた発動する。
三方向。
右、左、正面。
火球が同時に来る。
「煉獄斬り」
俺は上位魔剣を振るった。
炎の斬撃が三方向に走り、飛んできたファイヤーボールをすべて切り裂く。
爆発。
蒸気。
熱風。
だが、次の瞬間にはまた未来が見えた。
今度は四方向。
「煉獄斬り!」
一つ目を切る。
「煉獄斬り!」
二つ目を弾く。
「煉獄斬り!」
三つ目を斬り裂く。
だが、四つ目がギリギリで横から迫る。
「くっ……!」
俺は体をひねり、上位魔剣で無理やり弾いた。
爆風が頬をかすめる。
「タケシ様、大丈夫ですか!?」
ミルが不安そうに叫ぶ。
「大丈夫とは言えないな」
俺は息を吐いた。
「少しきつい」
相手の姿が見えない。
しかも、複数方向から魔法を撃ってくる。
未来予知で攻撃は読めるが、守り続けるのは面倒だ。
その時、メリが一歩前に出た。
「ご主人様」
「なんだ?」
「私たちの水魔法で、冒険者たちを倒しましょうか?」
「できるのか?」
「はい」
メリの後ろで、ビビ、セリ、サリ、エリも静かに頷いた。
「水は広がります。姿を隠していても、範囲ごと飲み込めば関係ありません」
「なるほどな」
確かに、相手の場所が分からなくても、広範囲攻撃なら当てられる。
「だったら頼む」
「はい」
メリは他の四人へ視線を向けた。
「みんな、行くわよ」
「はい!」
「水魔法――水流撃」
五人の水魅が同時に魔力を放った。
次の瞬間、床を走るように水が広がった。
ただの水ではない。
魔力を含んだ、青く輝く水流。
それは俺たちを避けるように広がり、九階層全体へ一気に流れ込んでいった。
洞窟の壁。
岩場。
暗い穴の奥。
すべてを水が満たしていく。
「う、うわあああっ!?」
何もなかった空間から、冒険者の悲鳴が聞こえた。
次の瞬間、透明だった冒険者たちの姿が浮かび上がる。
だが、その体はすでに水流に巻き込まれていた。
「なんだこの水は!?」
「防御魔法が削られる!」
「逃げ――」
声はそこで途切れた。
水流が渦を巻き、冒険者たちを飲み込む。
しばらくして水が引いた時、そこに残っていたのは骨だけだった。
「……」
俺は言葉を失った。
なんだ、この水魔法。
ただの水流じゃない。
魔力も、防御も、肉体も削り取っている。
もしかして、水魅ってかなりやばい種族なのでは?
「どうですか、ご主人様?」
メリたちは、褒めてほしそうな目でこちらを見ていた。
俺は少し間を置いてから、素直に言った。
「すごいよ」
そして、メリたちの頭を順番に撫でた。
「よくやった」
「ありがとうございます!」
「ご主人様に褒めていただけました!」
「嬉しいです!」
五人は本当に嬉しそうに笑った。
戦闘力も高い。
料理もできる。
掃除や水回り管理にも向いている。
水魅、完全に当たりだな。
「もうこれで終わりか?」
俺がそう呟いた瞬間、目の前に文字が浮かび上がった。
『新帝ダンジョンの魔王タケシのレベルが一〇〇に到達しました』
『魔王の進化を開始します』
「……なんだ?」
俺は思わず画面を見つめた。
レベル一〇〇。
ついに到達した。
「タケシ様!」
ミルが慌てたように飛んでくる。
「それは魔王の進化です!」
「ついにか……」
レベル一〇〇に到達したら、魔王ランクが上がる。
ミルが前に言っていたことだ。
つまり、俺はFランク魔王から、Eランク魔王へ進化するということか。
そう思った瞬間。
体の奥から、強烈な眠気がこみ上げてきた。
「くっ……」
視界が揺れる。
足元がふらつく。
力が抜けていく。
「ご主人様!?」
「マスター!」
「タケシ様!」
みんなの声が遠くなる。
俺は上位魔剣を握ったまま、膝をついた。
意識が闇に沈んでいく。
魔王の進化。
その言葉だけを頭の中に残したまま――。
俺の意識は、ゆっくりと途切れた。
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第二十五話「魔王進化」
開始時点:15490pt
終了時点:16990pt
タケシの状態:
・レベル100到達
・魔王進化開始
・意識を失う
水魅の活躍:
・水魔法「水流撃」で透明化したBランク冒険者を撃破
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